大きな慣性に逆らって――父親たちの語るPTA

違法だと知りながら、どうして誰も止められないのか。10年近くPTAに関わる作家の川端氏と、憲法学者の木村氏がその問題点について語り合う「父親達の語るPTA」後編。(構成/山本菜々子)

 

入会なんて聞いてない ―― 父親たちの語るPTA(前編)

 

 

強制加入は違法だけど……

 

木村 ここからは、PTAの問題点についてより深くお話できればとおもいます。川端さんは「そもそもの問題は強制加入だ」とおっしゃっていますよね。知らない間に入れられて、様々な同調圧力が加えられていることが問題であると。

 

川端 そうですね。PTAって地域差がすごくあるんですが、その中でもほとんどの地域で行われているのが自動加入、強制加入です。全国共通の問題とだとおもって、強調してきました。

 

木村 強制加入はどう考えても違法だと私はおもっています。シノドスでのインタビューでも述べていますが、常識的に考えてもおかしいです。もし、「任意加入ですよ」と言った場合、保護者や学校の側はどういう反応になるんでしょうか。実はぼくも保育園の保護者会で役員になり、任意加入の団体にしたんですが、正直風当たりが強かったんです。PTAと戦ってきた川端さんの実体験としてはどうですか。

 

川端 まず、信じてもらえませんでした。10年前に「自動加入はおかしい」と当時の本部役員に言っても「なにいってんの?」という反応でした。PTAに入るのは当然で、なんで問題にするのかそれ自体がわからない。

 

木村 今は変わってきていますか。

 

川端 今は、新聞もテレビも取り扱うようになったし、ネットでの情報も充実してきましたから。任意加入であることを知識として知っている人達は増えています。執行部である本部役員と話せば個人として「本来は任意加入」と認めるところまではいくんですが、「それを公に言ってしまったら、会員が減る」「全員加入が前提だから、組織が崩れてしまう」「一生懸命やっている人に不公平」といった意見がでて、それを表ざたにするところまではなかなかいかないんです。仮に、アリバイ的に会長が入学式挨拶で「任意の団体」と言っても、規約では全員加入のままで、それを変えようという提案をしても門前払いだったり。

 

これは、先進的に見えるPTAでもそうなんです。ぼくが保護者向けに書いた「PTA再活用論」(中公新書ラクレ)では、PTAの役をやりたい人がやる「ボランティア制度」を取り入れた江戸川区のPTAを紹介しているんですが、そこも自動加入でした。今、江戸川区では似たしくみのPTAが増えているようで、中にはとても徹底したボランティア化を進めているところもあります。たまたま、最近、そういうPTAの会長さんと話す機会があって、「ここまでやったのなら、入退会自由を前面に出しても人は集まるのではないですか」と聞いたら、例によって「会員が減るのがこわい」と言われました。

 

木村 強制加入が違法だと知識ではわかっていても、そうしてしまうということですよね。

 

川端 「違法」については、なかなか取り扱いが難しくて。ぼくたちの社会には素人が法律論を振りかざすことに対して、ある種のタブーがあるとおもうんです。木村さんのような本物の専門家だったら違うのかもしれませんが、ぼくのような法律の素人が言っても、直接の判例があるわけでもないし、相手に響かないんですよね。ぼくは、むしろ、訴訟リスクの話として言いかえるようにしていました。「PTA会長をしているだけで、訴訟のリスクがあったら嫌でしょう」って。

 

木村 私は、法学部の准教授なので法律の観点から、憲法21条の保障する「結社しない自由」に反するので、「強制加入は違法だ」と朝日新聞の記事で書きました。それがいろんなところで切りぬかれて、様々な学校へ送られているという話を聞きました。やはり、法律家が「違法である」と明言する必要があるのかもしれませんね。

 

とはいえ、法律をよく知らない人たちは、「強制加入は駄目だとは書いていない」と反論してくるそうですね。また、強制加入は違法だと認めても、「強制しているわけではなく自動加入だ。嫌なら辞められる」などと、入会の意思も確認しなければ、退会制度も整備していないにもかかわらず、反論してくることも多いようですね。

 

