運動部活動は日本独特の文化である――諸外国との比較から

運動部活動の日米英比較

 

最後に、日米英の運動部活動を比較してみよう。アメリカとイギリスにも運動部活動はある。「extracurricular sports activity」「school athletics」「interscholastic sports」「varsity sports」と呼ばれる活動がそれであり、授業ではなく課外活動として、放課後や休日に学校でスポーツが行われ、それを元にして学校間対抗の試合や大会も行われている。

 

では、日米英の運動部活動には、どんな違いがあるのか。表3は、日米英における中学・高校運動部活動のあり方を「設置学校の割合」「各学校の部数」「生徒の加入率」「活動状況」「全国大会」「指導者」「指導目的」の観点から整理したものである。

 

順に見ていくと、三カ国ともほぼすべての学校に運動部活動が設置されている。日本とイギリスでは、多数の部を持つ学校が一般的である。対してアメリカでは、アメリカンフットボールやバスケットボールなどの代表的な少数の部だけを持つ学校が珍しくない。また入部に際してトライアウトを設けて、競技能力により入部希望者を選抜する場合もある。

 

生徒の加入率は、日本が約50%〜70%で高く、イギリスが約50%で続く。アメリカは、ほとんど参加しない名目的な部員も含めた加入率は50%に達するが、それらを除いた実質的な割合は30〜40%であり、やや低い。

 

活動状況は、日本とアメリカは活発で高度に組織化されている。ただし、アメリカはシーズン制を敷いており年間を通して活動しているわけではない。対してイギリスは、参加生徒の多くは週1〜2日気晴らし程度に活動するに過ぎず、活発とはいえない。

 

全国大会は、日本とイギリスで有るが、国土の広いアメリカでは無く、州レベルの大会で留まっている。ただし、アメリカの高校のアメリカンフットボールやバスケットボールの州大会は、多くの観客を集めるビッグ・イベントである。

 

指導者は、関心や経験の有る教師が担う点は、三カ国とも共通している。違いは、アメリカで教師とは別に雇われる専門のコーチも担当する点、日本で関心や経験の無い教師も担当する点である。そうした指導者の違いに関連し、指導目的にも違いが見られる。アメリカとイギリスの指導者は競技力向上を挙げるのに対して、日本では第一に人間形成を挙げる。

 

これらを踏まえて、日米英の運動部活動の総括的特徴を対比的に述べると、日本は「一般生徒の教育活動」、アメリカは「少数エリートの競技活動」、イギリスは「一般生徒のレクリエーション」として、まとめることができるだろう。

 

 

表3:日米英における中学・高校運動部活動の諸特徴

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 (注)文部省(1968)、Bennett et al.(1983)、Weiss and Gould eds.(1986)、Flath(1987)、De Knop et al. eds.(1996)などの比較研究、および、運動部活動の実態に関する調査研究協力者会議(2002)、National Center for Education Statistics(2005)、Sport England(2001)などの各国の実態調査報告書等を元に、筆者作成。

 

 

おわりに

 

以上から、多くの国で、青少年スポーツの中心は学校の運動部活動ではなかった。また、学校に運動部活動がある場合でも、規模が小さかったり、活発ではなかったりした。

 

そして、アメリカとイギリスの運動部活動は、教育活動というよりも、競技活動やレクリエーションとして行われていた。こうしてみると、日本では馴染み深い運動部活動が、国際的に見れば、実は日本独特の文化であることがわかる。

 

つまり、日本以外では、スポーツは学校教育と別に行われるのが一般的である。しかし、日本では、運動部活動として、スポーツが学校教育に強く密接に結び付けられているのである。

 

さて、こうした日本独特の文化である運動部活動は、なぜ、どのように成立してきたのか。なぜ日本ではスポーツは学校教育に結び付けられるのか。もし、本稿に触発されてそうした疑問を感じた読者がいたら、拙著『運動部活動の戦後と現在−なぜスポーツは学校教育に結び付けられるのか』(青弓社、2014)を、ぜひお読みいただきたい。

 

【文献】

運動部活動の実態に関する調査研究協力者会議(2002)『運動部活動の実態に関する調査研究報告書』。

文部省(1968)『外国における体育・スポーツの現状』。

Bennett, B. L., Howell, M. L. and Simri, U.(1983)Comparative physical education and sport, second edition, Lea & Febiger.

De Knop, P., Engstrom, L. M., Skirstad, B. and Weiss, M. R. eds.(1996)Worldwide trends in youth sport, Human kinetics publisher.

Flath, A. W.(1987)”Comparative physical education and sport”, 『体育学研究』31(4), pp.257-262.

Haag, H., Kayser, D. and Benett, B. L. eds.(1987)Comparative physical education and sport (volume 4), Human kinetics publisher.

National Center for Education Statistics(2005)Youth indicators 2005.

Saunders, J. E.(1987)”Comparative research in regard to physical activity within schools”, in Haag, H. et al., eds., Comparative physical education and sport (volume 4), Human kinetics publisher, pp.107-126.

Sport England(2001)Young people and sport in England 1999.

Wagner, E. A. ed.(1989)Sport in Asia and Africa, Greenwood press.

Weiss, M. R. and Gould, D. eds.(1986)The 1984 Olympic scientific congress proceedings (volume 10) Sport for children and youths, Human kinetics publisher.

 

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知のネットワーク – S Y N O D O S –

 

運動部活動の戦後と現在: なぜスポーツは学校教育に結び付けられるのか

運動部活動の戦後と現在: なぜスポーツは学校教育に結び付けられるのか書籍

作者中澤 篤史

発行青弓社

発売日2014年3月26日

カテゴリー単行本

ページ数358

ISBN4787233742

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