「復興人材」が果たすことのできる役割

ふるさと回帰支援センター

 

服部 みなさんこんにちは。NPO法人ふるさと回帰支援センター復興支援コンソーシアム福島県事務局の服部正幸と申します。「福島県二本松市」と、「納豆屋」「中越」というキーワードをもとに発表させていただきます。

 

ぼくは福島県二本松市、旧安達町で生まれ、高校までそこで生活をしていました。実家は二本松エリア相手に商売をしているような、小さな納豆屋をしています。ばあちゃんが戦後にはじめまして、いまは母が社長となって小さいお店を経営しております。店の名前は「白糸納豆」です!これが、ある意味ぼくの名刺代わりかなと思っております。わが家の歴史が、いまのぼくの生き方に影響を与えているので、わが家の歴史を通して自己紹介をさせていただきます。

 

曾じいちゃんと曾ばあちゃんの頃は、納豆屋ではなく豆腐屋でした。もともと横須賀の海軍で設計の仕事をしていたのですが、ある日じいちゃんが足を切断し、海軍をやめなければいけなくなりました。生まれ故郷の福島に帰り、近所でも美味しいと評判のわが家の井戸水を利用して、何かつくれないかと考え、はじめたのが豆腐屋でした。ただ、ご存知の通り、豆腐は水を沢山使うのですが、一方で井戸水というのは量が限られています。戦争をきっかけに生きていく上でもっと効率の良い製造品をしようということで、豆腐屋から納豆屋へと転職しました。

 

納豆屋をはじめようとなったとき、実際に納豆づくりに着手したんですが、なかなか大豆が納豆になってくれなくて、しっかりした納豆になるまで5年間かかりました。その間、じいちゃんはすごく試行錯誤をしたんですね。「なんで納豆になんねぇんだ」って。じつは、なんで納豆にならなかったのかという原因があったんです…。じいちゃんが納豆菌を入れるのを忘れていたんですね(笑)。

 

二本松エリアに卸すだけの小さい納豆屋なんですけれども、それだけで家の生活が成り立つようになりました。地域の納豆屋をしていたおかげで、じいちゃんもばあちゃんも地域と自然と向き合って、仕事をしていたのがいまの自分に繋がっているんだと感じています。

 

大学を卒業し、新潟県の長岡市にある、長岡造形大学に行きました。在学中の2004年に起こった中越地震と、2007年に起こった中越沖地震に遭いまして、在学中は被災地域に入り、住民の方と一緒に復興支援活動をしていました。卒業してからは、家具屋とツアーコンダクターなど、まったく復興には関係のない仕事を経験しています。そろそろ福島に戻ろうかなと思っていた頃、3月11日の地震が起こりました。福島に戻るのであれば、少しでも役に立つ人材になりたいと思い、すぐ戻らず、中越でノウハウを学ぶことを選択しました。

 

2011年6月に地域復興支援にて、長岡の集落に入らせていただきました。「地域復興支援」とは中越地震の後にできた活動なんですが、被災地にお金だけではなく人を派遣して復興をするというものです。

 

配属先は、よくテレビで報道されていた、山古志村と長岡駅のあいだにある太田・東山地区という場所です。人口250人くらいの小さな地域で、高齢化が進んでいて50代、60代で若手だといわれるような場所です。そこで、実際に自分たちも土地を借りて畑をやって、地域住民と同じような環境で物事を考えるような活動をしてきました。

 

太田地区にはコミュニティーセンターという支所みたいな場所があり、ここでは高齢者を対象とした事業を年間通してやっていました。たとえば、地域にいる高齢者を車で迎えに行き、コミュニティーセンターでボランティアさんのふるまう料理を食べてもらう。また、和紙を使って花瓶をつくるというワークショップも行われています。

 

ぼくたちはちょっとでも地域を元気にしたくて、さまざまな試行錯誤をしています。住民の方からもいろいろな提案があり、そのなかのひとつで、みんなで一緒に「インディアカ」をやろうというものがありました。「インディアカ」は、バレーボールのボールをバトミントンの羽に変えたスポーツです。それを20代から60代くらいの幅広い世代で、みな一緒にします。いまも取り組みは継続していて、年に二回開かれる大会に向けて、みなさん楽しく練習をしています。

 

