外国にルーツを持つ子どもたちの学びの保障――多文化共生センター東京の現場から

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外国にルーツを持つ子どもたちは、近年、急速に多国籍化、多民族化しており、その多くは定住し、将来、地域社会を構成する住民として共に生活していく可能性が大きい。しかし、こうした子どもたちへの教育は、国レベルでも自治体レベルでも十分に保障されているとは言えない。

 

多文化共生センター東京は、外国にルーツを持つ子どもたちの学びの場を保障するために様々な活動を行なってきた。中でも、学齢を越えて来日した学齢超過の子どもたちに対し学びの場を保障するために「たぶんかフリースクール」を開校し継続した支援を行っている。ここでは、「たぶんかフリースクール」の現場からとして外国にルーツを持つ子どもたちが、学びの場につながることへの困難な状況について述べたい。

 

 

外国にルーツを持つ子どもたちの教育

 

2014年6月発表の法務省「在留外国人統計」による在留外国人数は2,086,603人、そのうち241,187人は「子どもの権利条約」で学ぶ権利を保障されている18歳以下の子どもたちである。

 

文部科学省によると「外国人の子どもには義務教育への就学義務はないが、公立の義務教育諸学校へ就学を希望する場合には日本人児童生徒と同様に無償で受け入れており、日本人と同一の教育を受ける機会を保障している」としている。それでは実際にどのくらい人数の外国籍の子どもたちが日本の学校に在籍しているのだろうか。

 

 

資料1:在留人数:2013/6法務省「在留外国人統計」 学校在籍数:2013/5文部科学省「学校基本調査」

資料1:在留人数:2013/6法務省「在留外国人統計」 学校在籍数:2013/5文部科学省「学校基本調査」

 

 

2013年5月の文部科学省「学校基本調査」では、日本の学校に在籍している外国籍の児童・生徒数(国立、公立、私立の合計)は、小学校では41,249人、中学校で22,248人、高等学校12,701人となっている。相当する年齢の子どもの在留数と比較するために在留外国人統計を年齢別に見てみると、2013年6月の時点で6歳から11歳の子どもは66,880人、12歳から14歳の子どもは34,605人、15歳から17歳の子どもの数は37,593人という数がでている。つまり小学校相当年齢で38%、中学校相当年齢で36%、高等学校相当年齢では66%の子どもが日本の学校に通っていないということになる。もちろん民族学校やインターナショナルスクールに通っている子どももいるため一概に指摘することはできないが、中にはどこの学校にも属さず、学びの場から切り離された子どもがいるだろうことは考えられる数字である。

 

また、これら18歳以下の子どもたちがどのような在留資格で日本に滞在しているかを調べたところ、定住や永住などの在留資格が全体数の8割を超えていることがわかった(法務省在留外国人統計「在留資格別 年齢・男女別 在留外国人」)。つまり彼ら・彼女らが将来的には、母国に帰らずに日本に定住する可能性は大きい。

 

 

さまざまな状況の子どもたち

 

外国にルーツを持つ子どもたちの背景はさまざまであり、置かれている状況も複雑である。

 

日本で生まれたが両親が外国籍であるために自身も父母の国の国籍となる子どもたちがいる。出生時から日本の社会で育てばとくに問題はないように思われるが、家庭内言語が日本語以外であるため日本語の習得がうまくいかず、勉強に十分についていけずに学校生活に影響が出るケースがある。

 

また幼少期に来日し日本の学校に早くから転入した場合も、年齢によっては母国語と日本語のどちらも母語として確立できず複雑な思考ができない「ダブルリミテッド」の状態となる子もいる。しかし日本語の日常会話はできるために、学校側に日本語指導が必要な生徒と判断されずに適切な支援が受けられない場合もある。

 

年齢別の在留人数をみると、14歳では11,000人台だが、15歳では12,000人を超えている。多くの国が15歳や16歳で義務教育相当の学校教育を修了するため、それを区切りに来日する子どもたちがいるということである。

