ソーシャルビジネスを通じた新しい復興支援のかたち

コミュニケーションの重要性と自治会の存在

 

永松 あるNGOの方が「仮の住まいはあっても、仮の暮らしはない」と仰ってました。阪神淡路大震災で得られた教訓のひとつに、仮設住宅での自治組織の必要性があります。一方、今回の震災では、自治体をつくっていない仮設住宅が多くある。そしてさほど困っていないし、いまさらつくる気もない。相馬市、多賀城市、亘理町といった都市型の地域で多くみられる傾向があります。おそらくいずれ離れるだろう場所で自治会をつくることにエネルギーを割きたくないと考えているのでしょう。

 

また、たとえば南相馬市の場合、警戒区域から避難してきた人もいれば津波被害で避難した人もいます。公的な支援を含めて、人によって境遇がまったく異なっている。それに緊急雇用で雇われた仮設支援員が窓口となって管理業務をしてくれるので生活の質もある程度は保たれています。そういった状況で自治会をつくることは難しいでしょう。緊急雇用によって逆にコミュニティが弱体化する現状もあるんですよね。

 

藤沢 わたしはコミュニケーションが目的で、コミュニティは手段だと思っています。調査をしたところ、頻繁にコミュニケーションしている方は自立意識が高いことがわかりました。

 

東北復興新聞;http://www.rise-tohoku.jp/?p=3444

 

コミュニケーションを通じて情報を手に入れていたり、土地への愛着を再確認したり、さまざまな効果があります。自治会の有無ではなく、コミュニケーションの量が重要なんですね。都市型の地域ではコミュニティはなくてもコミュニケーションがあるならそれでいいのだと思います。もちろん自治会が必要となる地域もあると思います。結果としてコミュニケーションができていればかたちは多様でいい。

 

永松 まったく同意です。被災者が安心して生活を送れるのであれば、自治会というかたちにこだわる必要はないと思います。

 

自治会の存在による弊害もあるでしょう。たとえば、仮設住宅や避難所で一部の方が勝手に自治会を名乗り、外部からの支援をすべて受けてしまうかもしれない。その地域に支援している行政や支援団体は、疑問もなく自治会に支援を送ってしまうと思います。

 

藤沢 行政は自治会にその地域の代表性があると考えられがちですが、高齢者ばかりの自治会で、女性や若者の意見が反映されていないことも多々あります。しかし行政は機械的にやらざるを得ないので、代表性があろうがなかろうが、自治会を経てサービスを提供するしかない。このギャップが大きいんですよね。

 

自治会に参加するのは一世帯につき一人。基本的には世帯主が参加されます。そこで代表性のないコミュニティに頼るのではなく、女性だけの集まり、若者だけの集まりをつくって、コミュニケーションを重視するように仕掛けています。

 

永松 どんな効果が現れていますか。

 

藤沢 1週間のうちに他人と話したか尋ねると、仮設住宅支援員制度を実施した大船渡市でのコミュニケーション量は明確に増えています。因果関係を厳密に見る必要はありますが、大船渡市は自立再建に向けた動きや就労に向けた動きが盛んになっていますね。

 

また釜石市の場合ですと、それまで行政の説明会に出席はするものの、そのとき以外に復興については考えない。その上、行政に言いたいことがあってもなかなか言えずにいたようでした。そこで支援員を派遣し、「担当の方を呼びましょうか」と提案をしたら「そんなことできるんですか」と、徐々に復興に気持ちがシフトするようになりました。コミュニケーションを通じて、復興へと導く成功例だと思っています。

 

 

永松伸吾氏

永松伸吾氏

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.269 

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