ケインズの助言

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「工夫」の道具箱から何を取り出すべきか

 

では、「工夫」の道具箱から何を取り出すべきなのか?

 

政府は新成長戦略を策定し、当面の最重要課題として、需要面の政策対応により景気を回復させ、2020年に名目成長率3%、実質成長率2%を上回る成長を実現すること、2011年度中に消費者物価上昇率をプラスにすること、そして早期に失業率を3%台に低下させることをあげている。

 

この目標は正しいが、問題となるのは提示されている手法だ。大きくふたつの問題点がある。

 

ひとつ目は、具体的にデフレから脱却するための方法論が、「政府と日銀が緊密な連携をとる」という記載に尽きていることだ。

 

10年超もデフレがつづくなかで、判で押したように「緊密な連携を取る」だけでデフレから脱却できると期待するのは無理である。政府と日銀が緊密な連携を取るためには、インフレターゲットといった具体的な政策枠組みを早期に構築し、責任・手段・目標を明確にした上で必要な金融緩和を行うべきだ。

 

ふたつ目の問題点は、政府が指定した特定産業を促進するための産業政策、法人税減税やEPAの促進といった競争政策、オープンスカイの推進といった規制緩和策が混在している点である。

 

産業政策の効果は実証分析で肯定的な結論を探す方が難しい。政府は企業ではないのであり、有望な産業がどこかを判断することなど不可能であることを考えれば、産業政策を止め、競争政策や規制緩和策を行うべきだ。

 

 

需要拡大のための必要原則とは

 

需要を拡大させ、物価を引き上げるには、市場の供給よりも速いペースで支出を増やすことが求められる。そして長期停滞がつづく現状で必要なのは、社会全体の購買力を高めることであり、そのためには借入れによる支出を社会全体で増やすこと、外需を取り込むことが必要である。

 

近い将来、事業が拡大し実質的なコストが減るという環境が生じれば、新たな産業が生じ、企業は溜め込んだ資金を投資というかたちで支出するだろう。利益を確保できるようになれば、借入れによる投資が進み、賃金や雇用環境も改善し、これらが更なる需要拡大に結びつく。

 

外需を取り込むには、金融緩和策を通じて為替レートを円安にすることが求められる。

 

自国通貨安は近隣窮乏化に繋がるとの批判があるが、通貨安により当該国の購買力が高まれば、輸入というかたちで効果は当該国以外の国にも波及する。

 

世界的なインフレ率の低下と需給ギャップの拡大が懸念されるなかにあっては、各国が一致して同時に行動を起こすのがセオリーだ。ところが、日銀の金融緩和に対する消極的な姿勢と行動が、現在の円高に影響している。現状のままさらなる円高が進めば、景気回復のふたつのエンジンである生産と輸出にも重大な影響が及び、二番底懸念が現実のものとなるリスクが高まるだろう。

 

じっと座りこんで「できない」と頭を振っていれば、賢明なようにみえるのかもしれない。しかし何もしないで待っているあいだに使われなかった労働力は、あとでいつでも使えるのではない。失われて、取り戻すことができなくなるのだ!

 

「できない」理由をあげても何の解決にはならない。大胆になり、開放的になり、実験をし、行動を起こし、さまざまな可能性を試すといったことを行ってはならない理由はひとつもない。

 

現在の我が国において求められるのは、ケインズの助言と「失われた20年」の長期停滞の政策の経験を念頭に、「工夫」を行うことなのである。

 

 

推薦図書

 

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ケインズが書き記した第一級の論説集である。本書の邦訳はすでにあるが、山岡洋一氏による新訳は読みやすく、かつインフレ・デフレに関する論説をメインに収録されていることが特徴である。これは適切な選択だ。80年近い前の論説ながら、ケインズの言葉はいささかも風化していないことに驚くだろう。そしてデフレに関するケインズの論説、およびその対応策に関する議論が、現代においても参照に値するものであることがわかるだろう。

 

 

 

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