被災者中心型の支援のかたちとは

荻上 復興アリーナ・ローンチシンポジウム、第一部では、「被災者中心型の支援のかたちとは」と題して、関西大学社会安全学部准教授・永松伸吾さんと、NPO法人フローレンスの代表理事・駒崎弘樹さんと一緒に、「これからの支援のあり方」について考えていきたいと思います。

 

僕は物書きをしておりますが、震災以降、「こう復興すべき」といった大きな論評だけはすまいと思い、鳥の目というよりは虫の目、つまり被災地取材で見聞きしたものをベースに、人と人との話をつなげようと思いながら仕事を続けてきました。特に今は、成功した支援の事例と、失敗した支援の事例をケーススタディとして集めています。それが、「次の災害」に役立つのではないかと思っているからです。

 

僕らは、もっと有効な支援の方法をシェアしていけるのではないかと考えています。多くのNPOや団体が、今でもあちこちで有意義な活動を行なっています。その活動内容について、もっと情報発信もして欲しいと思う。ただ一点、その発信にはどうしてもバイアスがかかりがちであるとも感じています。

 

というのも、当事者や支援者は、成功した事例を語りたがります。成果を誇り、寄付を募ることは重要ですから。しかし、失敗した事例が後世に伝えられないと、今後、同じ失敗が繰り返されてしまう可能性があります。だからこそ、支援の「失敗学」をシェアすることもまた、これからの減災研究の課題になるのではないかと思います。

 

今日は、研究者の永松さんと、NPO代表の駒崎さん、お二人が東日本大震災以降、どのような活動をされてきたのか、そして今後の減災のあり方についてどのようにお考えなのか、じっくり伺っていきたく思います。

 

 

防災研究を始めたきっかけ

 

荻上 永松さんはそもそも、どういった経緯で防災の研究を始められたのでしょうか。

 

永松 私の本来の専門分野は経済学や公共政策です。実は防災という学問体系はなく、いろいろな分野の方々が集まって、防災や復興について研究しているコミュニティがあるんです。私もそのコミュニティに属しています。

 

私の年代はポスト阪神・淡路大震災世代と呼ばれています。もともと防災とは違った分野の研究を志して大阪大学大学院に進学しました。大学が被災地に近く、またちょうどその頃、神戸が震災からの経済復興で大変困難な時期に重なっていたこともあり、経済復興の研究を続けていくうちに、いつの間にか防災が研究対象になっていたんです。

 

荻上 防災の研究は、工学や建築学、社会学、経済学など様々な分野の知恵を横断的に活用する面があります。実際に、これまでの震災で得た教訓や防災研究の蓄積は活用されてきたのでしょうか。

 

永松 おそらく皆さんが思っている以上に、この国はそういった経験を活かすのが得意です。

 

例えば、今の都市計画の仕組みには、関東大震災での大火災の経験が活かされています。現在でも防災は、都市計画や建築の方々が一番熱心です。また阪神淡路大震災のときには、阪神高速道路が倒壊したことや多数の住宅が倒壊したこともあって、土木工学や建築といった分野で、防災の研究が盛んになりました。東日本大震災以降は社会科学分野での研究がより盛んになるのではないかと予想しています。

 

 

これまでの教訓は活かせたか

 

荻上 阪神淡路大震災は「ボランティア元年」と言われています。今回の東日本大震災では、「阪神淡路の教訓」というフレーズも多く聞かれました。そのなかで、「初期段階は、ボランティアに行かないほうがいい」という言説がよく聞かれました。実際僕も、「これは本当に正しいのだろうか」と思いつつ、同じような発言をラジオでしたことがあります。

 

これは果たして良かったのだろうか。あるいは、「阪神淡路の教訓」は、どれほど機能していたのだろうか。永松さんはどのように評価していらっしゃいますか。

 

永松 阪神淡路大震災での教訓は、ちゃんと活かせていたと思います。

 

阪神淡路大震災では、数百万人規模のボランティアが被災地に入りました。しかし、みんながばらばらに集まったために、全体の力として活かしきれなかったところがあります。やはり素人が気持ちだけでボランティアに行ってもなかなかうまくいかないんですね。この経験から、「ボランティアコーディネート」という概念が生まれ、各市町村の社会福祉教育会を窓口として、ボランティアセンターが設立されるようにもなりました。

 

ただし「行ってはいけない」という言葉が、一人歩きしすぎてしまったところもあると思います。それは大いに反省すべきでしょう。

 

 

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