「棄民から帰民へ」 ―― 広域避難者にこそ社会的包摂の手立てを

前例のない対応を

 

ただ、セカンドタウンの法的スキームができたとしても、クリアすべき課題は少なくない。まず、雇用の創出だ。仕事がなければ若い人たちは戻らない。第2に避難自治体の受け皿となる自治体にどのようなメリットを用意するか。第3に避難自治体がファーストタウンに戻ることになった場合、跡地を有効活用する方法を検討しておくことだ。

 

福島県双葉地方は原発を軸にして2次産業、3次産業が組み立てられてきただけに、原発が廃炉にされた場合、新たな地域産業を興していかなければならない。避難自治体を受け入れた自治体を特区とし、企業誘致にさまざまな優遇策を用意することも必要だろう。とはいえ、原発にほかの企業が取って代わるだけの企業城下町づくりは避けなければいけない。一つの企業に町の運命を委ねる危うさは骨身にしみたはずだ。避難自治体と受入自治体でまちおこし会社をつくり、行政サービスの多くを「新しい公共」として民間に任せるなどの雇用創出が必要ではないか。

 

新しい街をデッドストックとしないためには、人口減少時代に向けた新たな暮らし方を提示し、全国のモデルケースとなるような取り組みが大切だろう。例えば、それぞれが独立した専用の住居と、みんなで使ういくつかの共用スペースを持ち、生活の一部を共同化する共生のまちづくりなどの実現だ。

 

ただ、問題はこれらの施策は受入自治体が納得してこそ、初めて実現する。国や福島県が頭ごなしに命じても反発を買うだけだ。しかし、未曾有の事態である。だからこそ「前例のない事態には、前例のない対応」が必要である。国は、あらゆる手法・メニューを福島の人たちに提示し、被災地が選ぶ再起の手段にできうる限りの財政的・法的支援を用意する。「コンクリートから人へ」の公約を掲げた政権党の総理にとって、これこそ政治生命をかけるべきミッションではないだろうか。

 

 

参考文献

『漂流被災者 「人間復興」のための提言』(山中茂樹著)河出書房

『避難する権利、それぞれの選択 被爆の時代を生きる』(河崎健一郎ほか著)岩波ブックレット

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.273 

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