チェルノブイリと福島――甲状腺がんをめぐって

チェルノブイリ原発事故では、大量に放出された放射性物質によって、周辺地域の住民が放射線被曝をしました。とりわけ問題となったのは、放射性ヨウ素を多く含んだ牛乳などによる内部被曝でした。

 

放射性ヨウ素は甲状腺に集まりやすい性質があります。甲状腺は甲状腺ホルモンを分泌する臓器で、甲状腺ホルモンがヨウ素から合成されるためです。

 

チェルノブイリ原発事故の後、当時の政府の状況では、放射性ヨウ素によって汚染された食べものや飲みものに対し、十分な摂取制限や流通制限ができませんでした。流通制限をかけても、小さな農家も含めたすべての農家に、これを徹底することは難しかったといわれています。

 

また、たとえば原乳の基準値は3700Bq/kgとしたものの、この原乳を原料とした粉ミルクには基準値がなく、基準値を超過した原乳は粉ミルクとして市場に出回ることとなりました。これらを大量に摂取した周辺地域の子どもたちを中心に、事故の数年後から甲状腺がんが多く発見されるようにました。

 

それに対して日本では、原発事故直後に、放射性物質について世界基準に基づく暫定基準値を設定しました。さらに後には、これを世界基準の約1/10と厳しい基準に再設定し、基準を上回る食品や水について流通制限、摂取制限をかけました。

 

しかし、原発事故直後からの数日間で、水道水や空気から、甲状腺がんのリスクを高める可能性のある放射性ヨウ素を取り込んだ可能性があることが示唆されてきました。

 

UNSCEAR(国連科学委員会)の2016年の白書では、この放射性ヨウ素の初期被曝を高めに見積もった上で、「福島で発見されている子どもの甲状腺がんは被曝由来とは考えにくい」とされています。

 

近年、実測値と整合させた緻密なシミュレーションが行われています。福島の子どもの甲状腺の初期被曝線量は、UNSCEARによる見積もりの7~69%だったことが明らかになりつつあります。このことにより、福島で見つかっている子どもの甲状腺がんが被曝由来ではないというデータの裏づけはさらに強化されました。

 

 

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