親と暮らせない子どもをめぐる状況

親が育てられない場合、子どもはどこへ行くのか

 

東日本大震災の発生後、「災害遺児」の存在がにわかにクローズアップされ、その支援をめぐる議論に多くの関心が寄せられた。そこで気になるのが、そもそも里親制度やさまざまな施設について、世間はどれほどの知識を共有できているのだろうかという点だ。

 

たとえばインターネット上の質問検索サービスで「離婚」や「子ども」といったキーワードで検索をかけると、さまざまな質問がヒットする。たとえば「離婚を考えていますが、子どもを育てられません。引き取ってくれる施設を教えてください」「子どもを施設に入れると、毎月お金がかかるのですか」といったものだ。そしてその回答は、必ずしも十分なものだとは言えない。

 

厚生労働省が2008年に発表した統計によれば、現在、施設や里親のもとで暮らしている子どもたちは、里親委託児3611人、児童養護施設児31593人、自立施設児1995人、情緒障害児1104人、乳児院児 3299人、母子施設児6552人の計48154人。一方で総務省の2010年人口推計月報によると、19才以下の人口は23077千人であるため、日本の子どものうち施設で暮らしているのは約0.2パーセントということになる。

 

 

厚生労働省「児童養護施設入所児童等調査結果の要点 (平成20年2月1日現在)」より

厚生労働省「児童養護施設入所児童等調査結果の要点 (平成20年2月1日現在)」より

 

 

施設や里親のもとで生活する子どもたちの状況は、一体どのようなものなのか。その実態を一言で言い表すことはむずかしく、「それぞれの施設によって大きく異なってくる」と言わざるを得ない。私立の施設では運営方針はさまざまで、外に見えてこない部分もある。公立の施設でさえ、詳細な規則が設定されているわけではなく、査察も多くない。代々受け継がれてきた方法や雰囲気が色濃く感じられることも多い。外部から突然その空間に入ると、論理的でない、現代的でないと感じることもままある。

 

わたしは鹿児島から北海道まで20近くの施設を訪問したが、清潔で明るいところもあれば、壁一面をゴキブリが覆っているようなところもある。なかには「反省」時に児童が罰として掘った穴だらけのところなど、本当にさまざまな施設があった。生まれた親の環境だけでなく、引き取られる施設によっても、子どもの運命は大きく左右されてしまうのだ。

 

また、報道されている以上に、施設内では多くの事件が起こっている。わたしはかつては福祉事務所で2年ほど勤務していたが、現場で働いていたその僅かな期間であっても、「職員の耳には入っていたけれど、新聞報道はされていない」事件がいくつもあった。なかには、夜間アルバイトの男性が、施設で暮らしている女児に毎晩のように性的関係を強要していたというものさえあった。

 

断っておくと、そうした大きな事件が起こるたびに、その事務所では記者会見が開かれてはいた。にもかかわらず紙面に載らないということもあった。ニュースの多い都市部においてこのケースは「人々の関心が低い」と判断されているからか、もっと凄惨でないかぎりは取り上げられないのかもしれない。

 

逆に、新聞報道されたなかにはこのような事例もあった。

 

 

2008年11月06日高知新聞

まるで拷問のよう――。高岡郡佐川町甲の児童養護施設「白蓮寮」(寺尾篤寮長)で今夏、「ペナルティー(懲罰)」として、十人以上の入所児を「石運び」に 従事させていた今回の虐待。炎天下にほぼ日中いっぱい、園庭と裏山の間の約二百メートルをただ往復させるだけの無意味で過酷な行為に、その様子を見た関係者は「子どもたちはあきらめたように暗い目をして、石の入ったバケツを運んでいた」と振り返る。

 

 

子どもたちは、自分たちが入所する施設を選ぶことができない。適切に運営されていない施設にあたった子どもたちが、さらに精神的な問題を根深くしたり、施設から「脱走」した結果、凍死したりといったことも起きている。

 

 

 

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