『乗数効果と公共事業の短期的効果への疑問──藤井聡先生へのリプライ』への追加コメント

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終わりに

 

以上、上記(2)(3)の議論を踏まえますと、飯田氏のリプライを頂戴した上でもなお、当方の先週の「討論」で申し上げました結論であります、

 

 

A)政府だけが無駄な投資をしているかのように論ずることは正当化し難いし、

B)民間が無駄な投資をしていないかのように論ずることも正当化し難いし、

C)「無駄な投資」が仮に(官民問わず)存在したとしても、それによって景況感には何の足しにもならないと論ずる事は正当化し難い、

 

 

という三点の当方の主張は何ら論駁されるものでも、修正されるものでもない、と申し上げねばならないと筆者は感じております。

 

そして、このA)、B)、C)の三点の主張を受け入れる論者は、残念ながら飯田氏の主張を総体として受け入れることはできないとお感じになるのではないかと、やはり感ずる次第であります。

 

(なお言うまでもないと存じますが、フロー効果のみの事業を筆者は主張しているのでは決して無く、フロー効果とストック効果の双方が豊富に存在する事業こそを政府は進めるべきであると筆者は考えており、そして、フロー効果の出現の仕方は供給量制約に影響を受けるであろうという点に反論している訳では決して無い、という点は、誤解を避けるために、改めてここに付記しておきたいと思います)

 

無論、繰り返しますが、飯田氏の主張全てに対して疑義を申し上げているのではなく、大いに同意する箇所が存在するという一点については、重ねて申し上げたいと存じますが、少なくともここに上げましたA)、B)、C)の三つの論点に同意されるか否かにつきましては、読者の皆様方の誠実・真摯かつ理性的なご判断を期待いたしたいと思います。

 

重ねて繰り返しとなり恐縮でありますが、飯田氏の論説を基調としつつA)、B)、C)という筆者の主張に「同意しない」論者は、A)、B)、C)という筆者の主張に「同意する論者」よりも、公共投資をデフレ脱却においてより軽視する立場をおとりになることは論理的に自明であります。従いまして、やはりこの飯田氏との討論は、適切なデフレ脱却対策のあり方を論ずる上で、重要な討論となるものと考えてございます。

 

ついては当方の討論に対して大変に懇切丁寧にご対応頂きました飯田氏に、改めて心からの感謝を申し上げつつ、筆者からの再コメントを終えたいと思います。

 

飯田先生、また、ここまでお付き合い頂きました読者の皆様方、誠に、ありがとうございました。

 

追伸1

メルマガとしては異例の超長文エントリになりました点については、ご容赦願えますと大変にありがたく存じます。

 

追伸2:

上記討論を両論ご覧になった上で、当方と飯田氏のいずれの主張が誠実・真摯かつ理性的に考えて適当であるか、等を含めまして、多様なコメント頂戴出来ますと幸いです!

 

 

【参考文献】

Fujii, S. Kitamura, and R., Suda, H (2004) Contingent Valuation Method for Procedural Justice, Journal of Economic Psychology 25 (6), pp 877-889.
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0167487003001211

Fujii, S. and Garling, T. (2003) Application of attitude theory for improved predictive accuracy of stated preference methods in travel demand analysis, Transport Research A: Policy & Practice, 37 (4), pp 389-402.
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0965856402000320

藤井聡(2003)社会的ジレンマの 処方箋:都市・交通・環境問題の心理学,ナカニシヤ出版.

藤井聡(2008)土木計画学―公共選択の社会科学,学芸出版社

藤井聡(2001)土木計画のための 社会的行動理論-態度追従型計画から態度変容型計画へ-,土木学会論文集,No. 688,/IV-53, pp. 19-35.

藤井聡(2010)「選好形成」について~ハイデガーの現象学的存在論に基づく考察~、感性工学、感性工学 9(4), 217-225.

竹村和久・藤井聡:一般対応法則と意思決定論,理論心理学研究,7 (1), pp. 40-44, 2005.

※上記文献の詳細は、下記の当方のホームページでもご検索頂けます.
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/member/fujii

 

 

 

 

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