「復興人材」が果たすことのできる役割

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おらが大槌夢広場

 

 岩手県の大槌町から参りました臂と申します。今日は最年長の32歳です。わたしは群馬県で生まれ育ち、茨城県内の大学に進学、その後、東京で建設コンサルタントをしていました。大槌町には国土交通省の現状調査で入り、そのなかで住民の人たちと知り合って、「おらが大槌夢広場」という組織を立ち上げました。

 

おらが大槌夢広場;http://www.oraga-otsuchi.jp/

 

まず、大槌町の今回の震災による被害をみなさんにお伝えします。人的被害として1500名程の方が犠牲になりました。震災以前1万6千人程の人口規模だったのが、1万3千人程度にまで減少しているという状況です。商業地浸水率でいうと、98%位が浸水しました。中心市街地だった部分がすべて破壊されています。

 

わたしは5月に大槌市に入り、建物の被災の調査と、復興パターンを検討しました。おらが大槌市夢広場の前身である「創造委員会」もこの時期に発足させ、そこで「なんとか復興したい」という意識の強い若者たちとの出会いがありました。そして、10月、11月ごろから、被災された方の住む場所を決める「地域復興協議会」を住民主導で開催しました。

 

大槌町地域復興協議会;http://www.town.otsuchi.iwate.jp/bunya/fukkokyogikai/

 

そんななか、11月2日に「おらが大槌夢広場」が設立されました。住民が次に住む場所を決めていく、その混乱のなかで立ち上がった組織です。3月になり事業も移行時期でしたので、ここでコンサルを辞めようと決意しました。いまは組織に専従しています。

 

簡単に組織の紹介をします。「おらが大槌夢広場」は、行政機能の低下した分野を補完するという位置づけで立ち上げました。現在、公益部門・観光部門・新規事業・独立開業の4チームで支援を行っております。

 

公益部門では、従前のコミュニティーを再生するために、たとえば「ドームハウス」を使用して高齢者向けのコミュニティーサロンを運営しています。仮設住宅住まいだと、もともとご近所づきあいしていた人となかなか会えない。そのため、人工的に近所づきあいができる空間をつくりました。週に4回お茶っこを開催するほか、手仕事など、次の生計向上に繋がるような取り組みを行っています。

 

 

jinzai01

 

 

また、震災以前には会議にまったく参加していなかった方、「ワークショップ」といった言葉も知らなかった方に、積極的に会議に参加していただいて、自分たちで街づくりを考えていく場をつくっていかなければいけない。それを文化にしていかなければいけない。このような意図で、講座を開いたりもしています。

 

その一方で、若年層に向けた取り組みもしています。震災後に若年層、とくに子どもたちの意識が変わったという話をよく耳にします。そんな彼らに、街づくりに参加する主体性を構築するために「子ども議会」を運営しています。さらに、震災のナレッジを蓄積するために、資料館と「大槌新聞」を発行してもいます。

 

大槌新聞;http://tinyurl.com/bzjkh4k

 

次に、観光部門では、「観光コンベンションビューロチーム」という名前で活動しており、地域の魅力を伝えるガイドマップづくり、慰霊の場所・虎舞(大槌市の無形民俗文化財)の案内、ワカメ漁体験などを提供しています。われわれは企業の新人研修受け入れが多く、彼らに「自分は今後何ができるか」と考えて、シェアリングしてもらったりもしています。また最近では、既存の住宅ストックを生かして、民家を再生して宿泊施設にしようなどという計画を立てているところです。

 

そして、新規授業開拓チームは、地元のコーディネーターとして、各種企業や大学などの研究機関とのコンソーシアムに参画して、実際に既存の大槌市の産業と、都市の技術を繋げて新しいスモールビジネスを創出し、担い手を育成するという取り組みをしています。

 

最後に、独立開業支援チームの取り組みとしては、「おらが大槌復興食堂」というものを運営し、食に携わる人材の育成をしています。全国のグルメイベントに参加したり、メニュー開発を行ったりもします。

おらが大槌復興食堂;http://www.oraga-otsuchi.jp/hukkou/index.html

 

わたし自身は、おらが大槌夢広場で、法人の設立、事業計画の企画提案、ファンドレイジング、ステークホルダーの渉外、勤怠管理、福利厚生のような、事務的な部分を担っていいます。外部的な評価はいただいているんですが、やはり反省もあります。組織が縦割り化されている状況や、地域がもっているリソースを生かし切れていない。

 

それらを踏まえて、新事業は「ひと育て×まち育て」という新しいテーマを掲げ、この言葉に込められたスキームのなかにいままでの事業を落としこんで、活動を展開しようとしているところです。たとえば、役場が行政サービスと創造的な業務の両方を担うのは負担が大きいし、どうしても行政が提案した範囲に収まってしまう。そのため、まちづくりを会社や民間が担うというのが、実際に取られるべき手段なのかな、と思っています。

 

われわれが今後担っていく役割のヒントとして、横断的に創造的なプロジェクトにするため、埋もれている人材をコーディネーターが適正に応じて抽出していくという作業があると思っています。

 

また、われわれの組織から3人の若者がソーシャルなかたちの起業を目指しています。震災以前の大槌市ならば、こんな風に若者が立ち上がる環境はなかったと思います。やはり、震災を経験したからこそ、若い人材が育っていくというのはあるのかもしれません。

 

このように人材を次々と大槌市から打ち出していきたいという思いから、「ひと育て×まち育て」大学を9月から設立しています。今年度中にある程度の基盤をつくり、来年以降、本設で運営していきたいと考えております。

大槌ひと育て×まち育て大学設立運営プロジェクト; http://michinokushigoto.jp/archives/5295

 

わたし自身は「後継者育て」をテーマに被災地と関わりたいと思っています。担い手をやはり育てていかなければならない。また、ステークホルダーとのクラスタリングされた関係の助成とナレッジの蓄積、そして「ひと育て」「まち育て」を大槌市に作法としてもたらし、それが文化として根づいていくような環境づくりをしたいと考えております。

 

宮本 臂さんは、お仕事として関わられ、その後、支援者として関わられたということでした。ドームハウスを利用したコミュニティーサロン、さらにこども議会、あるいは企業や大学、研究機関をつなげる仕事と、ひとをつなぐこと、そのなかで人を育てることを志向されています。それが、いま「ひと育て×まち育て」という事業につながったと。

 

「復興人財」という言葉が示すように、ひと育てが復興の核であることは間違いがないと思います。問題は、その「ひと」はどのように育てられるのか。わたしは、復興人材は、被災地で被災者の方に育てられるのではないかと思います。

 

つづきまして黒沢さんよろしくお願いいたします。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.265 

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