どうする、どうなる日本のマンション――『マンション総合調査』から見えてきた課題

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Q3.首都直下や南海トラフ地震に備えた「耐震化」は大丈夫?

 

1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認を受けた建物は、新耐震基準によるものです。それ以前のものは、「旧耐震」基準による建物となり、区別されています。

 

阪神・淡路大震災では、建物倒壊被害は「旧耐震」に集中しました。旧耐震基準のマンションについては、改めての耐震診断を実施し、その結果次第では耐震化を図ることが急務となっています。マンション総合調査では、マンションのうち新耐震基準が63.3%、旧耐震基準が16.7%という結果になりました。

 

ところが、この旧耐震基準のマンションのうち、耐震診断を実際に行っているマンション管理組合は、33.2%にとどまるという結果になりました。そもそも耐震性があるのかないのかもわからないマンションが7割弱あるということになります。また、旧耐震基準のうち、「耐震性がないと判断された」マンションは、32.6%もありました。これらは当然に耐震化を図る必要があるマンションです。しかしながら、実際に耐震改修を実施したマンションは、そのうちの33.3%にすぎませんでした(図3)。

 

 

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図3

 

 

マンション所有者からすれば、53.0%が耐震性について「不安」とし、「大規模な地震の場合は被害を受けると思うので不安だ」(18.4%)、「耐震性が確保されているのかわからないので不安だ」(13.4%)という声があります。

 

しかし、なぜ耐震診断と耐震改修は低迷しているのでしょうか。

 

耐震診断をそもそも行っていない理由としては、「不安はあるが耐震改修工事を行う予算がないため耐震診断を行っていない」が44.4%と最も多く、「管理組合として耐震診断を行うことをこれまで考えたことがなかった」という声すら24.0%と、多くありました。

 

このような実態を踏まえ、国の制度も動いていますのでひとつ紹介をします。

 

「建築物の耐震改修の促進に関する法律の一部を改正する法律」(改正耐震改修促進法)が成立し、2013年11月に施行となりました。耐震改修計画の認定基準が緩和され、容積率や建ぺい率の緩和措置も盛り込まれています。また、区分所有建築物については、耐震改修の必要性の認定を受けた建築物について、大規模な耐震改修を行おうとする場合の管理組合の決議要件を緩和(4分の3以上から過半数に緩和)するというものです。耐震化を行おうとする管理組合の意思決定を容易にするものとして制度の活用が期待されます。

 

 

Q4.老朽化するマンション、建替え? 売却?

 

マンションの老朽化もまた深刻な問題です。マンション老朽化問題について何らかの議論を行っているマンション管理組合は35.9%ありました。検討の結果、「建替え」(2.6%)、「修繕・改修」(62.0%)などの明確な道筋をつけた場合もあれば、「議論はしたが、具体的な検討をするに至っていない」(30.5%)など、明確な答えが出ないままになっている管理組合も多くあります。

 

 

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図4

 

 

国の制度としては、2014年の通常国会で「マンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律案」が提出されています(本稿執筆時)。法案は耐震性不足のマンションの建替え等の円滑化を図るべく、多数決(区分所有者等の5分の4以上)によりマンション及びその敷地を売却することを可能とする制度を創設するものです。

 

老朽化マンションについて、建替えという従来の方法の他に、一括売却という新たな選択肢を設けたものです。また、耐震性不足のマンションの建替えの際にも、容積率を緩和する制度を設けています。これにより、資金不足になっている老朽化マンションの更新や再開発が促進することが期待されています。

 

 

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