新春暴論:政治資金を透明化する簡単な方法

どうも年の始めに「暴論」を一席ぶつというのがこのところの流れのようなので、今年も1つ。

 

 

今年の漢字「金」

 

毎年12月になると「今年の漢字」が選ばれるのが恒例になっているが、2016年は「金」だった。理由がいくつか挙げられていて、「リオオリンピックにおける日本人選手の金メダルラッシュ」のような明るい話題もあったが、前東京都知事の政治資金問題など、「政治と「金」(カネ)に絡む問題が次々と浮上した」というあまり歓迎できないものも入っている。

 

確かに思い返してみれば、政治資金をめぐっては、辞任に追い込まれた前都知事の件が火をつけたのか、グレーな案件だの、首をかしげたくなるような案件だのが相次いで報じられた。最近のものをちょっと拾うだけで出るわ出るわ。

 

 

・政治資金パーティーで宝くじ配布 自民党川口支部

東京新聞2016年12月22日

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201612/CK2016122202000138.html

 

・三反園氏陣営、135カ所訂正・削除 知事選の収支報告

朝日新聞2016年12月15日

http://digital.asahi.com/articles/ASJDG5VTDJDGTLTB00T.html

 

・政治資金で事務所費、国会議員24人が自分・親族に支出

朝日新聞2016年12月4日

http://digital.asahi.com/articles/ASJCT0326JCSUTIL06T.html

 

・自民・島田佳和衆院議員の団体、政治資金からゴルフ代

朝日新聞2016年12月4日

http://digital.asahi.com/articles/ASJD3455TJD3ONFB006.html

 

・「白紙の領収書」の記載、稲田防衛相が認める 政治資金パーティで常態化

The Huffington Post 2016年10月06日

http://www.huffingtonpost.jp/2016/10/06/seiji-shikin-receipt_n_12370966.html

 

 

もちろん、今に始まった話ではない。事柄の性質上、与党、特に自民党が多く取り上げられているが、野党にも同様の事例はみられる。国会議員だけに限られた話でもない。

 

政治資金をめぐっては、何かことが起きるたびに規制の強化が叫ばれ、政治資金規正法の改正も幾度となく行われている。2007年12月の改正では、

 

 

・ 収支報告書の支出の明細記載対象項目を人件費以外の全ての項目に拡大

・ 収支報告書の支出の明細記載基準額を1万円超まで引下げ

 

 

などが行われ、1件1万円以下の支出(人件費を除く。)についても、少額領収書等の写しの開示制度が創設された。また、国会議員が関係する政治団体を「国会議員関係政治団体」と定義し、収支報告の適正の確保及び透明性の向上のために、収支報告に関する特例等一定の義務を課すこととなった。省令など細かい改正はその後もいくつか行われている。

 

にもかかわらず、この体たらくというわけだ。

 

 

どうみても常識はずれ

 

このテーマが国民の怒りを呼ぶのは、政治資金に適用されるルールが、世間一般の常識からかけ離れていることだ。

 

2016年6月に辞任に追い込まれた前都知事の場合は、航空機のファーストクラスにホテルのスイートルームといった高額出張費に始まり、週末に公用車を使って神奈川県湯河原町の別荘に行き来していたことや、自らの政治資金管理団体の支出が私的な家族旅行や飲食費、土産代、美術品の購入にあてられているといった点まで含め、常識では考えられない公私混同ぶりが批判された。

 

政治資金でゴルフ代や料亭の高級料理というのも、少なくとも一般庶民的には、職務上必要といわれてハイそうですかと納得できるものではない。白紙領収証に自分で金額を書くというのも、虚偽記載の有無にかかわらず、私たちが確定申告でやれば税務署が黙っていない類の話だ。

 

 

・白紙領収書問題「水増し一切ない」 菅官房長官

朝日新聞2016年10月6日

http://digital.asahi.com/articles/ASJB65TPRJB6UTFK010.html

「菅義偉官房長官 (前略)私自身も、私自身が代表を務めております政治団体において、政治パーティー会費の領収書の中に、菅事務所で日付、宛名、金額を記入したものが、存在をいたしております。(中略)規正法上、問題ないという風に思っています。」

 

 

これだけ制度改定を重ねてもなおこの状態であるのは、政治家の側に、この状況を改善しようという意志がないものと考えるべきだろう。そうした意図は、この分野における情報公開への後ろ向きな姿勢からもうかがえる。政治資金収支報告書及び政党交付金使途等報告書は総務省のウェブサイトで公開されているが、いまだにマシンリーダブルですらないPDFファイルでの公開にとどまっている。「しかたなく公開はするが読んでほしくない」という確固たる意志すら感じるやり方だ。何度でもいうが、これは一般国民の常識に反する。

 

 

・政治資金収支報告書及び政党交付金使途等報告書

http://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seijishikin/

 

 

しかし、何よりこうした問題でもったいないと思うのは、本来政策立案や審議にかけるべき政治家の時間や労力が、政治資金スキャンダルという後ろ向きの、どう考えても生産的ではないことに費やされてしまうことだ。

 

これは、スキャンダルを追及する側もされる側も変わらない。数で負ける野党側が与党側のスキャンダルを追及することで対抗するという議会戦術の意味もまったくないとは思わないが、そうしたごたごたの間に政治家や政治全般への信頼が失われることのデメリットも同時に考慮してほしい。国民の代表たる選良の皆さんが公費を使って、5,000万円の札束が鞄に入るかどうかとか、白紙領収証は許されるかどうかなどという議論をしているのは見るに堪えない。【次ページにつづく】

 

 

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