ソーシャルビジネスを通じた新しい復興支援のかたち

金銭的支援の限界

 

永松 たとえばコミュニティの活性化のようなソフト面の復興と、予算や町の整備など、ハード面の復興にはギャップがあるように感じます。

 

藤沢 そうですね。

 

とくにギャップを感じているのは、たとえば最近、岩手県の内陸市町村は避難者が自らの自治体に家を建ててそのまま居ついてもらえるように、住宅再建の補助金を出すようになっています。住人が増えれば税収が増えますから、積極的に補助金を出そうとするわけです。しかしこの補助金が本当に被災者のためになっているかというと微妙で、きっと一番得しているのは建設・住宅業界でしょう。復興予算が、被災者のニーズにあっていないところで使われてしまっているんですよね。

 

永松 中越沖地震の際に、柏崎市の財政課の担当者に話を伺ったところ、抗うつ状態の方が少なからずおられるということでした。財政課が担当している罹災証明によって、被災者の支援の額がガラッと変わってしまうんです。だから被災者も必死で、「誰々のところは全壊と判定されたのにどうしてうちは駄目なんだ!」と抗議をする。なかにはそのために窓口に一日居座る人もいる。生活再建のためにお金は必要ですが、お金によって地域の一体感が失われてしまうこともあるんですよね。

 

また阪神淡路大震災では、マンションの再建が課題になりました。当時、マンションを建て替える際には、区分所有者全員が賛成をしなければいけなかった。それが阪神淡路大震災をきっかけに、5分の4の住人の合意で建て替えが可能になりました。

 

それによって何が起きたか。比較的ご年配の方は震災前に住んでいた場所に留まりたいと考える一方で、現役世代の、比較的財力のある方は建て替えを希望する。結局、後者が前者の反対を押し切って、マンションの建て替えが決まってしまった。そして建て替え希望者は、建て替えたマンションを売って、そのお金で別の所に引っ越してしまいました。

 

結局、そのマンションを終の棲家と考えていた人の希望は叶えられませんでした。マンションを財産として捉えれば解決は容易ですが、コミュニティは崩壊する可能性があります。お金の側面のみで復興を考えることは危険だと思います。

 

藤沢 復興予算をつけるといった外科的な支援と、コミュニティを再建するといった内科的な取り組みが必要なのだと思います。

 

当たり前のことですが、皆さん復興のためにお金を必要としています。いま福島県で調査をすると、生活資金が欲しいという声を多く聞きます。だからといって復興予算をすべてそこに費やすわけにはいきません。予算も重要です。しかし予算をどこにどのくらい出すかという議論だけでなく、コミュニティをどのように形成し、自立していくかという知恵も必要でしょう。ぼくはそこにやりがいを感じています。コミュニケーションが増えているところは、自立再建も増えているんです。可能性があると思いますよ。

 

永松 復興庁の資料を見ると、「道路が何%復旧した」といったことばかり書かれていて、被災者の視点が足りていません。

 

藤沢 現状を転換していかなくてはいけませんよね。

 

これまでNPOは政府を批判する側にいましたし、政府もNPOも互いに距離を置きたがっていました。しかし今回は政府とNPOの連携が生まれた。これは微かな希望です。

 

 

復興の可能性を信じる

 

永松 東日本大震災では津波によって沿岸部は壊滅的な被害を受けました。町がまるごとなくなってしまっているところがあります。彼らが復興のモチベーションを保つのは非常に難しいでしょうね。誤解を恐れずにお聞きしますが、いっそのこと「もう復興は厳しいよ」と言ってしまう選択肢はあると思いますか。

 

藤沢 悩ましいですね……。

 

永松 福島県では今年になって帰還困難区域を設けましたが、わたしはもう少し早くレッドゾーンを引いてもよかったのではないかと思います。何度か原発避難者の方々と話をしましたが、駄目なら早くそう言って欲しいという声は多かったです。ただ、津波被災地は難しいでしょね……なにをもって復興は困難だと判断するか……。

 

藤沢 難しいです……。

 

自分としてはチャレンジしていきたいと思っています。今回、市街地に比べて、限界集落とされるような地域のほうが復興は進んでいます。土地への愛着力が強いからこそ、復興していこうという気持ちが強い。一方で市街地では便利さを求めて生活している人がほとんどですから、不便になったら出て行ってしまう。だから市街地の復興は非常に難しいんです。

 

福島県を含めて、不便な所は粘っていると思います。ぼくはその粘りを応援したいし、可能性を感じています。福島県は産業がなかった地域だからこそ原発があったわけですよね。原発がなくなって、周辺のサービス業も一緒に消えてしまった。非常に厳しいと思います。でも、たとえば浪江町でさえ3年後には戻ろうとしています。彼らが復興したいと思っている限りは、応援していきたいと思っています。

 

永松 わたしもそう思います。

 

無尽蔵に予算をつけるわけにもいきませんが、そうした厳しい環境のなかであっても、そこで生きていくことを選ぶのは、彼らの権利です。彼らがそれを望むなら、最大限の支援をしていくべきだと思います。

 

今日、藤沢さんのお話を伺って、復興はマクロとミクロの視点を一気通貫で見ていかなくてはいけないと改めて勉強させていただきました。本日はお忙しいところありがとうございました。

 

(2012年11月16日 RCF復興支援チーム事務所にて)

 

 

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