ネット選挙運動が解禁されることで何が変わるのか ―― ネット選挙法Q&A

Q6 ネット選挙運動が解禁されることによるデメリット、危惧される点はありますか?

 

今回のネット選挙解禁は、「何でもネットでやっていい」ということにはなりません。たとえば与党案では、有権者が選挙運動用のメールを送信できないことになっています。このまま与党案の通り改正された場合、有権者がメールで「この候補者に投票して!」と気軽に書いて送ってしまうと、公職選挙法違反になってしまうことに注意が必要です。

 

候補者の方も注意が必要です。今回の解禁案では、政見放送などについての規定は変わるわけではありません。したがって、政見放送をどんどんyoutubeなどの動画サービスに流してしまうと、公職選挙法違反に問われる可能性があります。

 

よくデメリットというと、誹謗中傷やなりすましがあげられますが、現在の状況よりはだいぶ「マシ」になるでしょう。というのは、現在の公職選挙法は、これらに対し明確な罰則規定を置いておらず、事実上の無法地帯でした。掲示板などで誹謗中傷が書かれても、これまでより迅速に削除がなされる可能性が高くなりました。

 

もっとも問題になるのは、候補者や政党の名を騙って、ウィルスメールなどを送りつける悪い人間が出てくる可能性です。また、どれほど候補者や政党がメールを出すかわかりませんが、ひょっとすると毎日メールが届いて辟易するという事態も起こるかもしれません。

 

 

Q7 これらのデメリットの解決策はあるのでしょうか?

 

まず、今回の解禁は全面解禁ではなく制約があるということについて、有権者も候補者もきちんと知ることが必要です。メールについては、メールアドレスを知らせた覚えがないのに候補者からメールが来たら、開かず捨てるべきでしょう。メールは拒否する人に送ってはいけないことになっています。身に覚えがない場合、あるいは量が多すぎて辟易したら、候補者に連絡して送らない旨を伝える必要があります。

 

 

Q8 外国では、ネット選挙運動に対してどう捉えられているのですか?

 

主要先進国で、インターネットを用いた選挙運動を制限している先進国はほとんどありません。基本的には規制がなく自由に行うことができます。とくにアメリカでは、選挙になるとウェブを積極的に利用しています。昨年2012年の大統領選挙においても、オバマ・ロムニー両陣営が、ソーシャルメディアを積極的に使用して日本でもニュースとなりました。

 

特徴的なのは、インターネット献金への動線が多く、小口の政治献金を多く集めたことです。民間でも、Twitter社が日々ツイートを解析し、両候補者への評価を数値化して示す、「Twitter Political Index」という企画を行なうなど、インターネットを通じて、さまざまな角度から選挙が分析され、有権者・候補者の判断に役立てられています。

 

おとなりの韓国では、2012年の大統領選挙から候補者だけでなく、一般の人もインターネット・SNSをつかっての選挙運動が可能となりました。インターネット広告については候補者のみが認められています。また、誹謗中傷の違法行為を監視するための機関を設置しています。

 

 

Q9 候補者はどのようにネットを活用していけばよいのでしょうか?

 

基本的には、普段有権者と接するのと変わらない態度が求められると思います。画面の向こうに一人の有権者がいるという想像力をきちんと持つことが重要です。つまり一人の有権者と直に向き合うように、自分の政策や人柄について伝える努力をすべきです。一人の有権者と会話するとき、一方的に自分の話ばかりするでしょうか? きちんと有権者の話や要望も聞くはずです。同じように、ソーシャルメディアを通じて有権者と「会話」を心がけるべきです。

 

そして候補者と有権者がどのようにコミュニケーションをしているかは、すべての有権者にみられています。「コミュニケーションをしない」ということもまた、有権者の判断材料になることを肝に銘じることが必要でしょう。情報発信力とコミュニケーションに長けた候補者が、有権者との距離を縮め、共感の連鎖を呼び、支持を集めることになると思います。

 

また、情報を積極的に公開することで、たまたま近くにいる有権者の目に止まり、リアルのつながりを生むかもしれません。ですので、ネットでの日々の選挙運動の予定、候補者の移動スケジュール、街頭演説の予定などを載せることが有効でしょう。予定だけでなく、街頭演説の動画配信など、ネットを通じて様々な表現、手法を通じて政策と人柄を訴えていくことが求められていくと思います、

 

そして、危機管理の意識が重要となるでしょう。ネットやメディアで自分がどのように言及されているのか、日ごろからチェックする必要があります。必要に応じて反論し、選挙管理委員会へ報告し、サービス・プロバイダーへの誹謗中傷に対する削除要請などをしていく必要があるでしょう。選挙期間は非常に短いですので、放っておくと根も葉もない誹謗中傷・噂が独り歩きして、気が付いたときには選挙終了後、という悲惨なことにならないように気をつけなければなりません。

 

 

Q10 選挙の際に、国民はどのようにネットを活用していけばよいのでしょうか?

 

特別に身構えず、普段通りのネットの関わり方を政治に対してもすればいいのではないかと思います。選挙期間になって、なんとなく政治に関心が出てきたならば、地元の立候補者を調べたり、ソーシャルメディアでフォローしてみてもいいでしょう。そして、自分が気になる問題について、ソーシャルメディアを通じて、政治家に気軽に質問や意見を言ってみたらよいのではないでしょうか。

 

必ず返信が来るわけではないですが、「返事が来ない」ということも含めて、有益な判断材料になると思います。そして自分が良いと思う候補者の政策や発言があるならば、応援してみてもいいと思います。とかくネガティブな批判ばかりが横溢するのが政治に対する言説ですが、あなたのちょっとした応援が、支持する政策・候補者への支援の輪を広げるきっかけとなるかもしれません。

 

そしてできるならば、ひとつの情報源を鵜呑みにせず、さまざまな情報源から情報を取るようにしてください。ネット選挙解禁で、これからは有権者の情報リテラシーも本格的に問われる時代となりそうです。

 

 

 

 

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