どうする、どうなる日本のマンション――『マンション総合調査』から見えてきた課題

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Q5.防災活動、災害対策、要援護者名簿はどうしているの?

 

大規模災害への対応状況としては、前回調査時と比較して、具体的な取り組みが増加しています。「定期的に防災訓練を実施している」(37.7%)、「防災用品を準備している」(26.9%)、「災害時の避難場所を周知している」(25.1%)、「自主防災組織を組織している」(19.0%)が上位となっています(図5)。2011年3月11日の東日本大震災を受けての防災意識の高まりが具体的な行動に結びついているという一定の評価ができると思います。

 

一方で「特になにもしていない」(29.2%)も高い割合です。防災や災害対策の先行事例を収集し、周知をすることで取り組みを促すなどの政策が必要になるでしょう。また、特に何もしていない中には、マンション居住者の高齢化などで防災活動の音頭をとる区分所有者がいないというケースもあります。マンション管理業者やマンション管理士を活用し、災害への備えを促進させることも検討しなければなりません。その場合の資金面での援助も不可欠になってくると思われます。

 

 

graph5

図5

 

 

注目したい項目の中に「高齢者等が入居する住戸を記した防災用名簿を作成している」(8.3%)という項目があります。これは、いわゆる「災害時要援護者」の支援のためのものです。すなわち、高齢者や障害者など、災害時に一人で避難や生活ができない者を事前に把握し、避難支援・安否確認・生活再建支援に漏れがないようにするために名簿を作成するものです。

 

平常時から災害時要援護者を把握し、コミュニケーションをとっておかなければ、いざ災害が発生した時に救助ができません。個人情報の管理と活用について、マンション管理組合においても正確な知識と、共有するためのノウハウを習得しておく必要があります。個人情報の取扱いに対する正確な理解が進めば、高齢者等の名簿作成と共有に対する住民理解も得やすくなります。

 

 

Q6.専門家の活用は有効なのか?

 

マンションの管理運営は、マンション管理組合が行います。その構成員は当然ながらマンションの所有者です。マンション所有者が「自分事」として管理運営に積極的に関与することが必要です。もっとも、所有者が必ずしも管理運営のノウハウを持っているわけでもなく、その時間もないという場合が多いと思います。そのようなときこそ、マンション管理業者の支援や、マンション管理士との連携が不可欠になると考えます。

 

専門家の活用状況は「建築士」(24.4%)、「弁護士」(18.7%)、「マンション管理士」(16.4%)の活用が多いという調査結果になっています。ところが、「活用したことがない」(45.4%)が一番多いという結果でもあります(図6)。専門家へのアクセスを容易にする政策などが求められると言えます。

 

 

図6

図6

 

 

マンション管理士はマンション管理運営のスペシャリストではありますが、単独ではすべての紛争や管理を成し遂げられない場合もあります。管理組合といては、マンション管理士・マンション管理業者との連携、弁護士など法的な専門家との連携、建築士、土地家屋調査士、技術士等の技術系の専門家との連携など、多士業を同時に活用することも視野に入れることで、より充実したマンション管理運営が実現すると考えられます。

 

たとえば首都圏では「災害復興まちづくり支援機構」が

 

 

◆「首都直下地震に備えたマンションなんでも相談デスク」

http://www.j-drso.jp/mansyon_sodan.html

 

 

を設置する等、多士業でのマンション管理支援の取り組みを実施しています。

 

マンションの運用は大部分が管理組合の自主性に任されてきました。素晴らしい取組を行い、資産価値を維持し続けているマンションもありますが、資金不足に陥ったり、コミュニティ形成が困難になっているマンションも少なくありません。生活面において高い利便性を発揮し、私たちを守る家となるマンションも、老朽化や耐震不足があれば、巨大災害時には、たちまち私たちの命を奪う凶器になってしまいます。

 

また、日頃からのマンション居住者の把握ができなければ、安否確認などもスムーズには行きません。マンション生活を快適なものとし、資産価値を維持し、そして巨大災害時に備える知恵を「マンション総合調査」から読み取り、専門家をうまく活用していただきたいと思います。

 

 

参考資料

・国土交通省住宅局市街地建築課マンション政策室「平成25年度マンション総合調査結果報告書」(平成26年4月)

※記事の図表は全て上記報告書から抜粋した。

http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/manseidata.htm

 

 

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岡本正(おかもと・ただし)

弁護士

弁護士。医療経営士。マンション管理士。防災士。防災介助士。中小企業庁認定経営革新等支援機関。中央大学大学院公共政策研究科客員教授。慶應義塾大学法科大学院・同法学部非常勤講師。1979年生。神奈川県鎌倉市出身。2001年慶應義塾大学卒業、司法試験合格。2003年弁護士登録。企業、個人、行政、政策など幅広い法律分野を扱う。2009年10月から2011年10月まで内閣府行政刷新会議事務局上席政策調査員。2011年4月から12月まで日弁連災害対策本部嘱託室長兼務。東日本大震災の4万件のリーガルニーズと復興政策の軌跡をとりまとめ、法学と政策学を融合した「災害復興法学」を大学に創設。講義などの取り組みは、『危機管理デザイン賞2013』『第6回若者力大賞ユースリーダー支援賞』などを受賞。公益財団法人東日本大震災復興支援財団理事、日本組織内弁護士協会理事、各大学非常勤講師ほか公職多数。関連書籍に『災害復興法学』(慶應義塾大学出版会)、『非常時対応の社会科学 法学と経済学の共同の試み』(有斐閣)、『公務員弁護士のすべて』(レクシスネクシス・ジャパン)、『自治体の個人情報保護と共有の実務 地域における災害対策・避難支援』(ぎょうせい)などがある。

 

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