 

それだけではない。「在留外国人数」および「外国籍の児童・生徒数」に含まれない子どもたちもいる。例えば両親のどちらかが日本人であったために本人は日本国籍を持っているが様々な事情で他の国で育っていた場合、日本人として入国すると「在留外国人数」には含まれない。しかし実際の状況は外国籍の子どもたちと同じである。

 

また、一定期間を海外で暮らして帰国した日本国籍の子どもたちは「帰国生」とされる。文部科学省「学校基本調査」によると、2012年度は小・中・高で10,476人の帰国生がいる。帰国生の中には、うまく日本の学校生活に適応できなかったり、複雑な家庭事情のせいで落ち着いた環境を得られなかったために一貫した学習を受けられなかったりという状況で問題を抱えてしまう子どもたちもいる。

 

このように子どもたちはさまざまな状況でそれぞれの困難を抱えている。そのため「外国籍」「外国人」ではなく、彼ら・彼女らを「外国にルーツを持つ子どもたち」として支援をしているのが「多文化共生センター東京」である。

 

 

多文化共生センター東京の活動

 

多文化共生センター東京は、2001年から外国にルーツを持つ子どもたちの教育支援を行っている認定NPO法人である。外国にルーツを持つ子どもたちの相談活動及び情報提供、学びの場や居場所の提供を行っている。とくに日本の義務教育相当年齢にあたる15歳を超えて来日した「学齢超過」の子どもたちを支援している。

 

外国にルーツのある子どもたちは、来日した時に学齢であれば小中学校へ編入することができる。また、15歳以上で9年の教育を修了していない場合は地域によっては夜間中学に編入できる。しかし母国で9年の教育課程を終えた学齢超過の子どもたちは中学校には編入できず、日本語指導など公的支援も受けられない。勉強したくても場所はなく「自力で」高校進学を目指さなければならない厳しい状況に置かれている。

 

「たぶんかフリースクール」は、こうした学齢超過の子どもたちへ学びの場を提供するために2005年に立ち上げられた。これまでに300人以上の子どもたちが学び、高校に進学している。荒川区と新宿区にあるフリースクールでは、今年度も約60人の子どもたちが数か月後の高校入試にむけて勉強している。

 

 

多文化共生センター東京の現場から

 

日本では、外国にルーツの持つ子どもたちの学ぶ権利が十分に保障されているとは言い難い。そこで、ここでは多文化共生センターの現場からみえる現状について述べていく。

 

 

1.学びの場につなぐ情報提供や相談

 

来日した外国にルーツの持つ子どもたちと保護者が直面する第一の壁は、教育についての情報取得が困難なことである。

 

日本の教育制度や手続き、どこでどのように学ぶかの情報を得るために相談場所をいくつも探したのちに多文化共生センター東京へ来る相談者は多い。資料2のグラフからわかるように来所での相談件数は、2010年からは、毎年100件を超え、さらに増加傾向にある。今年度は、11月段階ですでに荒川校、新宿校を合わせ約120件となっている。電話等の相談件数も合わせるとその数はさらに多い。1日に2件、3件と来所の相談者が重なる日もある。保護者や子どもたちが学びの場への情報をいかに必要としているかがわかる。

 

 

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資料2

 

 

相談内容は、多岐に渡っているが、小中学校編入に関する相談、日本語や学習指導の場を求めての相談が多い。とくに学齢を越えて高校進学をめざす子どもたちの学ぶ場所を求めての相談は切実である。来所した学齢超過の子どもたちの多くは、「たぶんかフリースクール」で学び、高校へと繋がっている。

 

他に子どもの来日前での相談や経済的事情、在留資格等についての相談も増えている。遠く海外からの電話相談もある。

 

また、卒業生から大学進学や就労についての相談も増えつつある。【次ページにつづく】

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.265 

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