外国にルーツを持つ子どもたちの学びの保障――多文化共生センター東京の現場から

●相談の具体的事例から

 

1)小中学校への編入 区役所の窓口での対応

 

公立中学校への編入希望に対し、日本語が十分でないと判断され「日本語ができるようになってから相談に来てください」と対応されたため、家庭で半年、あるいは1年を過ごしている子どもたちがいる。

 

Aさん兄弟は、来日して区の窓口に公立中学校への編入の相談に行ったが、日本語の問題を指摘され、公立中にすぐに編入できず、家庭で1年を過ごした。その間、下学年編入の相談にも行ったが認められず、日本語を学ぶ場を探しで多文化共生センターに来所した。「たぶんかフリースクール」で学習後、あらためて区の窓口へ同行し下学年への編入許可を得て、現在は中学校生活を送っている。

 

 

2) 保護者の情報取得

 

Bくんは、日本のレストランで働く父親にひきとられ13歳で来日した。日本で子どもを学校に通わせることができるとは思わず、Bくんは父を手伝ったりしながら、1年半を家で過ごしていた。しばらくたって日本人の知人が心配して「たぶんかフリースクール」に連れてきて勉強することになり、その後に中学校につながった。卒業後は再び「たぶんかフリースクール」で学び高校進学を希望しているが、母国と日本の学習内容が違うことと13歳で学習から離れたため、忘れてしまっていることも多く教科でほとんど点数がとれず苦労している。

 

 

3)高校入試での資格や手続き(学齢超過の子どもたち)

 

(1)提出書類に訳をつけること

高校入試の出願で母国での成績証明書の提出の際に訳をつけることを求められることがある。その場の口頭の説明ではなく、あくまでも公的機関での訳をつけるようにと言う高校もあった。保護者は、対応に苦慮し高額で訳をつけた書類を提出している場合もある。

 

 

(2)厳封した書類の提出を求められること

日本の中学校は、厳封した成績書類を提出しているが、来日した外国にルーツを持つ子どもたちは、厳封した成績書類は持って来ていない。そもそも厳封という文化がない国が多く成績証明書をインターネットから取得する国もある。また、例え厳封してあったとしても、書類に訳をつけたり、内容に問題がないかを確認したりするために開封が必要である。にもかかわらず、再度母国に書類を郵送し厳封して提出するように求める高校もある。

 

 

上記のいくつかの事例から外国にルーツを持つ子どもたちが、学びの場へつながることへの困難さと学びたくても学校教育から疎外された状況にあることがわかる。とくに公的機関の対応に対しては、「どのくらい日本語ができるようになったら学校に入ることができるのだろうか」「なぜ、国の公式なサインもあり、証明されている書類なのに認められないのだろう」などと多くの不安と疑問ももっている。学校教育への受け入れを拒否されている、あるいは、自国に対して差別があるのだろうかという気持ちを話す保護者もいる。子どもたちができる限り早く学びの場へつながるために、受け入れ側の意識や体制の改善が必要である。

 

 

2. 学齢超過の子どもたちの学びの場と公的支援

 

中学生の高校進学率は98%を超えており、大多数の生徒は、公教育のサービスを受け、高校進学を果たしている。公教育の狭間に置かれている「たぶんかフリースクール」に在籍する、外国にルーツを持つ学齢超過の子どもたちは、公的支援が受けられない状況にある。

 

 

学齢超過の子どもたちの状況

 

母国で9年の教育を修了している学齢超過の子ども達は公的データにカウントされていないため、実態が把握されず公的支援を受けられない状況にある。そのため、学びの場や進学のための情報取得が困難である。行政の窓口では、学齢であれば、小中学校への編入ということで教育委員会が対応するが、この子どもたちは、多文化推進課などの窓口で相談することになったり、外国人相談窓口、教育相談センターなどを転々としたりしている場合もある。

 

やっと「たぶんかフリースクール」のような民間の学びの場につながっても、教材費、交通費(通勤定期使用)などの軽減はされず、公立学校に在籍している生徒たちが当たり前に受けているサービスを受けることができない。そのため保護者の経済的負担は大きい。就学援助「受験生援助チャレンジ支援貸付事業」の利用ができない場合もある。

 

「虹の架け橋事業(定住外国人の子どもの就学支援事業)」によって、学齢超過の子どもたちも2012年度より積算対象となり一部公的支援が受けられるようになったことは、大きな励ましであった。(資料3参照

 

しかし、唯一の公的支援である「虹の架け橋事業(定住外国人の子どもの就学支援事業)」は、2015年2月を持って終了する。

 

たいへん厳しい教育環境に置かれている学齢超過の子どもたちであるが、唯一の公的支援である「虹の架け橋事業(定住外国人の子どもの就学支援事業)」終了にともなう後継事業として文部科学省は、平成27年度概算要求で新規に「定住外国人の子どもの就学促進事業」として1.2億円を要求中である。しかし、予算としては、大幅な減額となり、子どもたちの学びの場や進路が閉ざされることのないようさまざまな形での行政の支援が必要である。

 

 

終わりに

 

外国からの観光客数は、すでに1000万人を越えており、また、2020年のオリンピックを見据えて、さまざまに国際化計画が進行している。

 

しかし、外国にルーツを持つ子どもたちへの学びの場の保障については多くの課題が山積している。長期に渡り学校教育につながらない子どもたちがいること、その理由の一つとして日本語習得の問題が、受け入れ側の行政の窓口から指摘されている状況は、子どもの学ぶ権利の視点からも国際化とは言い難い。

 

また、学齢超過の子どもたちについて言えば、虹の架け橋事業の後継事業として概算要求が提出され、公的支援継続の可能性が出てきたことは前進である。しかし、予算規模の減少などを考えると課題は大きい。

 

多様な文化的背景を持つ子どもたちの多くは、将来、多様性のある地域社会の担い手となる豊かな可能性をもっている。共に暮らす住民として、外国にルーツを持つ子どもたちにとって切実な問題である学びの場が保障され、充実していくよう求めたい。

 

サムネイル「Heiwa elementary school 平和小学校 _22」ajari

http://urx.nu/hu7j

 

知のネットワーク – S Y N O D O S –

 

 

 

1 2
シノドス国際社会動向研究所

vol.279 

・川口俊明「全国学力テストの失敗は日本社会の縮図である――専門性軽視が生み出した学力調査の問題点」
・神代健彦「道徳、この教育し難きもの」
・大賀祐樹「懐疑的で楽観的な哲学――プラグマティズム」
・平井和也「世界の知性は新型コロナウイルスをどう見ているのか」
・川名晋史「誰が、なぜ、どこに基地を隠したか」
・石川義正「「空洞」の消滅──現代日本「動物」文学案内(4)」