「中退」を切り口に大学教育改革をおこす

「若者たちが未来に希望を持てる社会」を実現するために、高等教育イノベーションとクリエイティブ産業振興に取り組んでいるNPO法人NEWVERY代表の山本繁さん(33)。若者をフリーターやニートといった社会的弱者に転落させないために、今何が必要なのか。全国の大学や地域においてさまざまな若者支援事業を試みる山本さんに、その活動内容についてお話を伺った。(聞き手・構成/宮崎直子)

 

 

若者たちを社会的弱者へ転落させないために

 

―― 今、なぜ若者支援が必要なのでしょうか。

 

総務省が昨年末に発表した労働力調査によると、現在若年層の完全失業率は約9%、日本全体では5%程度になります。2020年には日本の失業率は全体で9%、若年層では20%近くになるだろうと予測されています。今よりも就職率が悪化しているという将来を見据えると、取り組むべきことはたくさんあるのです。

 

若者は大きく5つに分類できます。「リーダー層」「(目標のある)フリーター」「(仕方なくなった)フリーター」「ニート・ひきこもり」「その他大勢」。この中の「(仕方なくなった)フリーター」「ニート・ひきこもり」に対して、そうなるのを未然に防ぐために取り組んでいるのが「日本中退予防研究所」です。彼らの約3割は高校・大学・短大・専門学校の「中退経験者」。つまり、中退を未然に防ぐことでニートにしないようにしようというのが目的です。

 

いかに若い人たちが社会的弱者に転落するのを未然に防ぐか。そういう問題意識を持ってずっとやってきました。昨今の経済不況と就職難の中では、以前は放っておいても自立できた「その他大勢」の若者たちも、かなりグレーゾーンに呑み込まれてきています。その人たちに対しても対策が必要だろうということで、昨年の11月から豊島区との共同事業で「おとな大学」を実施しています。「(目標のある)フリーター」に対しては「トキワ荘プロジェクト」で漫画家育成支援を、「リーダー層」に対してはインターンシップを受け入れるなど、包括的に活動を展開しています。

 

 

若者が大人になっていく場所

 

―― 「おとな大学」ではどういう取り組みが行われているのでしょうか。

 

人が生きていく上でもっとも大切なことは「働くこと」と「愛すること」です。かつて精神科医のフロイトは、「大人になるとは?」という問いに対して、この2つのことをあげました。大人とは、働いて自分の生計を立てることができる人であり、他人と愛情や友情関係を築くことができる人であると解釈した。つまり、人は経済的に自立し社会の中で自分の役割を見つけ、それに参画しなければいけないし、一方でどんなに経済的、社会的に成功していても、他人と愛情や友情関係を築けなければ、孤独のままに死ぬということです。

 

この非常に大きなテーマを「おとな大学」では追求しています。20~30代前半の大学生や社会人を対象に、「起業」や「コミュニケーション」をテーマにしたゼミ、学生限定の「異学種交流会」などを開いて、学びや経験を共有し若者が交流できる場を提供しています。ここでわたしが参加者に一番伝えたいのは「選択肢は多様にある」ということです。大手の企業に入ることだけがいいわけではない。中小企業やNPOで働くこともできれば、小さく起業するという生き方もある。若者が将来のキャリアプランニングをしていく上で必要な情報を「おとな大学」で提供しています。

 

NEWVERYは2002年にボランティア団体としてスタートし、2008年から豊島区に事務所をおいています。NPOとして地域に何か貢献したいという思いが強くありました。そうした中、豊島区から若者支援を生涯学習の一環でやりたいとの提案があり、この10年間で積んできたノウハウを生かして事業を進めています。

 

 

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「おとな大学」自分で仕事を創るゼミの様子

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.233 特集:公正な社会を切り開く

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