そこで、法律に詳しくない人にも、「これは絶対に違法だ」とわかってもらうにはどうしたらいいか、どこが違法かなんだと具体的に指摘するかというのがポイントです。PTAに関する判例があれば、簡単なのですが、残念ながら判例はありません。

 

そこで私は、名簿に目をつけました。同意なしに個人情報を第三者に提供してはいないというのは判例があります。学校が勝手に子どもの名簿を流すのはいけないわけです。そうすると、本来は入会届を書いてもらって、それをもとにPTA名簿をつくらなければならないはずで、そもそも、自動加入というのを合法的にできるはずがないというのが出発点であると。そこをいろんな人に知ってもらう必要があるだろうと。

 

川端 それは賛成です。PTAの運営は、名簿を学校から提供してもらうのが当たり前になりすぎている。ただ、最近は多少用心深く、名簿自体はもらわずに、学校側がつくったクラス連絡網をPTAの連絡用に使っていいか事後承諾の確認をとるところもあるみたいですね。そこで、嫌だ、といったらどうなるのかわからないけれど、この場合も、学校がつくった連絡網から、実質的に会員名簿をつくっていると言えるわけです。

 

ところで、今までの突破口って、会計問題だったんですよ。本来公費で賄われるべきものを、PTAから学校側に流している場合。それが保護者にとって負担だと、昭和30年代に休止されることになりました。でも今も隠然と続いていて、最近では2012年、読売新聞が和歌山県の高校PTAの会費流用問題を皮切りにキャンペーンを張って、文科省も全都道府県を対象に調査をしています。また、最近では日Pの全国研究大会で、運営費が不正流用された疑いがあるとしてニュースにもなりました(※リンク切れ http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20130723-OYT8T00835.htm)。

 

お金の面ってすごい食いつきがいいんですよね。でも、ぼくはあんまりピンとこなくって。保護者から強制的に取り立てるというのはダメですけど、たまたまビル・ゲイツみたいなお金持ちがいて、情報教育室のコンピュータがあまりに古いから刷新したいと寄贈してはいけないのだろうか、と。

 

木村 大学だったら、研究費や施設費のための寄付って当たり前ですけどね。必要不可欠な部分は公費で賄うべきだとおもいますが、プラスアルファの部分をまったくやってはいけないというのはすごくおかしな話ですよね。

 

川端 木村さんは、どんな方法で自動加入の壁を破ったんですか。

 

木村 ははは、恥ずかしいですね。ほとんど強行突破でした。「今年から任意加入ですので書類を出してください」と保護者会の名で書類を配ったんです。まぁ、大混乱でしたし、「なんであんな紙配るんだ」と怒られました。でも、そこは自分が法律家だったことを活用して、「法律的にはこういう問題があるし、名簿をもらったら違法行為なんですよ」と説明しました。

 

確かに、いきなり配っちゃうというのは強引だったし、びっくりさせて悪かったなとはおもいます。ただ、法律論としては、当然やらなければいけないことをしたまでで、今までと違かろうとなんだろうと、違法は正さねばならないわけです。それで、なにがどう違法なのかをしっかりと説明したんですけど、名簿の問題というのは効いたなという印象があります。名簿を勝手につくれるわけがないですし、名簿なしで運営もできません。

 

ですから、任意加入で戦っている方は、まず学校側に「なんでPTAが名簿をもっているんですか」というのがいいのかもしれません。今個人情報の保護というのがどの学校もセンシティブになっているんで、細かいようで突破口になるのかなと。

 

とはいえ、川端さんのお話を聞くと、会の崩壊がこわくて踏み切れない人が多いようですね。

 

川端 ぼくも本部役員をやったことがあるのでよくわかるのですが、PTAの役目を引き受けるということは、その会を存続させる義務を負うことです。ですので、自分達の時に会が崩壊してしまってはこわいというのがあるのかもしれません。

 

もう一つは、何十年も歴史が積み重なっていくと、歴代のPTA会長が地域の有力者になっているんです。地元の議員や町会長、商店会長だったり。現役のPTA会長もその地域の伝統に取り込まれるような傾向がある。もしくはそういう人選がなされているのかもしれない。ですから、「私の代で変えるわけにはいかない」、という発想になりがちです。

 

 

 

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