福島レポート

2018.05.12

子どもの甲状腺がんは増えているのか?

基礎知識

福島第一原発事故の影響で、子どもの甲状腺がんは増えているのでしょうか?

「現在福島県(また一部の他地域)で発見されている子どもの甲状腺がんは原発事故による放射線被曝の影響とは考えにくい」というのが、国内外の専門家が一致している見解です。

1986年のチェルノブイリ原発事故の際、飛散した放射性ヨウ素により子どもの甲状腺がんの増加が見られました。このことから、福島第一原発事故後、福島県は、原発事故当時18歳以下だった全県民および2011年内生まれの乳幼児を対象に、2011年10月から現在まで大規模な甲状腺検査を実施しています。

甲状腺がんは進行がとても遅く、一生涯症状が出ないものも多いという特性を持っており、別の原因で亡くなった人を死後解剖したときに多く発見されるがんです。従来の甲状腺がんの罹患率は数万人に1人とされていますが、これは「自ら症状を訴えて受診した患者の割合」で、現在福島で実施されているような「無症状の集団全員を対象に検査して発見される患者の割合」ではありません。

福島県の県民健康調査検討委員会は、福島の甲状腺検査で見つかった甲状腺がんについて、「放射線の影響とは考えにくい」と評価しています。理由は以下の三点です。(1)甲状腺がんのリスクを高めると言われる放射性ヨウ素の放出量が、チェルノブイリ原発事故と比較して約1/7と十分に低かったこと。(2)事故直後2011年3月17日に定められた食品における基準値が厳しく、子どもの内部被曝が低く抑えられたこと。(3)地域別の発見率に大きな差がないこと。

IAEA(国際原子力機関)の2015年のレポートやUNSCEAR(国連科学委員会)の2013年以降の報告、WHOの見解など国際機関の合意した考えも、この見解と一致しています。