ソーシャルビジネスを通じた新しい復興支援のかたち

被災地支援は、行政、NPO、個人など、さまざまな視点から行われる。東日本大震災では、従来の支援に加えて、数多くのソーシャルビジネスによる支援が見られた。ソーシャルビジネスによる支援は本震災においてどのような貢献をしてきたのか。これまで互いに距離をおいていたNPOと政府は、今後どのような関係を構築していくべきなのか。

 

「震災リサーチを通じて、効果的な復興支援を加速する」という言葉をウェブサイトに掲げているRCF復興支援チームの代表・藤沢烈氏、阪神淡路大震災で経済復興に苦しむ姿を見たことをきっかけに、防災や復興に関する研究を続けられてきた関西大学社会安全学部・永松伸吾准教授が語り合った。(構成/金子昂)

 

 

「何もしない」という選択肢はなかった

 

永松 東日本大震災の特徴として、阪神淡路大震災のときには見られなかったソーシャルビジネスを通じた支援があげられると思います。そこでRCF復興支援チームの代表として、ソーシャルビジネスに関わりの深い藤沢烈さんに、東日本大震災にどのようなかたちで関わってこられたのかをお伺いしたいと思い、インタビューのお願いをさせていただきました。

 

また、以前「仮設支援員のネットワークをつくりたい」と藤沢さんにお話したところ、「まずは実態がどうなのか調査するべき」とアドバイスをいただきました。その後、労働政策研究・研修機構(JILPT)で震災後の雇用に関する研究プロジェクトが立ち上がり、まだ途中段階ですが、いろいろと見えてきたこともあります。この調査を通じて「被災地のコミュニティ形成」に個人としてもいろいろと思うところがありましたので、そのお話もできればと思っています。

 

早速ですが、藤沢さんは震災前、どのような活動をされていらっしゃったのでしょうか。

 

藤沢 わたしの経歴を簡単にお話すると、バーの経営、マッキンゼーというコンサルティング会社を経て、ベンチャー企業を支援する株式会社RCFを設立しました。当時は、主にベンチャー企業の投資や投資後のサポートを行いつつ、ライフワークとしてNPOや社会起業家の支援にも着手していました。たとえば、のちにフローレンスの駒崎弘樹さんやカタリバの今村久美さんといった社会起業家を生み出すこととなるNPO法人ETICのアドバイザーとしてさまざまな事業をつくってきました。

 

永松 復興支援に携わるきっかけは何ですか。

 

藤沢 東日本大震災発生後、さまざまな社会起業家が何らかのかたちで被災地に関わっていきました。わたしは彼らに「社会のために動こう」と発言していた人間ですから、初めから「何もしない」という選択肢はありえず、発生後すぐに、何に取り組むべきかを考えました。今回は被災地が広範囲でしたし、もともと現場で汗を流すのが得意なタイプでもなかったため、最初は各地の情報を分析し発信する後方部隊に徹しました。

 

3月から5月あたりは、リサーチチームとしてコンサルティングやリサーチの経験者をボランティアで10人ほど集めて活動をしていました。その後、まとまった寄付金をいただいたこともあり、継続的に活動するため、事業型支援を行う団体を立ち上げました。ちなみに団体の活動と並列して、3月から湯浅誠さんがリーダーを務める内閣官房震災ボランティア連携室でも個人的に活動をしていました。いまは現地のNPOとパートナーシップを組みながら、企業・NPO・行政の連携促進や事業コーディネイトを行っています。

 

 

行政・民間・研究者の調査

 

永松 日本では、現地で具体的な活動を行うNPOには予算がつきやすい一方で、知的な支援を行うNPOには予算がつきにくい現状があります。また研究者の立場でお話すると、少なくとも防災の分野では、今回の復興に関する研究予算のほとんどを官庁が握ってしまい、アカデミックな研究者にはほとんど配分されませんでした。

 

政策のよしあしを判断するための重要な材料である研究・調査の予算を政府が握ってしまうと、政策目的に沿った調査ばかり行われてしまう可能性や、都合の悪い調査結果が公開されない危険性があります。ですから研究者や藤沢さんが行われているような民間独自の調査は大変重要なものです。

 

一方で研究者として反省もあります。ぼくらの世界は学会に論文を発表してなんぼという面があるため、被災地の政策課題をとらえ、ソリューションを出すことを目的として研究をする人がじつは少ないんです。阪神淡路大震災の際にも、防災分野の研究は復興に貢献したと思う反面、論文目的に調査票をばらまく研究者も多くいたことも事実です。もしかしたら政府にはそういった研究者へのネガティブな反応もあったのかもしれません。

 

藤沢 たしかに住民側の苦情に「いろんな調査がたくさんくるので何とかしてほしい」というのはありましたね。とくに最初の一年間はネガティブな反応が多かった。

 

永松 藤沢さんはどのような調査を行われてきたのでしょうか。

 

藤沢 初めは「被災者をNPOとつないで支える合同プロジェクト」と一緒に、避難所の生活環境調査を行いました。岩手、福島はまわれませんでしたが、宮城県にあるすべての避難所はまわりました。この調査のおかげで、被災から一ヵ月経過してもまともに3食摂れずにいた避難所を見つけられた。行政が見落としていた問題を民間によって発見することができたことは非常に意味あることでしょう。

 

永松 行政には気が回らない部分がありますね。緊急雇用の調査をしていて、政府には「雇えばいい」という感覚があるのではないかと感じました。雇用された人が、仕事にやりがいを感じているか、再就職に繋がっているかは、政府は大して注目していません。いまだに雇用対策は数だけが問題なのです。

 

藤沢 国は予算をつけることは得意でも、検証するのは苦手なんだと思います。緊急雇用には多額の予算がつきましたが、レビューができていない。この問題に取り組むには民間との連携が必須だと思います。

 

岩手県と現地のNPO、われわれで調査を行った事例があります。画期的だったのは、われわれの調査のために日本財団さんやジョンソン・エンド・ジョンソン社会貢献委員会さんが予算を支援してくださって、それを県が公認したことです。県のみで調査をすると他の自治体との関係で、情報が出しにくくなってしまうため、県としても民間が調査してくれるのはありがたいことなんですね。尖ったところは民間が受け持つのも必要だと思います。

 

 

藤沢烈氏

藤沢烈氏

 

 

 

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