3・11から2年半 被災地仙台の復興は進んだか? ―― 現地の大学・NPOの共同調査から見る被災地の現状と課題

仮設住宅での聞き取り調査

佐藤 そうした仮設に住んでいる人々の生活について、たんに量的に把握するのではなく、ミクロに質的な調査を行うのが、われわれの調査の特徴ですね。

 

渡辺 そうです、震災が生活にどのような変化をもたらしたのか、聞き取りを行っています。ヒアリング項目としては、次のようなものです。世帯構成が変化した理由、プレハブを選んだ理由とか、世帯収入や支出額の震災による変化、就労状況や失業経験の有無など。所得の見通し、満足度、健康状態、今後の見通しとか、あるいは復興公営住宅について今論じられているけれどどう思っているのとか、生活保護制度についてどのように思っているのか。

 

佐藤 かなり生活に踏み込んだ質問をしますよね。病気から障害から借金はどうなっているという話もでてくる。センシティブなことを調査できるのはPOSSEの人たちがずっと継続して住民の人々と信頼関係を築いてきたからだと思うのですが、いかがでしょうか?

 

渡辺 ええ、2年以上被災者の日常生活に密着した支援を続け、その中で被災者の方と時間をかけて関係を築いてきたことは大きいのかもしれません。また、ぼくたちの支援は、社会福祉、ソーシャルワークという言い方をしますが、その関わりの技法を皆で学んで、信頼関係をしっかり作り、その上でいろいろな話を聞いていくということを心がけています。たとえば、就学支援でも、「私なんか教えて価値がないです」と言っていた子どもが、時間をかけて丁寧にかかわり続ける中で、担当者に心を開いてくれたということがありました。

 

佐藤 他の団体とか大学ではなかなかできないことだと思うんですよね。

 

 

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自ら言葉を封じる被災者

渡辺 では、調査結果の一部を見てみましょう。Aさん、78歳。この人の年収は、年金の45万円です。光熱費の節約のため、お風呂は一日おきにしている。介護保険サービスはなるべく利用したくないと言う。

 

佐藤 介護保険を利用したくないのは保険料がかかるからでしょうね。介護保険は使えば使うほどお金がかかります。

 

渡辺 このAさんは、復興公営住宅についてどう考えているかという問いに対して、家賃や生活費をどこから払えばいいのか分からないと答えています。仮設住宅にいる方がましだとも言います。

 

佐藤 これはひどいですよね。復興公営住宅で家賃が払えるか不安だというわけです。

 

渡辺 また、別の世帯を見てみましょう。高齢の女性Bさんとその息子45歳。収入を見てみます。年金など月9万円、2か月に一度振り込まれる。ここからさらに介護保険と医療保険が天引きされる。息子は被災により失業しているので頼ることができない。震災後の支出の変化としては、医療費減免制度がなくなったので通院回数を減らしています。

 

佐藤 医療保険料や介護保険料が増額されたのをご存知ですかね。被災者に対しては、国民健康保険の保険料と介護保険料が減免されていたのですが、その措置も終わってしまいました。9万円の中から引かれる保険料がわずかでも増額されたらものすごい痛手です。じっさい、高齢で病気がちな人がこうして通院回数を減らしているわけですから。そして、負担が増す中で、光熱費と医療費を節約することによって何とか生活を成り立たせているような状況です。

 

渡辺 あるいは一人暮らしの男性Cさん、46歳。収入はガソリンスタンドで月10万円。ここに障害年金が加わります。震災前は月20万円だったが、震災で契約社員の職を失いました。震災後の収入減を食費の抑制によってカバーしている。しかも、介護保険料の介護額が増えています。それでも、生活状況については、「今いるところで満足するしかない」と言うんです。「震災直後の屋根のない生活と比べたら充分ありがたい」と。

佐藤  調査の中に頻繁に出てくるのが、この「満足している」という言葉です。これだけ厳しい状況に置かれているのに、感謝しているとか、満足していると答える方は多いです。我慢強いと言うより、自ら言葉を封じているというような印象を受けます。

 

渡辺 これは、調査結果の一部ですが、秋にかけて50~100件の票数を集めることを目標にしています。

 

 

 

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