「休眠口座基金」を貧困・被災地支援対策に

お金の出し入れが10年以上ない「休眠口座」の利用をめぐり、政府は金融機関の実態を調査する方針に入った。2000年代に入り、韓国や欧州で休眠預金に関する法の制定が相次ぐなか、日本でもいち早くその問題を指摘し、活用を訴え続けてきたのがNPO法人フローレンスの駒崎弘樹氏。昨年1月、駒崎氏は日本における休眠口座基金の設立と活用プランを政府に提案した。

 

それから数ヶ月が経ち、政府が休眠預金を東日本大震災の復興支援に使う検討に入ったが、銀行業界が「もともとは顧客のお金。国が使うのはおかしい」と反発。「政府は国民のお金に手をつけるのか」と、メディアも批判的な報道を行った。駒崎氏が、具体的にどのようなモデルを描き、それによってどのような社会的効果を生み出すことが可能と考えているのか。直接、話を伺った。(聞き手・構成/宮崎直子)

 

 

マイクロファイナンスを日本でも

 

―― 休眠口座の活用を提案されたきっかけは?

 

フローレンスは病児保育事業を通じて、子供の貧困対策に取り組んでいます。所得の低い一人親の方々に対して、病気になった子供を安価で預かるサービスを提供しています。親が貧困であれば子供に教育投資ができません。したがって貧困は世襲していきます。そのような人たちに対して様々な対策を考える中で、金融というものが、本当に弱い人々のために存在していないということを肌身で感じてきました。

 

2006年にグラミン銀行総裁のムハマド・ユヌス氏が、マイクロファイナンス(小額融資制度)を通じてバングラデシュの貧困層の救済に貢献したことでノーベル平和賞を受賞しました。世界的にもそうした経済モデルの構築が注目される中、日本では一部NPOバンクの方々が先進的に頑張られてきましたが、政府の支援政策もなく、まだ大きな社会インフラにはなっていません。困った人が小口でお金を借りようと思ったら、銀行ではなくまず消費者金融にいかざるを得ません。結果、多重債務に苦しむ人が後を絶ちません。

 

「休眠口座」を知るきっかけとなったのは、2009年に韓国で行われたNPOのシンポジウムでした。韓国では若年失業率が高く、当時は日本と同様に、若者の貧困問題が社会問題として取り沙汰されていました。両国の貧困対策について議論する中で、福祉支援を目的に活用されているという「休眠口座基金」について知り、日本でも直ちに取り組むべきだと思いました。帰国後すぐに調査を開始し、2011年1月から政府に報告書を矢継ぎ早に提案していきました。東日本大震災後は、復旧費用に当てるための新しいプランも4月に提出。それが、今ようやく動きはじめているといった状況です。

 

 

休眠口座基金の創設プラン

 

―― 休眠口座基金設立のモデルを簡単にご説明ください。

 

まずは休眠預金の「照会窓口」を作り、預金者の権利を保護したうえで、休眠預金の捜索を可能にすることです。日本では現在、休眠口座の対応は各銀行でばらばらに行っています。たとえば、合併される前の銀行に休眠口座をもっていて、そこからお金を引き出したいと思っても、今は何銀行で、どこの支店に行き、手続きにはどういった書類が必要なのか、一般国民はよくわかりませんよね。それを諸外国では「統合窓口」を作って対応しています。休眠口座について誰でも気軽に相談できるような窓口を作り、休眠口座を減らしていこうというのが第一段階です。

 

次に、休眠預金を統合的に管理・運営する「休眠預金管理財団」を、市民主体の第三者機関として設立することです。そこが休眠預金を包括的に管理します。

 

つまり「照会窓口」と「休眠預金管理財団」が連携して集約的に休眠預金の情報を管理し、いつでも返済できる体制を作っておくことがポイントです。休眠預金が金融機関の利益になるのではなく、「休眠預金管理財団」に管理権を移管する。ここが透明性を持って運用されているかどうかを、さらに金融庁が規制・監督するというスキームです。

 

 

(「日本版休眠口座基金 スキーム」)

(「日本版休眠口座基金 スキーム」)

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.269 

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