3・11から2年半 被災地仙台の復興は進んだか? ―― 現地の大学・NPOの共同調査から見る被災地の現状と課題

被災地では貧困問題が現れている

渡辺 要するに、被災地の問題は、とりわけ仙台においては貧困問題だということですよね。調査を進める中で、その認識がよりクリアになってきました。

 

佐藤 そうですね、被災と貧困との関係は明白です。貧困のため長期の仮設入居が余儀なくされているわけです。

 

渡辺 住居や職を失い、生活が不安定になっているという問題ですが、こうした現象自体は派遣切りの時にも見られたわけです。震災によって大規模に問題が現れているという違いはありますが、震災による特殊な問題ではなく、住居喪失や失業というリスクに社会がどう対応するかという問題と見るべきですね。

 

佐藤 そうです。仮設住宅で起きている問題は特殊な問題ではないという認識は非常に重要です。標準家族が解体して単身家族化が進み、一方で雇用が劣化していく。こうしたなかで少子高齢化が進んでいくわけですね。さきほど述べたように、高齢者の貧困率が高いというのは日本全体に見られる現象です。そうであるならば、程度の差はあれ日本に住む全員が経験している普遍的な問題だということになります。

ですから、仮設住宅に住む被災者の方々の状況を調査することによって、日本全体に共通する課題を考えることにつながります。調査の意味はそういうところにあると言えます。

さらに言えば、被災地としての仙台に着目することで、仙台という都市における貧困の問題を明らかにするという意義も調査にはあります。仙台の復興需要は減りつつあり、一方でその間被災県から人口が流入している。そうなれば都市型の貧困がより深刻になる可能性があります。東北は一つのものとして捉えられがちですが、東北の中でも明白な差異があるわけです。それぞれの関係の中で被災地を考えていく必要があるということを提起することにもなると思います。

 

 

P1020042

 

 

ステレオタイプな被災者像を求めるメディア

渡辺 こうした現状であるにもかかわらず、被災地の貧困に関する世間の関心はものすごく薄いと感じます。被災地の現状やぼくたちの支援活動について、メディアの取材を受ける機会がたくさんありました。被災地は今どういう状況ですかと問われたとき、被災者の生活が不安定だという問題を説明するんです。被災者はこういう状況に置かれていますと。すると、それは震災前からある問題であって、被災の問題ではないという反応がすごく多かった。被災地の問題と貧困の問題とは切り離されてしまうんです。そこで、求められているのは、震災で家族や家を失い精神的に打撃を受け、なかなか前に進めないというステレオタイプな被災者像だったという印象があります。派遣村以降、可視化されつつあった貧困は、震災後、被災という特殊な問題の後景に退き、再び見えなくなってしまいました。しかし、被災地を語るときに抜け落ちている貧困の問題が、今すごく深刻になってきていると感じます。

 

佐藤 同様のことを8月の仙台市長選で感じました。仮設住宅の調査からも分かるように、医療費減免がなくなった影響はものすごく大きいんです。医療費減免制度がなくなったので通院回数を減らしている被災者の方々がいます。ところが、8月の仙台市長選では、医療費免除制度の復活を訴えた対立候補は、現職市長に12万票差で負けてしまう。どちらかの候補者が良いというわけではありませんが、医療費減免制度の復活は選挙の対立軸としてはあまり注目されてなかったのではないでしょうか。仙台市における貧困や格差の問題から人々の目がそらされているように思います。

 

 

 

シノドスを応援してくれませんか?

 

人々はますますインターネットで情報を得るようになっています。ところが、ウェブ上で無料で読めるのは、信頼性の低い記事やエンタメ記事ばかり。そんなウェブ環境に抗うべく、誰でも自由にアクセスできる本当に価値ある記事を、誠実に配信していきます。そうしたシノドスの活動を持続的なものとするために、ぜひファンクラブ「SYNODOS SOCIAL」のパトロンになってください。⇒ https://camp-fire.jp/projects/view/14015

 

無題

 

・人文・社会科学から自然科学、カルチャーまで、各界の気鋭にじっくりインタビュー
・報道等で耳にする気になるテーマをQ&A形式でやさしく解説
・研究者・専門家たちが提案する「こうすれば●●は今よりもっとよくなるはず!」

・人類の英知を伝える「知の巨人」たち
・初学者のための「学びなおしの5冊」

……etc.  

https://synodos.jp/a-synodos

1 2 3 4 5 6 7
シノドス国際社会動向研究所

vol.236 特集:伝統と現代

・九龍ジョー氏インタビュー「落語とポリコレ――変化しながら継承される伝統芸能」

・【ハーグ条約 Q&A】コリン・P.A.ジョーンズ(解説)「権利としての親子のつながり――ハーグ条約で親子のつながりを守れ」

・【今月のポジ出し!】永田夏来「グリーンステージにU2が出れば、フジロックはもっと良くなる」

・畠山勝太「幼児教育無償化から考えるーアメリカの研究結果は日本にとって妥当なのか?」