池袋出会いカフェ女子大生殺人事件 裁判傍聴記録

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風俗で働く人たちが安全・健康に働けることを目指し活動しているSWASH(Sex Work and Sexual Health)。メンバーの要氏による、「池袋出会いカフェ女子大生殺人事件」の裁判傍聴記録を掲載する。

 

 

池袋出会いカフェ女子大生殺人事件とは

 

2010年9月26日深夜、女子大生のA子さん(事件当時22歳)が、池袋の出会いカフェ「キラリ」で知り合ったK(29歳・住所不定無職(2011年当時))に、ラブホテルで首を絞められ殺された。Kは、翌日中に知人に付き添われ渋谷警察署に出頭し、容疑を認めた。A子さんを殺害した動機については、「シャワーを浴びている間に財布の中にあった1万円がなくなり、A子さんが盗んだと思い、口論になり、その際A子さんから、『レイプされたと警察に言う』と脅されたため、腹を立て、首を絞め殺した」と供述。裁判では、Kは容疑を認めているため、身上や犯行の非計画性、罪の隠匿など悪質性、心証などの点が争われることになった。

 

 

2011年2月15日 初公判(9:00~16:00)

 

裁判員の構成…裁判員6名(サラリーマン風男性3人、フリーター風若い男性2人、初老の男性1人)、補充裁判員2人(若い女性1人、まじめそうな若い男性1人)

 

 

●検察官の冒頭陳述(検察官は秋葉原事件のときの検察官)

 

・事件の概要について

 

お金のことで口論になり立腹。首を絞め殺し、逃げるとき、6万円が入った被害者のバッグを盗む。

 

・被告人の身上

 

29歳。福島県出身。高校中退。前科なし。

 

・被害者の身上

 

22歳。大学生。3人姉妹の末っ子。都内で両親と姉と暮らす。

 

・被告人と被害者が出会った経緯と犯行状況

 

2010年9月25日午後11時25分、池袋「キラリ」(※出会いカフェの説明が入る。「風俗店です」と説明)で二人は出会う。被告人は被害者に2万を支払い、飲食。さらに3万を支払い性交。シャワーの後、「1万がなくなっている」と被害者を問い詰めた。被害者は、「クレジットカードの支払いに困ってた。貸してほしい」「無理やりホテルに連れ込まれたことにして警察に言う」「帰る」と言ったので、被害者を帰らせまいと捕まえようとしたら手が首にあたり、「首しめないでよ」と言われた。被害者をベッドに倒し、仰向けにさせ首を絞めた。

 

被告人は、「息をしていたら通報されたら困るから」殺した。被害者の体が痙攣するのを確認しながら、遺体の下腹部の刺青、陰毛をライターで炙り、身元を確認できないようにしようとした。午前4時、いったん自宅に戻る。渋谷で知人に犯行を言った。午後7時渋谷警察に出頭。

 

・検察から、裁判官に、注目してほしい点

 

1、 動機が短絡的で身勝手

2、 情状が悪い

3、 結果の重大さ

4、 遺族感情等

 

 

●被告人の弁護人からの陳述

 

被告人の犯行は追い詰められた結果、A子さんを殺してしまった。注目してほしいポイントを述べます。被告人は福島県出身。母親は新興宗教の熱心な信者、父親はおらず、被告人が小さい頃に離婚して母子家庭で育った。友達との交わりについて母親から、「宗教を信じていない友人と友達になってはいけない」と、一定の制約を受けていた。その結果、友達づきあいに苦手意識を持つようになった。

 

