被ばくおよび被ばく検査に関するQ&A

Q7.内部被ばくにはどのような検査方法があるのですか?小さい子供を計測する際の問題点も含めて教えてください。

 

主に体全身に含まれている放射性物質の量を計測するホールボディーカウンター検査と、尿検査が存在します。小さい子供達の検査については必要性が言われますが、それぞれの検査にはデメリットが存在します。

 

そもそもホールボディーカウンターは、原発で従事できるような大人を対象にしており、小さい子供用には作られていません。キャンベラ社製ファストスキャンでは、130cmぐらいを下回ると途端にカリウムの定量性が怪しくなります。体の大きい小学生や中学生ぐらいならまったく問題ありませんが、乳児などはとてもじゃないですが計測できません。小さい子供に関しては、かなり大雑把にしか検出できないというのが現状です。

 

尿検査にも問題点が2つあります。

 

1つ目は、朝の尿と夜の尿で濃さが違うということです。当然ですが、尿の濃さが倍になれば、たとえばセシウムは倍の濃度で検出されます。そのときの尿の濃さに結果が左右されすぎてしまうのです。体内の放射能量と、尿中の放射能濃度が明確な比例関係に無い。計測の意味がまったくない訳では決してありませんが、大雑把なスクリーニングの意味合いが強くなります。

 

2つ目は尿の量です。できれば細かく尿中のセシウム量を計測したい、と考える訳ですが、その場合ある程度の尿量(少なくとも数百cc)が必要になります。しかしながら、これは大きな矛盾を抱えてしまっています。

 

いま困っているのは、体の小さい小児をホールボディーカウンターで計測できないことです。その体の小さい小児から、より多くの尿をためなければならないのです。体が大きくて、尿が十分ためることができる方の場合、尿をためられるかどうかは問題になりません。そのままホールボディーカウンターで計測すれば良いだけになります。

 

しかし1歳では、20mlためるのも厳しく、実際に「20mlでもきつい、10mlしか採れないが、何とか計測してほしい」と頼まれたこともありますが、値は出すことはできるかもしれませんが、正確性に欠けます。それに加えて、そもそも小さい子供は、大人より代謝速度が早いため、体内の絶対量が大人に比べて少ない傾向があります。より少ない量を計測しなければならないのに、体が小さいため、計測自体が困難になってしまいます。

 

また、500mlのペットボトル一本分以上ぐらいの尿を貯め、ゲルマニウム半導体検出器を用いて一人当たり1時間とかそれ以上の時間をかけて検査を行えば、ホールボディーカウンターの性能を超えることができると考えられます。

 

ただし無尽蔵にゲルマニウム半導体検出器が存在し、時間も無限にあれば良いのですが、現実はそうではありません。ある特定の対象に絞れば、研究という形でゲルマニウム半導体検出器による尿検査を実現することは可能だと思いますが、多くの方々が大きな被ばくをしていないことを確かめるためのスクリーニングをすることはできません。

 

現状のホールボディーカウンターの性能は検査あたり、200-300Bq/bodyぐらいが検出限界です。どこまで計測するかは、食物でも常に問題になることですが、ホールボディーカウンター検査は、スクリーニング検査として十分な意味を持つと考えています。

 

小さい子供を測る方法として、いまあり得る方法は、4つです。

 

1つ目は、尿検査またはホールボディーカウンターで、ある程度大雑把ではあるが計測を続けるという方法です。尿検査は体内の放射能量と関連性が無く、計測が大雑把だからといってまったく意味が無いとは思いません。何も計らないよりはましです。ホールボディーカウンターに台座を入れて、小さい子供でもある程度の性能で検査が可能であることもわかってきました。

 

2つ目は、子供の代わりに母親を計測するという方法です。母親から内部被ばくが検出されない場合、同じような生活をしている子供は、母親よりもさらに代謝が早く、食品摂取量も少ないので、放射能が検出されるとしてもさらに少ないだろうと考える方法です。一般的にはこの考え方が用いられていますが、実際の子供を計測していないという難点があります。ただし、現状では一番現実的だと考えています。

 

3つ目は、母親と一緒にホールボディーカウンターに入ってもらう方法です。メーカーはこれを推奨しています。母親と子供を一緒に計測したものから、母親の値を引き算するというものです。当院でも何度も試しましたが、正直なところ2人一緒に計ったカリウム量と、母親のみのカリウム量が体重に見合った値として検出されるかは微妙です。とりえる一つの方法だとは思いますが、小児の放射能量が正確に計れている印象もありません。やはりこれでも大雑把になります。

 

4つ目は、小児用の特別製ホールボディーカウンターを作る方法です。Babyscanという器械の作成が進んでいます。一台目は、ひらた中央病院に導入される予定であり、いままでのホールボディーカウンターの検査に比べて、検出限界が6分の1程度にできると推定されています。2013年中には稼働が開始される予定です。

 

 

Q8.現在、どのような検査体制で被ばく検査をおこなっているのですか?

 

内部被ばく検査は、市町村主導の住民検診として行っているもの、個人、グループまたは私立病院が独自にホールボディーカウンターを購入し検査しているもの、福島県、JAEA、放医研主導によるものなどさまざま場所で行われています。現在までにおおよそ30万人程度の検査が行われています。

 

しかしながら、継続的な検査に関しては自治体によってその対応がまちまちであるのが現状です。南相馬市では、2012年8月から(1回目がどのような値であっても)2回目の検査ができるようになりました。そして2013年5月から、学校検診としての内部被ばく検査が始まっています。南相馬市内のすべての小中学生を対象に、定期的にホールボディーカウンターによるチェックを行うというものです。

 

移動式の器械は無いので、学校の学年単位で小中学校からバスで病院まで来てもらって午前中まとめて一斉に検査をしています。この5月から3カ月ほどで全地域の検査を行い、それを年に2回繰り返すという形です。

 

継続的にチェックを行うことができること、検査漏れの確率が下がること、平日に親御さんが仕事を休んで連れてくる必要がなくなること、いつ検査を受けたのかなどを常に考える手間を省けることなどの利点があります。

 

いつまで続くのか等の課題も残っています。他の自治体もきっと、ある程度検査が進めば継続的な検査に移行すると思いますが、まだ福島県全体としての方向性はできていないと思います。

 

 

 

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vol.2019.4.15 

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