被ばくおよび被ばく検査に関するQ&A

Q4.水の安全性はどうなっていますか?

 

泥やゴミを沈殿させ、そして消毒することで水道水は作られます。濁った水を振動させずにそっと置いておけば泥は下に溜まります。それを効率よく行うため、泥やゴミをお互いにくっつけ、大きな固まりにしてから沈殿させています。

 

この泥やゴミを、集めて大きな固まりにしてくれるのがPAC(パック)と言われる薬剤です。PACが汚れた水に加えられることで、大きなゴミの固まり(フロックと言います)が形成され、短時間で水に浮いている多くの泥やゴミを沈殿させ、除去することができます。これは今回の原発事故以前から使われている薬剤(とくに放射性物質を除去するために使われる薬剤ではない)です。

 

相馬地域の上水道から事故直後をのぞき、ゲルマニウム検出器ですらセシウムが検出されたことはありません(*3)。この上水道は現在、内部被ばくのリスクを考える必要はありません。セシウムなどの放射性物質が検出されるのは上水道ではなく、泥水です。

 

原因は泥であり、セシウムが強く接着している土です。ですので、山間部の家庭で大雨がふった後、近くの川から引っ張っている水道が濁り、その濁った泥水を検査すると数Bq/kgぐらいの検出をすることはあります。繰り返しますが、泥水の話であり、上水道の話ではありません。

 

「高線量地域のダムから水を引いているにもかかわらず、上水道から放射性物質が検出されないという結果はおかしい」という指摘を受けることがありますが、理由は簡単です。上で述べた、沈殿させた泥やゴミからは放射性物質は検出されます。沈殿した泥を集めて、干して乾燥させて計測すれば、 数千~万Bq/kg単位でセシウムを検出します。

 

逆説的ですが、この泥の汚染が高いということは、その分しっかり上水道から汚染を分離しているということの傍証でもあります。これらは、粘土とセシウムが強く結合しているから実現していることです。

 

農産物と同様です。しっかり耕し、粘土質にセシウムが十分吸着している状況で、たい肥にカリウムが多い状態を維持してすれば、その土地で作成した農産物の汚染を防ぐことができることにも通じるように思います。ストロンチウムも震災前の値と変わらないという結果でした(*4)。

 

(*3)http://www.suido-soma.jp/monitaringu/MANO-0614.pdf

(*4)http://wwwcms.pref.fukushima.jp/download/1/suidosui.pu.st.2013-0328.pdf

 

Q5.外部被ばくの検査には、ガラスバッジなどの積算線量計が使われますが、これからどのようなことがわかっているでしょうか?

 

相馬市の検査結果を用いて,傾向をお話しします(*5)。

 

市の配布するガラスバッジで2012年の7月から9月の間、4135人の中学生以下の小児、妊婦さんが検査を受けました。3カ月分の値を単純に4倍し、年間線量を推定し、1mSv/year以上だったのは125人(3.0%)でした。多くの方で、去年より値が下がり傾向であることが確認されました。

 

2648人が昨年度も検査をしていますが、95.7%にあたる2533人の値が低下傾向、平均0.3mSv/yearの減少でした。115名は去年より値が高くなりましたが、特定の地域に偏った結果ではありませんでした。これは、中通り、浜通りなど自治体によって状況は異なるようですので、今後の継続的な検査が必要です。空間の線量の値が比較的高い地域では、値が高くなる傾向があり、最高値は3.6mSv/yearでした。

 

また、同じ地域に住んでいる方々の中で、値が広範囲に分散することがわかっています。比較的線量の高い地域に住んでいる方の中に、かなり値が低い方がいること、逆に線量の低い地域に住んでいるにも関わらず、値が高めである方がいます。着用の問題かしれませんが、どこから気をつければ良いのかをあきらかにする必要があります。いまのところ、外部被ばくに影響を与えるトップ2つは、「就寝場所の線量」と「学校の校舎内の線量」だと思っています。子供の24時間の生活のうち、8時間は睡眠、8時間は学校だからです。

 

