震災復興と地域産業 ――「仮設商店街」からみえてくる現代の諸相

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仮設商店街にみる本来の商店街の機能

 

 

歩いて楽しめる「南三陸さんさん商店街」

歩いて楽しめる「南三陸さんさん商店街」

 

 

仮設商店街には事業をつづけようと意欲の高い店主たちが集まっている。皮肉ではあるが、当然のことながらシャッターを下ろした店舗や空き店舗はなく、にぎわいのある商店街も少なくない。つまり、仮設商店街は本来の商店街機能を取り戻すことになった。とくに次の3つの性質が際立っているようにみえる。それは「店舗の連帯」、「集積による外部経済効果」、「超高齢社会型・地域コミュニティの形成」といった3つの性質である。

 

まず「店舗の連帯」が強いことがあげられる。仮設商店街は、多くの場合、別々の商店街から個々の商店が集まって形成されているため、新たに協同組合を設置することになる。イベントなどを共同で実施するなかで、連帯の意識も芽生えていく。会合などでまちづくりについて意見を交わす機会が多くなり、地域の新たなデザインを主導していく立場を担っていく。

 

では、次の「集積による外部経済効果」はどうか。以前のシャッター通りの商店街では目当ての店に行けば、他店に立ち寄ることは少なかった。ましてマイカー社会の地方都市では、なおさらそうであろう。その点、仮設商店街では複数の店舗をまわることができ、回遊性が高い。仮設商店街はいろいろなかたちがあるが、後からできたところほど回遊性の機能がみられる。先にできた商店街に足を運び、入居する店主の意見を聞き、不便さを解消しながら設計した造りになっているからだ。

 

2012年2月25日にオープンした宮城県南三陸町「南三陸さんさん商店街」。31店(うち店舗は28店)で構成されているが、他の仮設商店街が2階建てなのに対し、こちらは1棟建てで、店舗同士がほぼ独立したかたちをとっている。「歩いて楽しめる商店街」にと、3つのテーマを決めて店舗を配置した。「生活」(電気屋、写真店、衣料品店、整骨院など)、「食べ物」(5店の飲食店、9店の食料品店)、「いこいの場」(花屋、化粧品店、酒屋、葬儀屋、美容院)といった3つのゾーンがある。いずれも店舗のひさしの色を統一し、ゾーンごとの一体感を醸し出している。

 

南三陸町は市街地が壊滅したため、山手の高台に「さんさん商店街」が設置された。2012年2月から12月までに20万人を超す人が訪れ、観光客が全体の7割以上を占める。屋根付きのフードコートもあり、イベントステージなどもある。「外貨獲得」を目的としたため、ここを起点に地域経済が循環していく仕組みを形成してきた。南三陸町では唯一、にぎわいを生む場になっているが、5年間限定の入居とされている。商店街会長である及川蒲鉾店の及川善祐氏は南三陸町の「産業再生部会」の会長も務め、中心市街地をかさ上げした後、まちづくりの中心に商店街を位置づけていくことを要望している。「復興の暁には、震災前以上のにぎわいをつくっていく」と語り、仮設商店街からの集団移転も視野に入れている。

 

このように観光客が多い仮設商店街もあれば、地元住民向けのものもあり、一口に仮設商店街といっても多様性を帯びつつある。今後、地域の復興計画や都市計画・まちづくりとどのような接点を持たせていくかが課題となろう。それは建物やハード面だけの問題でなく、ふたたび形成された地域コミュニティをどう維持していくのか、といった問題にもつうじる。

 

その点、仮設商店街は「超高齢社会型・地域コミュニティ」としての性質も内在させている。釜石市の中心市街地にある「青葉公園商店街」を訪れた際、仮設住宅からバスを乗り継いで来ているお年寄りがいた。2階に入るエプロン店「エプロンハウスHOT」の高橋つね子さんは、そうしたお年寄りの憩いの場を店内で提供している。

 

高橋さんが仮設店舗でオープンした当初、耳にしたのは「支援物資のエプロンを身に着けたくない」という女性たちの声であった。とくに仮設住宅にいると、エプロン姿で近所に出る機会が多い。三陸の女性たちは好みのエプロンを身にまとうことによって、本来の姿に戻ることができるのであろう。そうしたことを考慮し、エプロンハウスでは1枚ずつすべて異なるデザインのエプロンを販売している。そこでは色とりどりのエプロンに囲まれ、お茶を飲みながら、世間話をするといった日常のひとときが戻りつつあった。

 

 

釜石市の青葉公園商店街「エプロンハウスHOT」店主の高橋つね子さんが笑顔で住民を迎える

釜石市の青葉公園商店街「エプロンハウスHOT」店主の高橋つね子さんが笑顔で住民を迎える

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.264 

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