しかし、冬の太田地区は深く雪が降り、その頃になるとなかなか活動ができない状況になります。そんななか、1月15日には「賽の神」という行事がありまして、一年間の五穀豊穣を祈ります。この日だけは雪がすごく降っても、村の人々や村に縁のある人が集まってくれます。それに合わせてなにかできないかということで、地域復興支援員で雪の壁に穴を掘り光を入れ、雪明りをイメージした光のモニュメントをつくらせていただきました。

 

このように2012年の3月まで、太田地区で地域復興支援員として働き、4月からは「ふるさと回帰支援センター」に出向になり、内閣府の復興支援型地域社会雇用創造事業の福島県担当になりました。これは被災地に雇用をつくりだすために、地域と向き合って考えることが求められる事業です。

 

ふるさと回帰支援センター;http://www.furusatokaiki.net/

 

簡単に説明しますと、主にインキュベーションとインターンシップのふたつの柱でこの事業をしております。インキュベーションプログラムですが、復興人材の育成と社会的企業の事業支援とが主なプログラムです。福島県では30人の起業家を生み出すことを目標に取り組んでいます。5回コンペを行う予定で、そこでのプレゼンを審査し、起業家として認定された方には上限260万円の起業支援金をお渡しして、起業をサポートしています。

 

もうひとつ、インターンシッププログラムの実施もしております。現在、福島県内では11か所のインターンシップを行っています。いわき(市)では、休耕地活用を目的とした「オリーブプロジェクト」という活動が始まっています。インターンシップを経るにしたがい、加工の段階に進むにはどうするのかというところまで、踏み込んで進めております。

 

また、福島県の県南エリア白河市表郷で行われている農業体験インターンシップもあります。これは学生を対象としたもので、東京の大学に通っているけれども東北のためになにかやりたい、今後自分たちができることをやっていきたい、そんな学生さんたちが集まっています。まずは福島の現状を、農業を通して体感してもらおうと考えています。

 

二本松市の東和で行われているインターンシップは、地域住民の人が研修生となり、まちづくりの進め方や連携の方法を学んでいます。また、商品開発であったり、既存の商品をみなで食べてもらって、商品のブラッシュアップを図っています。会津地域の喜多方で行っているインターンシップでは、首都圏に住む社会人の方に来ていただきます。現地を一泊二日で見て、彼ら一人ひとりにまちづくりのプランをつくってもらい、それを実際に地域の取り組みに落とし込んでいくといった活動を、半年程かけてやっていくプログラムです。

 

 

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このように、ぼくはさまざまな地域に伺って、これからどういうふうに復興していけばいいのかということを、住民のみなさんと一緒に考えています。その地域が何を重んじて何を求めているのか。地域の目線にきちんと立ち、できるかぎり力になれたらいいと思っています。

 

宮本 まずは服部家の歴史からという面白い発表でした。おかげさまで、服部家の歴史を通して、二本松に生きる人たちの生きざまといいますか、歴史が浮かび上がってきました。5年間、納豆にならなくても、ねばりづよく試行錯誤をするおじいちゃん。そして、5年間納豆にならなくても、家族を支え続けた力強いおばあちゃん。いろんなヒントがそこにつまっている気がします。

分科会を振りかえって

 

宮本 分科会全体を振りかえりたいと思います。

 

被災地に関わったきっかけは、さまざまでした。仕事として関わり始めた方もいらっしゃれば、ボランティアで関わった方もいますし、そもそも地元出身であったりされる方もいました。活動内容もさまざまですね、畑をつくったり、まちあるきをしたりと自ら地域に身を投じる方もいれば、人や団体、資源のコーディネートを志向されたり、そうした人たちが集まる場づくりをされているという例もありました。

 

そうしたさまざまなきっかけで進められる復興人材の活動ですが、共通するものとして、被災地の歴史や特性をどのように踏まえていくのか、活かしていくのかポイントになりそうです。

 

最後に、復興人材の育成という話題がありました。長期的な復興を考えたときに、それを支える「ひと」が中心となることは間違いがないと思います。わたしは、復興人材が育てられるのは、被災地であり、被災者の方によって以外にはありえないのではないか、そう言い切れる気さえします。

 

みなさんの活動がこれからも続いていくなかで、さまざまな輪が広がり、表現する言葉が変わっていくこと、顔が増えていくこと、そんなことを期待しながら、また来年もみなさんとお会いできればと思います。本日は大変ありがとうございました。

 

(2012年10月7 日 日本災害復興学会分科会1)

 

 

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