TPPを考える

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対案なき「TPP反対論」を超えて

 

以上、議論されているTPP反対論のうちのいくつかについて、筆者の考えをまとめてみました。TPP反対論の背後にあると思えてしまうのは、「米国陰謀論」です。つまり米国がTPPを通じてわが国に不利益な協定を締結させようとするのではないかというものです。もちろん米国にとってみれば、TPPを通じてFTAAPにつなげていこうという意思があるのならば、APECの先進国のひとつであるわが国がTPPにコミットするのは歓迎すべき状況でしょう。しかしTPPにわが国が参加することは、逆に米国にとっては日本からの輸出が進むという状況をも生み出すことに留意すべきです。そしてTPPはわが国と米国の二国間で結ぶ協定ではなく、多国間協定であるため、米国の意図がすべての分野において忠実に反映されるわけではありません。

 

そしてTPPに本格参加するのではなく、TPP交渉に参加する段階で大きな議論が巻き起こっている状況を目の当たりにして感じるのは、TPP交渉反対を唱える方々の議論には対案がないと感じられることです。FTAAPには賛成するが、TPPには反対するのであれば、対案としてASEAN+3もしくはASEAN+6を進めるという主張が必要ですし、仮にそうであれば、これらの協定を交渉段階に進めるためにわが国が行うべき具体的提案を行うことが必要でしょう。ASEAN+3もしくはASEAN+6ではない枠組みを用いる場合についても同様です。FTAAPに反対の立場、ひいてはFTA/EPAそのものに反対である場合についても同様です。

 

民主党政権の経済政策、対外政策のふがいなさから、TPP交渉に参加することに不安を覚えるという議論も一定の正当性を持つのかもしれません。たしかに東日本大震災後の政府対応、デフレ・円高対策、税と社会保障、普天間問題・・これらの問題への対応策には不満が大きいのは事実です。しかしながらこの点を考える場合には、いま何もしないという選択肢から得られるメリットとデメリットとを比較勘案すべきではないでしょうか。

 

先にも述べましたが、貿易自由化は生産性を高める効果を持ちます。これは成長力を高めていくために重要な政策です。国内需要のみならず今後発展が見込まれるアジア諸国から得られる果実を輸出および輸入の両面を基点にして享受していくこと、その際に企業が適切な競争条件で活動が可能となるようにルールづくりを行うことにわが国もコミットしていくことは、中長期的な日本経済の将来を考えるにあたり必要ではないかと考えます。

 

貿易自由化の議論については、悪影響を被る産業には激変緩和措置が必要ですし、これまで関税というかたちで消費者に負担が向けられていたものを、消費者余剰の拡大というかたちで、消費者にメリットが及ぶという側面も重要です。声の大きい既得権益者の議論ばかりが喧伝され、消費者として皆がメリットを受けるという視点からの賛成論・積極論が影を潜めるかにみえる現状を超えることが、わが国にとって求められているのではないでしょうか。

 

 

推薦図書

 

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本書は福澤諭吉の『文明論之概略』と『学問のすすめ』から論理的思考の技術を学ぼうという書籍である。TPPに限らず経済政策論争を行う場合には、提案に対して万が一起こるかもしれない極端なケースを取り上げて、あたかもそれが普通に生じるかのごとく主張すること、前例のないケースの提案に関して、実施しないうちから「効果がない」とする決めつけを排除していくことが必要だろう。議論の本位を定め、一層高尚な視点から軽重を判断し、惑溺・臆断・欠点主義・限界主義・極端主義を戒め、多事争論を尊重すること。本書の指摘にははたと気づかされる点がまことに多いのである。

 

 

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.264 

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・穂鷹知美「マスメディアの将来――マスメディアを擁護するヨーロッパの三つの動きから考える」
・大賀祐樹「リチャード・ローティ」
・西山隆行「学び直しの5冊〈アメリカ〉」
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