「棄民から帰民へ」 ―― 広域避難者にこそ社会的包摂の手立てを

準市民制度の創設を

 

「福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク(略称SAFLAN)」は、選択的避難区域の設定を求めている。「被爆線量が1ミリシーベルトに達するおそれがある地点を含む市区町村のうち、政府が設定した警戒区域及び計画的避難区域以外の地域を選択的避難区域に指定する」という考え方だ。確かに原発事故では関東地方からの避難も少なくない。当面はこういう方法も必要だろう。

 

ただ、災害全般をみると、避難は原発だけでなく、火山や津波災害でも長期避難者は発生する。今後、発生が高い確率で予想されている首都直下地震や東海・東南海・南海地震では、仮設住宅の建設の遅れや仕事場の被災で、やむなく地域外に避難する人も多数、生じるだろう。

 

そこで、災害救助法の適用条件に「原子力関連施設や化学工場等の事故で地域が汚染、もしくは汚染される恐れがあるとき」を加え、救助法適用地域から避難した人は「地域外居住被災者」として、被災証明が発行されるようにしてはどうだろう。

 

一方、2011年8月に施行された原発避難者特例法を災害全般に拡大、災害避難者特例法とし、地域外居住被災者すべてを対象とするよう法改正する。通常、他地域から来た被災者に対して、受入自治体が行政サービスした場合、かかった費用は被災自治体に求償、被災自治体は国に補助金や国庫負担金を求めることになる。しかし、手間が二重、三重にかかることから、原発避難者特例法は、要介護認定や予防接種、児童扶養手当など219の行政サービスについて、受入自治体が国に直接請求できるようにした。ただ、現在、対象になる避難者の出身区域は、福島県いわき市、田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、川内村、葛尾村、飯舘村の13市町に限られており、自主避難者は対象外だ。

 

そこで、「地域外居住被災者」の考え方を導入するとともに、住民票を移していない避難者については、住民基本台帳法や住民登録法を改正して外国人登録のような在留登録制度(準市民制度)を創設、市民と同様の行政サービスが受けられるようにする。

 

東日本大震災では、避難者の所在地把握のために総務省が全国避難者情報システムを作動させた。しかし、住民基本台帳とは独立した単なる所在地情報であり、行政サービスのための基本情報でもない。避難が長期化し、しかも住民票を元の住所地に置いたままでは、いずれ所在地が不明になり、支援の谷間に埋もれてしまう恐れもある。また、自治体側にとっても一定の階層に、ある行政サービスを実施する場合、住基台帳に記載されていない階層は、よほど担当者が気を配っていない限り、ほとんど捕捉できないという弱点がある。そこで、住民票に準じる「在留登録制度(準市民制度)」を設けようというわけだ。

 

同時に汚染地域が相当、広範囲に達し、汚染濃度が高いときは、避難命令・勧告・指示を出し、被災者生活再建支援法に基づく長期避難地区に指定、一定の支援金を交付することも必要だろう。

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.273 

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