被ばくおよび被ばく検査に関するQ&A

Q9.検査というのは、一回受ければ済むものなのでしょうか?

 

確かに、震災から2年以上が経過した現在、ホールボディーカウンターの検査を行っても、事故直後の被ばく量がどの程度かを計測することはできません。排泄されてしまっており、跡形が無いからです。

 

しかしながら、現状の生活での被ばく量がどの程度なのかを推定することはできます。実際に、南相馬市でも一回目の検査に比べて二回目の検査で放射性物質の値が高くなった方や、以前は検出しなかったのに、二回目ではある程度の値を検出した方がいらっしゃいます。ウクライナやベラルーシでも内部被ばくは事故から数年経過した後に最大値を迎えています。経済的、社会的な事情があったことも言われますが、現状の日本でも継続的な検査体制の構築が必要と考えています。

 

また、現状では、検査結果が書類通知されるだけの場所がほとんどです。相談窓口などは存在しますが、ある程度の値以上となった検診者には、医者が人間ドックで行うような普通の診療として関わる形にならないだろうかと思っています。理想的には、どこの医者にかかっても、ある程度検出された方も検査結果を持って行けば、今後どう生活すべきか、アドバイス定期検査の必要性などを相談できる形になって欲しいと思っています。

 

ベラルーシでは、継続的な検査が26年たったいまでも行われていました。年に1回、無料の健康診断という形で、内部被ばくの検査、採血、甲状腺の超音波、心電図など必要な健診と、無駄な内部被ばくを合理的なレベル以下に抑えるための検査が行われていました。

 

採血の種類は特殊なものは無く、特別な症状が無ければ血算のみ。生化学検査は行われていませんでした。継続的に検査を行っていく必要性があることを、スタッフ全員が理解しており、当然のように淡々と検査が続いていることに感銘を受けました。ただ、このような軌道に乗るまでには10年近くの時間がかかったと言っていました。

 

日本もいまのままでは継続的に検査するのかどうかもはっきりしていません。内部被ばく測定やガラスバッジに関して言えば、そもそも誰がやるのかも、いまいちはっきりしません。この部分は、ある程度時間が経過したいまだからこそ、うやむやにせず、ちゃんと議論されるべき問題だと思います。

 

 

Q10.被ばく検査における今後の課題とはなんでしょうか?

 

上述の継続的な検査体制の維持、そして定期的な検査を受けていただけるよう情報提供を行い、関心を持ち続けてもらうことだと思います。検査を始めた2011年7月当初は、次の年の春まで検査待ちになるような状況でしたが、この年度末には1日に10人程度しかいらっしゃらない日も珍しくなくなりました。

 

検査数だけで言うと、2012年度の下半期は、上半期の1/3~半分程度でした。もう低いことはわかっているので(これ以上やらなくて)よいでしょうという意見や、足らないリソースやマンパワーをもう少し他のものに回すべきであるという話も出てきています。全体として検査に対する関心が薄れてきています。医療資源が枯渇し、実際に働くスタッフの疲弊も大きな課題である現在、そうした話も一理あります。しかし、継続的な検査は必要だと思っています。繰り返しになりますが、今後何かしらどこかで生物学的に濃縮してくる可能性はあると思いますし、内部被ばく自体、生活習慣や経済社会的影響も大きく受けます。

 

また、被ばくの影響を考える際、外部被ばくと内部被ばくの両方あわせて評価する必要がありますが、外部被ばくと内部被ばくを突合してトータルのリスクを評価しようとする試みは、本格的には行われていません。発表されているのはガラスバッジの結果、またはWBCの結果単独のみなのがほとんどです。

 

検査自体も相馬市や南相馬市は市の検診として行っていますが、私立病院に委託している自治体、そもそもやっていない自治体、県の主導、私立病院が独自にやっている場合とさまざまです。頻度や対象、継続検査の有無もバラバラです。よって、外部被ばくと内部被ばくの値、両方を各個人ごとに評価し、トータルの被ばく量を計算して地域の値を公表できるのは、ガラスバッジとWBC検査両方ともを市町村主導で行っている場合のみになってしまっています。

 

実施主体が異なることによる壁、個人情報保護の壁が立ちはだかっています。被ばくの話に限らず、医療の個人情報取り扱いや情報共有について、日本は驚くほど議論が成熟していません。内服薬情報、カルテ共有やクラウドによる電子カルテのバックアップなどもよく似た問題なのですが、まだまだ乗り越えて行くべきことがたくさんあります。放射線に関する情報だから共有しづらいのではなく、もともとITが急速に発達してきた現在、解決されないままになっている問題が明るみに出てきたという印象です。

 

 

 

 

シノドスのコンテンツ

 

●ファンクラブ「SYNODOS SOCIAL」

⇒ https://camp-fire.jp/projects/view/14015

 

●電子メールマガジン「αシノドス」

⇒ https://synodos.jp/a-synodos

 

●少人数制セミナー「シノドス・サークル」

⇒ https://synodos.jp/article/20937

 

 

 

 

1 2 3 4
シノドス国際社会動向研究所

vol.256 

・熊坂元大「「道徳教育」はこうすれば良くなる」
・穂鷹知美「終の住処としての外国――スイスの老人ホームにおける 「地中海クラブ」の試み」
・徳山豪「アルゴリズムが社会を動かす」
・鈴木崇弘「自民党シンクタンク史(1)――シンクタンク創設への思いとその戦い」