一票の格差と一人別枠方式について考える(3/3) 都道府県配分の限界

前回の記事では、比例的に定数を配分する方法を紹介し、「一人別枠方式」よりも比例的で理にかなった配分方法があることを示した。一票の価値を重視するなら最大剰余法、もしくはヒル式を採用するのが適切で、どうしても一票の格差最大値の最小化を試みたいならアダムズ式(1+ドント)で分配すればよいのである。

 

ただし、これらの方法を導入したとしても、一票の格差は思ったようには縮めることができない。今回はこの点をまず分析し、一票の格差解消の方向性について論じていきたい。

 

 

総定数の増加は格差を解消するか

 

一人別枠方式は確かに定数不均衡を無意味に増長する不適切な配分方法であった。しかし、他の方式で配分しても定数不均衡は強く残る。このことは、前回示した各方式の配分の要約表からも明らかであり、一票の格差最大値を最小化するアダムズ式であっても、都道府県配分の際の一票の格差最大値は1.58倍と高く、区割り実施後でも2倍以内を達成するのがせいぜいだろうことが予測できる。

 

こうしてみると、いかに配分の方式を工夫しようとも、一票の格差をこれ以上縮めることはなかなか難しい。最も少ない配分が1議席もしくは2議席であるため、一票の格差最大値は都道府県への配分段階で1.5倍~2倍となり、都道府県内の選挙区割りを工夫しても結局2倍程度にならざるを得ない。人口変動で数年後には2倍超の選挙区がいくつも生まれることになる。

 

こうした実態に対しては、議員の総定数を増やせばよいという意見もある。しかし、一票の格差・定数不均衡是正効果に関しては、その効果は小さい。

 

 

都道府県配分の限界01

 

 

表は、都道府県配分に最大剰余法を採用したとして、小選挙区で選出する議員の数を200から1000まで変えた際に、定数不均衡状態がどのように変化するか各指標で示したものである。

 

昨年総選挙と同様に300選挙区で配分を行った場合、都道府県間の一票の格差最大値は1.641倍となることは前回示した。これを400選挙区までに増やすと、1.461倍へと格差は低下する。ただし、これを1.2倍以下に減らすためには700選挙区が必要である。しかも総定数によっては一票の格差最大値は上昇することもあり、そう単純でもない。

 

このように一票の格差が縮小しにくいのは、全人口の0.5%にも満たないような人口が著しく少ない「県」に配分しようとするためである。0.33%刻みでしか動かすことができない300の議席を、0.5%以下の小さな区域にも分配しようとすると、1議席(0.33%)か2議席(0.66)を配分することになる。前者では平均に対し0.67倍の議席しか割り当てられず、後者だと平均の1.33倍もの議席が割り当てられることになる。

 

表から分かるように、(最大剰余法で)比例的に配分した場合、一票の価値が重い地域と軽い地域の両方に小県が来ることになる。300議席程度だと1、2議席しか配分できない県は多数あり、こうした平均から離れた数値が分母と分子に来てしまうため、一票の格差の最大値は大きくなってしまうのである。これを600議席程度にしても、1、2議席が2、3議席に変わるだけで、劇的な改善とはならない。

 

 

 

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