被災地最前線からの報告 ―― 記者たちが探し出した『真実』

放射能への不安と差別について

 

亀松 災害遺構を残して、できるだけ外部の人に来てもらった方がいいんじゃないか、という話でした。

 

最後に佐々木さんのお話ですが、佐々木さんは今までの4人とはちょっと違う事情がありました。南相馬市は、福島第一原発から20km圏内に入っている警戒区域で、中でも小高区は立ち入りができない。原町は一時緊急避難準備区域で、制限がかかっていました。今、一番南にある小高区に入ったときのことを書かれた記事が手元にあります。そのときはどのような状況でしたか。

 

佐々木 このとき僕は初めて警戒区域の中に入りました。11月末です。原発から20km以内は立ち入りが制限されているので、建物は崩れたままになっています。だから、震災直後の状態がそのまま残っています。原町区と小高区は地盤が違うからか、原町区は建物の倒壊があまりなかったのですが、小高区は地震による倒壊が目立っていて、震災直後に戻ったような感じがしました。

 

亀松 12月時点でもそのまま残っているんですね。

 

佐々木 はい。未だに警戒区域は解除されていません。おそらく明日30日に(2012年3月29日放送)、その区域の再編を発表します。南相馬市は震災前約7万1千人の人口でしたが、市が避難を呼びかけてから、一時期は1万人前後まで減りました。緊急時避難区域は9月末に解けたので、原町区では学校も再開されました。現在は4万4千人近くまで人口が回復しています。

 

亀松 警戒区域になっている理由は言うまでもなく、第一原発から近くて放射線量が高いということだと思いますが。

 

佐々木 いえ、放射線量が高いかどうかではなくて、原発からの距離で決められています。

 

亀松 実際に区切るときのルールはそうですが、その条件として放射線量を浴びる可能性を考慮しているのではないですか。

 

佐々木 単純に距離で区切っているため、そうとは言い切れません。それ以外に、計画的避難区域といって、放射線量が高いところが指定され、例えば南相馬市の西にある飯舘村は全村避難になりました。放射線量で避難指示が出るところもあります。

 

亀松 20km圏内ではあっても、福島市や郡山市よりも放射線量が低い場所があるということですね。

 

佐々木 そうです。福島市の方が南相馬市の町中よりも放射線量が高いという結果が出ています。

 

亀松 放射能というのは、中に入ってみると感じるものなんでしょうか。

 

佐々木 ははは(笑)。痛みでも感じたらいいんですけどね。あるいは記事にも書いたように色でもついていればどれだけわかりやすかったか。測らなければどれだけ放射線量があるか全くわかりません。だから余計不安になる。低線量被曝についてはデータが揃っていないので、どれだけ将来に影響が出るかわかりませんね。だから子どもをもった家族中心に避難している状況です。

 

人口構成で見ると、小学校低学年に近い年齢ほど少なくて、その親に該当する世代の女性も少ない。お父さんは仕事で残って、お母さんは子どもたちを連れてよそに避難しているという構図が見えてきます。避難先としては仙台や東京が多い。一番遠いところでは沖縄に避難している人もいます。警戒区域には二度入ったんですが、福島第一原発の目の前にも行きました。もちろん痛みも感じないし、鳥も鳴いている。何もなければただの工事中のところにも見えますよ。

 

亀松 放射能差別についてどう思うか、というコメントがありました。線量が高くないのに入れないという場所がある一方、宮城県や岩手県の瓦礫処理の受け入れに対する抵抗が非常に強いという問題があります。例えば石巻市は瓦礫がたくさん出て問題になっていますね。そういった抵抗を感じることはありますか。

 

川端 石巻市の瓦礫は通常のゴミ処理場の106年分の量があると言われています。まだ受け入れは全く進んでいないですね。石巻にとって放射能の影響は、瓦礫よりも海産物が強い。昨日も高級魚のスズキに含まれるセシウムが100ベクレルを超えているというニュースがあって、仙台湾のスズキの水揚げを自粛することになったんです。これは他の水産物にも影響してきますので、これから産業が立ち上がろうとしているときに、放射能が与える影響というのは非常に大きいですね。

 

亀松 そういう意味での影響はあるということですね。大槌も津波以外にも漁業の影響がありますか。

 

東野 大槌では放射能へのイメージはまったくないと思います。ただ、警戒区域から遠い地域なのに、瓦礫の受け入れ反対運動が各地で起きているのをみると、不思議に思いますね。住民の方はみな、「日本地図を持っていないのかな」と言っていますね。もちろん単純に瓦礫を受け容れるのが嫌だというのは理解できますけど、放射能を理由にするにはつじつまが合わないです。

 

伊藤 宮古市の瓦礫の山を東京都が受け入れていて、よく取材に行くんですけど、ものすごく厳密に放射線量を測っています。それを見ると、複雑な気持ちになりますね。東京都は石原都知事の決断でいち早く受け入れていて、東京湾に瓦礫を埋め立てています。

 

でも実は、東京の方が放射線量は部分的に高いんですよね。福島第一原発事故の風向きや距離を考えると、南の方に放射線が降っているはずです。それに比べれば宮古市の方が放射線量は低いのに、拒否反応を起こしている。取材するたびに、「絆」というスローガンは何だったんだろうと複雑な思いになります。説明がうまくできていなかったという理由もありますけど。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

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