第二次安倍政権の経済政策を振り返る

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的外れな第三の矢、そして真に必要な第四の矢への道筋を

 

アベノミクス第三の矢である「民間投資を喚起する」成長戦略についてはどうか。成長戦略を考える際には三つの視点でみると良い。

 

第一の視点は、アベノミクスが2年程度で2%の物価上昇率を安定的に達成した後の日本経済の大まかな方向性を決めるためのものとして成長戦略を捉えるというものだ。

 

これには二つ目の視点であるレジームが関わってくる。日本経済が成長していくためには、若田部昌澄氏が言う、オープン・レジームに舵を切ることが必要である。

 

オープン・レジームとは、裁量やお上からの計画を重視するのではなくルールや枠組みを重視する政策運営を行うこと、特定企業や産業の利害重視(プロビジネス)ではなく市場を重視すること(プロマーケット)、新規参入を警戒するのではなく新規参入を歓迎する政策運営を行うこと、産業政策ではなく競争政策を進めること、特定産業への補助金ではなく広く恩恵が行き渡る減税を重視すること、裁量型再分配ではなくルールに基づいた再分配政策を進めること、といったものである。このような方針にどれだけ舵を切れるかで日本経済の将来像は随分と変わるはずだ。

 

そして第三の視点は政策手段である。成長戦略には規制緩和、ターゲティング・ポリシー、対外政策が混在している。その中で、規制緩和と対外政策を重視すること、さらに実行する政策を絞り、着実に実行することが必要だ。

 

成長戦略「日本再興戦略」は三つのプランに分かれる。日本産業再興プランは産業基盤の強化をうたっているが、設備投資を拡大させ、立地競争力の強化を進めるには、法人税減税や事業設立のための手続きの簡素化が必須である。そして女性や高齢者の活躍を促進するための制度整備も必要だ。また国内市場の開拓をうたう戦略市場創造プランでは、医療・電力・再エネ・インフラ整備・農業・観光振興といった産業が対象となっているが、その中でも医療・電力・新エネ・農業については規制緩和を徹底することが必要だ。

 

逆に特定団体の利益の温床になるのであれば元も子もない。観光振興については、訪日プロモーションといった地道な努力も不可欠だが、円安の環境を維持・強めることも重要だ。海外市場の開拓を狙う国際展開戦略については、戦略で述べられているTPPを含む経済連携協定の推進に全力を尽くすべきであろう。

 

昨今の情勢をみると、経済政策においてもデフレ脱却最優先からデフレ脱却と財政再建を両立させるための増税といった形で一兎を追う姿勢から二兎を追う姿勢への変化が見られるし、さらに経済重視ではなく徐々に「安倍カラー」が台頭しつつあるようにも見受けられる。こうした動きは好ましいと言えるのだろうか?

 

筆者は今年の4月に公刊した『アベノミクスのゆくえ』(光文社新書)の末尾で次のように述べた。少々長いが引用させていただこう。

 

 

安倍政権が誕生せず、これまでと同じ「デフレ維持レジーム」に沿った政権が誕生すれば、日本経済の停滞はさらに深刻化するでしょう。「失われた20年」ではなく「失われた30年」が現実のものになるのかもしれません。停滞が続くことは、我々が現在、そして今後直面するであろう問題への耐性をさらに失わせることにつながります。

 

「大胆な」金融政策に対する野党の反発は、景気回復やデフレ脱却という「事実」により正当ではなかったことが論証されるでしょう。むしろ野党がアベノミクスに明確に反対すべきは、安倍政権の経済政策の中から適切な所得再分配政策を行うという視点が欠けているのではないかという点です。

 

わが国は先進諸国なみの経済成長が必要です。しかし拡大した経済のパイを、財政状況を考慮しつつ適切に分配することは、社会そのものを安定化させるとともに、市場メカニズムそのものをも有効に作動させる条件であることにも留意すべきです。都市と地方の格差をどう決着をつけるのか、世代間の格差をどう是正するのか、年金や医療・介護が抱える課題にどう対処していくのか。これらは成長によって改善できる要素もありますが、それだけでは解決が困難な分野も当然存在します。

 

デフレからの早期脱却と、デフレに起因する経済停滞の影響をいかに早く取り除くことができるか。この重要性とともに、「アベノミクスの先」の問題にいかに早期にフェーズを移すことができるかが今後の鍵と言えるでしょう。

 

 

三段ロケットに例えれば、アベノミクスは最初のロケットをようやく切り離したところである。確かに発射したことは大いに評価すべきだ。だが途中で推進力を失い、はたまた墜落してしまっては元も子もない。こうした意味で2014年は勝負の年である。そして「アベノミクスの先」の問題に早期に踏み出せるようになってもらいたいものだ。

 

サムネイル「Shinzō Abe in 2013 cropped.jpg」Fæ (original photo) by cropped Lq12

http://commons.wikimedia.org/wiki/File%3AShinz%C5%8D_Abe_in_2013_cropped.jpg

 

 

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