「不理解の中の復興」の帰結――この国のゆくえ?

いったい、福島の話をどうやって伝えればよいのだろう。いったい、何がどうなって、これほど事態はこじれてしまったのか。

 

私(山下)が福島第一原発事故の避難者と向き合い始めて2年半。この間に知り合った原発被災者・市村高志氏と、同じく社会学者の佐藤彰彦氏の二者とともに語り合い、原発避難の真相を避難当事者の声をもとに綴ったのが2013年11月に出版した『人間なき復興』だ。

 

 

「不理解」が引き起こす分断

 

本書のキーワードは「不理解」である。ふつうは「無理解」だろう。あえて「不理解」という奇妙な語を使ったのにはわけがある。

 

原発避難をめぐって生じているのはどうも「無理解」ではない。みなこの原発事故・原発避難については関心があり、一定の理解を示している。だがどうも、その理解では駄目なのだ。理解したつもりになっていることが、本当の理解ではないために、避難者のためとされて行われているものが「これは自分たちのためではない」ということが生じている。

 

「理解できない」(無理解)のではなく、「それは本当の理解ではない」(理解にあらず=不理解・非理解)、そういうことがあまりに多く、しかもそうした不理解が、避難者をめぐる現実を、きわめて難しくしているようなのだ。

 

例えば政府による、帰還を中心とした復興政策。これはとくに事故当初、メディアなどに盛んに出ていた「帰りたい」「いつになったら帰れるんだ」という避難者の声をそのままに理解し反映させたもののようだ。だが「帰りたい」という声をそのまま鵜呑みにして理解してはならないのだ。みな内心では「本当は帰れないのは分かっている」のである。「帰りたいけど帰れない」のが多くの人の現実なのに、「帰りたい」という部分だけが都合よく取り上げられ、帰還政策に結びついてきた。そこには「『帰りたい』という人々を、なんとしてでも早く帰してあげたい」という正義の感覚さえ潜んでいるようだ。

 

そして今回、もう一つ別の避難者の声、「帰れないなら帰れないと言ってくれ」を真に受けて、一部地域について国有化を進めるような議論も政治家の口から出てしまった。本書脱稿のあと出てきたことで、本文には取り上げられなかったが、これもまた不理解の一つだろう。

 

たしかに「帰れないと早く国で決めてくれ」という声はある。でもまた多くの人には「ふるさとがなくなる」ことには抵抗があり、実際に土地を買い取るとなれば大きくもめるに違いない。今後はさらに、「じゃあ、いくらになる」といった形の論理も現れて、避難者間の分断はますます進むことになろう。それどころか買い取り地域のすぐ傍らには、中間貯蔵施設のそばに帰ることを強要される人々も出てくるわけだから、これもまた実施されれば、不理解による、社会的分断を推し進めるだけの正義の政策となるのかもしれない。

 

そしてより重要なことは、こうした方針の決定はすべて政府がにぎっていて、住民も避難自治体も蚊帳の外にいるという構図が一貫していることだ。国による一部地域国有化のニュースも当事者たちとの相談の上でのことではなく、一方的にメディアを通じて被災者に(被災自治体にさえ)伝達されたものなのである(この点は拙著『東北発の復興論』第5章に別の文脈で論じておいた)。

 

「被災者の生活再建」「被災者の復興」という名目でやっている政策や事業が、結局は被災者置き去りで、単に公共事業を押しつけるだけのものになってしまっている。そういう感じが強まっている。そして公共事業を実施することとは、お金を使うこと、ばらまくことであり、あたかもそれが復興であるかのようだ。失われた経済を元通りにするために、新しい産業を作り、雇用を作るというが、結局は公共事業で経済を潤わせ、自治体の人口を維持することだけに目的は向いており、必ずしもそこに戻る人は被災者ではなくてもよいかのような雰囲気さえある。

 

このままでは、人々の人生はあの事故で終わり、ふるさとも終わって、別の人々が別の形であの地を有効に利用していくことになりそうだ。

 

 

 

シノドスのコンテンツ

 

●ファンクラブ「SYNODOS SOCIAL」

⇒ https://camp-fire.jp/projects/view/14015

 

●電子メールマガジン「αシノドス」

⇒ https://synodos.jp/a-synodos

 

●少人数制セミナー「シノドス・サークル」

⇒ https://synodos.jp/article/20937

 

 

 

 

1 2 3
シノドス国際社会動向研究所

vol.256 

・熊坂元大「「道徳教育」はこうすれば良くなる」
・穂鷹知美「終の住処としての外国――スイスの老人ホームにおける 「地中海クラブ」の試み」
・徳山豪「アルゴリズムが社会を動かす」
・鈴木崇弘「自民党シンクタンク史(1)――シンクタンク創設への思いとその戦い」