18歳世代の医療、介護、年金――20年後、30年後、40年後の未来は政治行動次第

6月22日公示、7月10日投開票の第24回参議院議員選挙。選挙権年齢が18歳以上に引き下げられてから最初の投票となります。シノドスでは「18歳からの選挙入門」と題して、今回初めて投票権を持つ高校生を対象に、経済、社会保障、教育、国際、労働など、さまざまな分野の専門家にポイントを解説していただく連載を始めます。本稿を参考に、改めて各党の公約・政策を検討いただければ幸いです。今回は、若者の医療・介護・年金問題という視点から、淑徳大学教授の結城康博氏にご寄稿をいただきました。(シノドス編集部)

 

 

はじめに

 

7月10日投票の参議院選挙において、初めて18歳から投票できる仕組みが導入され、各政党とも若者の支持率アップに力点をおいている。厚労省の人口動態総覧によれば、平成10年生まれは120.3万人、平成9年生まれは約119.1万人、平成8年生まれは120.6万人、平成7年生まれは118.7万人、平成6年生まれは123.8万人となっている。しかし、第2次ベビーブームと呼ばれた「団塊ジュニア」世代(昭和46年から昭和49年生まれ)の出生数は200万人を超えていたため、明らかに少子化傾向が窺える。

 

ところが、日本の医療、介護、年金といった社会保障制度の骨格は、現役世代が高齢者世代を支える仕組みとなっており、現在のような超高齢化少子化社会に適合しているとはいえない。このまま制度の仕組みが大きく変革されなければ、18歳~20歳層の20年後、30年後、40年後は、社会保障費の負担といった「呪縛」にとりつかれた人生になるといっても過言ではない。その意味では、政治的な関心を強め、社会保障制度の抜本的な改革に声を上げていくべきではないだろうか。

 

 

1.大学進学率は50%

 

18歳人口に占める大学、短大、高専、専門学校といった高等教育機関への進学率は、平成25年80%となっており、親の子育てに関する不安としても「大学等の教育費」との回答が68.9%を占め、就学前教育費等34.8%、小中高の学校教育費31.5%を大きく引き離している。特に、4年生大学の進学率は約50%となっており、先の団塊ジュニア世代の20%と比べると、かなりの高さとなっている。

 

しかし、昨今の高等教育に進学する学生のうち貸与奨学金を利用している学生も多く、卒業後に200万円~500万円と借金を抱える新社会人は少なくない。親の就労状況の変化や大学全入時代と相まって、借金を抱えた新社会人が増えることは、社会全体の経済活力にも影響を及ぼすことになる。いわば膨大な借金を個人が背負うことで、日本の高学歴化は担保されてきたといっても過言ではない。

 

今後、負担が増していく保険料や税といった社会保障費負担に加え、若者の一部は、高等教育の奨学金返済といった二重、三重の負担を背負いながら社会人としての人生を歩まなければならない。

 

 

2.晩産化という事実

 

また、男女共同参画の進展によって、女性の「晩婚化」「晩産化」傾向が加速化している。2014年女性が第一子をもうける平均年齢は30.6歳、第二子となると32.4歳となっている。また、女性が子を産む年齢別割合において35歳以上が27.6%を占めている。このまま「晩産化」傾向が加速化していけば、18歳~22歳といった大学生の子を持つ親世代は50歳を超えるのが当たり前となる。

 

しかも、日本人の多くは50歳を超えると、自分の親世代も75歳を超え、「介護」というリスクが間直に迫る。実際、70歳~74歳において介護が必要となる要介護率は6.3%を占めるが、75歳~79歳となると13.7%と倍以上となる。しかも、さらに年齢を重ねる度に、その割合が高くなっていく。

 

つまり、「晩産化」は、必然的に自分の親の介護と、子供の教育費問題が同時にふりかかる層を増やすことになる。(これらを「ダブルケア」と世間では呼ぶことがある)しかも、50代以上の世代は、親の介護のために自分の仕事を辞めなければならない「介護離職」といった問題にも直面せざるをえなくなり、年間、その数は約10万人にも達している。

 

そうなれば、孫世代である20歳前後の学生が高等教育機関へ進学したら、さらに親の支援金が減額され、自らアルバイトなどを増やして家計を助けなければならなくなる。

 

 

3.安易な社会保障制度内の財政移転は危険

 

しかし、日本の財政事情が厳しい中、国が給付する社会保障費用約115兆円のうち高齢者関連費が約7割を占めていることから、その割合を見直して少子化対策の一環から子育て支援に費用を回すべきではないかとの議論が一部で根強くある。政治家の中には、「高齢者には、少し、我慢をしてもらって、未来のある子供に限られた財源をまわそう」という声を聞くこともある。

 

しかし、高齢者関連費用を削減して少子化対策費に振り替えれば、言うまでもなく介護関連サービスが削られてしまい、結果的に50歳以上の「ダブルケア」世代が直接、介護に携わるか、もしくは有料老人ホーム等の利用を視野に入れながら、親への仕送りを強化しなければならなくなる。

 

つまり、社会保障給付費に占める高齢者関連費用の割合を削ると、間接的に孫世代にも影響を及ぼしていくことから、少子化対策への財源確保は、別途、他から賄うべきである。いわば安易な高齢者関連費から少子化対策費への振り替え策は、避けなければならない。

 

 

4.高齢者同士が支え合う「世代内扶養」の強化

 

そのため「世代内扶養」の強化が求められる。つまり、同じ時代を生きてきた高齢者世代同士が助け合うというシステムを、社会保障制度に根付かせていくのである。現在の社会保障制度は、若い人が高齢者を支える「世代間扶養」が基本となっているが、高齢者同士がお金を出し合う「世代内扶養」は、あまり機能していない。

 

内閣府『平成27年版高齢社会白書(全体版)』では、高齢者65歳以上が世帯主で二人以上の平均貯蓄額は約2377万円と、全体の二人以上世帯の平均貯蓄額は1739万円なのに対し約1.4倍となっている。当然、長い人生経験のある高齢者世帯のほうが貯蓄額は高くなる。しかし、高齢者間の世代内でみると、高齢者65歳以上が世帯主で二人以上において4,000万円以上の貯蓄を有する世帯が17.6%を占めるものの、同じく二人以上世帯で300万円未満の貯蓄しかない世帯が13.1%を占めている。明らかに65歳以上の高齢者間において格差が生じている。

 

これらは所得面である年金額においても同様である。国民年金のみの受給者の額は月平均5万円であるのに対し、厚生年金や企業年金受給額は15万円~25万円以上と、かなりの差がある。年齢階級別のジニ係数(所得分配の不平等さを測る指標)からも理解できるように(図1)、年をとるにつれ格差は拡充する。つまり、年齢別に再分配機能を強化する必要がある。

 

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同世代を生きた人たちが世代内で「所得及び資産の再分配」の強化を図り、後の世代である子や孫らに負担を強いらないシステムは不可欠であろう。具体的には、早い段階で来年から実施されるマイナンバー制度を応用して金融資産の透明化を図りながら、十分な所得及び金融資産の保有者に対しては、医療及び介護保険の一律3割自己負担を課すべきであろう。また、財産を相続する際の相続税の増税の引き上げも実施していくべきである。高額な年金受給者においては、そのうち国が負担する1人あたり約3万円の年金受給額を停止する方策も考えらえる。【次ページにつづく】

 

 

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