高校中退の理由は、母親とのそういった葛藤があったから。スポーツは宗教にとって許されないものだった。それで、自立をしたくて、高校を中退し、上京した。父親に強い憧れがある。弱い自分をまわりにみせることができなかった。むしろ、自分を知らない人と話したほうが自分を素直に話せる。なぜ事件を起こしたのか? 誰かと話をしたいと思い、出会いカフェに行った。そこでA子さんと知り合った。A子さんと居酒屋に入り、1時間が経ち、A子さんから「もう1時間話そう」と言われ、2時間居酒屋で話をした。さらに、A子さんから「ホテルなら3万円、カラオケなら1万円」と言われた。居酒屋で、「お金に困っている」「今日の目標が5万円」と聞いていて、お金を持っていなかったから、ホテルに行く前にお金を取りに、被告人の家に行った。そのあとホテルに行った。性交を終えてシャワーを浴びている間にお金を取られたと思ったので口論になった。

 

 

被告人:「1万円返して」

被害者:「ほんとはホテルなんかに来たくなかった。無理矢理連れて来られたって警察に言う」

被告人:「警察に言って困るのはそっちだろ」

被害者:「警察以外にも、私のために動いてくれる人はいる。あなたの家の住所だって知っている」

(帰ろうとするA子さんを引き留め、肩をつかんだ。)

被害者:「首を絞められたことも言ってやる」

 

 

それで追い詰められた。ベッドに押し倒し、騒ぐA子さんの首を絞めた。A子さんの動きが止まった。唇が紫色になってきた。ここままではA子さんの言うとおりになってしまうと思った。どこか遠くに行って死のう。その前に住む家を提供してくれた大家さん(Iさん)に話そうと思った。Iさんに会って話したら、死のうとしてた自分が間違いだと思った。罪から逃れることはできない。

 

裁判員の人によく考えてほしいのは、この裁判がどういった場所で起こったのか。位置関係について確認してください。二人がホテルに行くまでの様子にも注目してください。

 

 

●検察官から、証拠資料の説明

 

・(裁判員たちが遺体発見時の写真をみる)

・(裁判員たちが居酒屋、コンビニ、ホテル等、二人で行った状況についての写真を見る。写真は防犯カメラの画像)

・被告人の自首を説得した、I氏の供述調書の朗読

・被害者父の供述調書の朗読(下記、概要)

 

家庭の経済状況はあまりよくなかった。それで娘がこんなことになったのは自分のせいではないかと、自分を責めるようになった。自分は元大手銀行員で、転職して建設会社で働いていたが倒産。娘が中学二年生のときにタクシー運転手を始め、現在に至る。収入は銀行時代の半分になった。

 

娘は奨学金で大学に行っていた。高校生のときからおこづかいを渡さなかった。妻からも、「銀行を辞めなければ娘はこんなことにならなかった」と言われ、夫婦関係も悪くなった。

 

・被害者母の供述調書の朗読(概要)

 

娘の生い立ちについて(省略)。三姉妹の末っ子でおばあちゃん子だった(裁判員らが被害者の小さい頃~成人式までの写真をみる)。成人式のときにおばあちゃんに晴れ着を見せたいと、一人暮らしのおばあちゃんが住んでいるところまで行って一緒に写真を撮った。最近は忙しくなっておばあちゃんに会いにいけなくなったから、おばあちゃんに手紙を書いたりしていた。娘が殺されたとおばあちゃんに電話したとき、おばあちゃんはすごく泣き叫んだ。

 

娘はファッションやインテリアが好きで、将来の夢は自分のファッションブランドを立ち上げることだった。だから、まず、大学を卒業したらファッション関係の会社に就職するつもりだった。出会い系は、「コネを見つけられるかもしれない」と言っていた。「お食事するだけでお金をもらえるバイト」と言ってたので、「大丈夫なの?」と言ったことがある。「馬鹿なまねはしないから大丈夫」と言っていた。

 

娘が殺されてから毎日泣いて暮らしている。娘が首を絞められてどんなに苦しかったか、自分でわかろうとして、なんども自分の首を絞めてその苦しさを知ろうするが、あまりの苦しさに耐えられずに息をしてしまう。

 

被告人には、ただ死んでもらうだけではなく、娘と同じように、自分の首を絞めて、娘と同じ苦しさを味わって死んでもらいたい。【次ページにつづく】

 

 

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