復興の英知を結集せよ! ―― 『東日本大震災無料法律相談事例集』

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2013年3月11日、日本弁護士連合会は『東日本大震災無料法律相談事例集』を発刊した。震災直後から避難所等で実施してきた4万件超の相談事例から1000件を厳選し、被災者の『生の声』を伝えることを目指した。東日本大震災から2年が経過。未来へ向けてふたたび叡智を結集し、残された課題の克服に挑む。

 

 

法律家による無料法律相談活動の開始

 

東日本大震災直後から、さまざまな情報提供の窓口を専門士業が担った。そのひとつが弁護士らによる無料法律相談活動である。被災自治体、国、企業、NPO、他士業と連携し、災害直後から相談活動を展開した。

 

ある弁護士は、自ら被災しながらも、震災から数日もたたないうちに、被災行政や地元企業の訪問、そして無料法律相談活動を開始した。地元の避難所を初めて訪れたときには、満場の拍手で迎えられたという。避難所で不安を抱える被災者は、明日への希望の糧となる「情報」を求め、そして伝えたい「思い」や「悩み」があった。(*1)

 

その後、日弁連、各地弁護士会、日本司法支援センターは、避難所等で無料法律相談活動を本格的に開始した。日本全国から多くの弁護士が被災地へ向かい、また電話相談を担った。相談の都度、「相談票」が作成される。今まで誰も遭遇したことがない相談内容で溢れ返った。それでも、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震等の経験を頼りに、問題の解決に取り組んでいった。開始から1か月で、青森、岩手、宮城、福島などで3000件以上の無料相談が実施され、相談票が作成された。

 

(*1)小口幸人「司法過疎地で被災者として、法律家として」(法学セミナー、2011年8・9月号)

 

 

無料法律相談ビッグデータの構築を

 

しかし、ここで大きな課題に直面する。相談があまりにも多種多様であり、また被害もあまりに甚大で、既存の法律で対応できないものばかりだったからだ。

 

法律相談の現場で、弁護士たちが感覚的に掴んでいる未解決の課題を、より客観的かつ正確に把握する必要があった。いかにして正確なニーズを把握するか。筆者の提案は、各地の弁護士会などに何百、何千件と積み上がって、分析できないでいた無料法律相談の「相談票」のすべてを、弁護士の手で再精査し、データ・ベース化することだった。

 

紆余曲折を辿り、震災から1か月経過したところで、日弁連災害対策本部にて無料法律相談情報を分析するプロジェクトが開始された。無料法律相談事例が次々と災害対策本部に集められ、全国の有志弁護士らとともに内容の精査とデータ・ベース構築を進めた。

 

データ・ベース構築と並行して、専門の研究員とともに、この「ビッグデータ」を分析する作業に入った。分析の成果は「東日本大震災無料法律相談情報分析結果」(*2)として随時発表した。これにより、被災地域ごと、時間経過ごとのリーガル・ニーズ視覚化が実現し、さまざまな復興・生活再建政策を裏付ける資料となった(*3)。

 

(*2)「東日本大震災無料法律相談情報分析結果」(第1次分析~第5次分析)

http://www.nichibenren.or.jp/activity/human/shinsai/proposal.html#bunseki

(*3)岡本正・小山治「東日本大震災におけるリーガル・ニーズと法律家の役割-無料法律相談結果からみえる被害の実像」(3.11大震災暮らしの再生と法律家の仕事、日本評論社発刊、2012)」を参照。

 

 

4万件超の相談事例から1000件を厳選「東日本大震災無料法律相談事例集」

 

過去5回公表してきた「分析結果」は、累計4万件の被災者の生の声を集めた統計資料のビッグデータとなった。一方で、具体的な個別の相談内容については、モデル事例の掲載しかない。そこで、具体的な相談内容、すなわち、東日本大震災の被災者の「生の声」を記録に残すべく、「東日本大震災無料法律相談事例集」作成を企画することになった。

 

東日本大震災から2年が経過する今、すべての活動の原点である、被災者の声に改めて注目することが必要と考え、有志弁護士によるプロジェクトチームが結成された。4万件の事例の中から、同種の相談が多い代表的な事例、解決のための新規立法や法改正の裏付けとなった事例、過去にだれも遭遇したことのない課題を浮き彫りにした事例、言葉を失う悲惨な事例、いまだ現行法では解決することができない事例など、1000件が抽出された。

 

 

事例集にみる立法活動の実績

1000件の事例の中には、それをきっかけとして、震災後の新規立法や制度構築につながった事例も数多く含んでいる。わかりやすい代表例を紹介すると以下のとおりである(事例集を参考に作成)。

 

 

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