経常収支黒字減少のなにが問題なのか?

輸入金額の増加は燃料輸入の急増によるものではない

 

ところで冒頭でも述べたが、最近のメディアでは「ソニーの凋落」に代表されるように、日本の製造業の競争力低下を強調する報道が目立つ。個別企業の「事情」を排除した場合の日本の製造業の「競争力」はどうなっているのだろうか。

 

これをみるためにマクロ経済分析でよく用いられる指標としてはRCA(比較優位係数、(輸出―輸入)÷(輸出+輸入)×100)がある。RCAが+100に近いほどその産業(または品目)は強い国際競争力を有するとみなされ、-100に近いほど競争力がないとみなされる。そこで、貿易統計を用いて主要産業のRCAを計算してみた(図3~5)。

 

 

graph3

 

graph4

 

graph5

 

 

確かに電機や資本財に属する輸送用機械(トラック等)、及び玩具の競争力が低下していることが確認できるが、代わって、金属、化学(産業素材)の競争力は逆に上昇していることが示される。また、自動車(耐久消費財)の競争力は80弱の高水準でほとんど一定で推移している。すなわち、個別の産業をみると、競争力の低下に見舞われている業種も散見されるのは事実だが、逆に競争力が増大している業種もあり、総合的に判断すると、この5年間で日本の製造業の競争力の低下が著しいとは考えにくいのである(個別産業の盛衰は貿易収支構造とは独立して絶えず起こっている。とくに「モジュール化」にともなうアジア諸国間での高度な国際分業体制が構築された電機でかつて「フルセット主義」を貫いてきた日本が国際競争力を失うのは仕方がないことである)。【次ページにつづく】

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.276 

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・三谷はるよ「市民活動をめぐる“3つの事実”――「ボランティア」とは誰なのか?」
・五十嵐泰正「『上野新論』――「都市の時代」が危機を迎えたなかで」
・倉橋耕平「メディア論の問いを磨く――言論を読み解く視座として」
・山田剛士「搾取される研究者たち」
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