相馬での外部被ばく線量は上記の通り、そして内部被ばく検査の結果(*6)では、小児で99%が検出限界以下に抑えられています。年齢によって計算値は変わりますが、大多数の小児で外部内部被ばくを足し合わせた年間の追加被ばく線量が、あったとしてもいわゆる1mSv以下に抑えられてきています。これは多くの福島県内の検査結果でも同様です。

 

(*5)http://www.city.soma.fukushima.jp/housyasen/kenkou_taisaku/glass/h24/index.html

(*6)http://www.city.soma.fukushima.jp/housyasen/kenkou_taisaku/WBC/index.html

 

Q6.上述の、同じところに住んでいても、人によって外部被ばくが異なってくるのはなぜでしょうか?

 

ある地域の空間線量(1時間当たり)を単純に24倍し(24時間分)さらに、30倍(30日分)した値と、ガラスバッジを1カ月間もってもらい実測した値を比べたとき、多くの場合、実測値の方が低くなることが言われています。人は24時間ずっと野外に居るわけではなく、遮蔽された家の中や建物の中で生活している時間があるからです。

 

たとえば、農家のご家族さん全員にガラスバッジを持っていただくと、子供に比べて大人で値が高くなる傾向があります(もちろんご家族によります)。寝ている場所は同じ家の同じ部屋、その時間帯の被ばく量は同じであるにも関わらず、このような結果になるのは、昼間の被ばく量が違うからです。大人は昼間に農作業をするため、外で働いている時間が長いのに対し、子供は遮蔽の効いた建物であることの多い校舎で生活しているからです。

 

平均的な子供の生活を考えると、24時間のうち、8時間は睡眠、8時間は学校にいます。トータルの被ばく量を下げるためには、長時間生活する場所の空間線量を低く維持することが大事です。ホットスポットを避けることよりも優先順位が高くなります。言い換えると、高い線量の場所を一瞬~数十分程度通過することを避けるよりも、長時間生活する場所の空間線量が低いことが大事です。

 

xxμSv/hを指すホットスポットを見つけてどうこうするより、長時間生活している場所の線量を0.1でも0.2でも下げる努力をする方が、外部被ばくを下げるために効果的です。もちろん、そのホットスポットの存在が、長時間生活する場所の線量に影響する場合はその限りではありません。除染に関しても、理想的には長時間生活する場所の線量を下げるために、どの場所から行うかについて、議論がなされるべきだと考えています。

 

学校に登校して、授業中に鉄筋コンクリートの中で生活していることは、子供のトータルの外部被ばく量を下げる上で重要な役割を果たしています。子供達が鉄筋コンクリートなどでできた建物の中に集まることによって、集団で浴びる線量を野外の空間線量から大きく下げています。よって、早期に学校が再開され、除染なども行われてきたことは、事故直後の時期の子供の集団としての外部被ばくを下げるために大きな役割を果たした可能性があると思います。

 

先日時間ごとの外部被ばく線量を記憶できる積算線量計を、何人かのスタッフにつけてもらうと、人によっては時間ごとの外部被ばく線量が、昼:0.1μSv/h → 夜:0.2μSv/h → 昼:0.1μSv/h → 夜:0.2μSv/hというように、規則正しく高くなったり、低くなったりする方が多いことがわかりました。寝ている場所の線量がだいたい0.2、昼間の仕事場の線量が0.1ということです。この方の場合は、昼の仕事場が屋内で遮蔽のより強い場所であり、さらに線量を下げようとするならば、寝るところの線量がより低くなるように場所を探すしかありません。

 

内部被ばくの原因の多くが、出荷制限のかかったような種類の食品を未検査で、継続的に食べることであるように、外部被ばくの原因にも優先順位があります。長時間生活する場所、つまり多くの場合、学校と寝る場所の線量を低くすることの優先順位が高いと思います。

 

ただ、こんな話をしていますが、さまざまな自治体で公表されているガラスバッジの結果からわかるように、現在の年間の追加外部被ばく線量は多くの子供で1mSvを切っています。事実として現在、日常生活での外部被ばくはかなり低く抑えられています。そうした中、私は優先順位については上で述べたようなことを考えています。

 

 

 

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