福島レポート

2018.07.23

日本初のサッカーナショナルトレセン――Jヴィレッジが4.20全面再開

遠藤乃亜 / ライター

福島の暮らし

「Jヴィレッジ」は福島県の楢葉町と広野町にまたがる大きな施設です。日本サッカー界初の「ナショナルトレーニングセンター」として1997年に営業開始しました。2011年の東京電力福島第一原発事故の後は、廃炉作業員のための駐車場などに使われ、長らく休止していました。そのJヴィレッジが2019年4月20日に全面再開しました。「福島復興のシンボル」の新たなスタートです。

ナショナルトレーニングセンターは、選手の強化活動などに利用するため、日本サッカー協会が指定します。現在全国で3か所が指定されており、Jヴィレッジはその先陣を切ってオープンしました。

Jヴィレッジのある広野町や楢葉町は、比較的温暖で冬でも雪が少ないことから、年間を通して施設の利用ができます。 原発事故が起こる前は、W杯サッカー日本代表のトレーニングキャンプや大規模な大会、全国のサッカー少年の合宿にも活用されました。Jヴィレッジで合宿した思い出を自慢にしているサッカー少年も少なくありませんでした。

Jヴィレッジは元々、東京電力が「原発立地地域への貢献」として造成し、福島県や東京電力などが出資する会社が運営してきました。そうした経緯から、原発事故直後から6年間にわたって、廃炉の後方拠点としての役割を果たしました。人気漫画「いちえふ 福島第一原子力発電所労働記」(竜田一人著)で紹介されていますが、事故直後は、作業員が集合したり移動準備したりする場所として使われました。

原発構内の施設整備が進んだことから、2017年4月以降、営業再開に向けてピッチ(グラウンドの競技スペース)の芝張りや、宿泊施設整備が進みました。2018年7月28日に一部再開され、天然芝ピッチ5面と人工芝ピッチ1面でプレーが可能となりました。国内初の「全天候型練習場」やホテル、レストランなどが順次営業を始めました。

東日本大震災と原発事故によって、人々の生活や産業は大きな変化を余儀なくされました。回復や新たな営みは、簡単に進むものではありません。それでも、福島の人たちは厳しい現実に正面から向き合い、一歩一歩着実に前に進んでいます。この数年間で何度もJヴィレッジに車を止め、廃炉関係企業の事務所を訪れました。当時は「大きな工事現場周辺」にしか見えず、元々サッカー施設だったとは思えませんでした。そのJヴィレッジがようやく全面再開します。この大きな前進が、福島の人たちを元気づけることを期待しています。

また、Jヴィレッジ全面再開と同時に、浜通り地方と呼ばれる福島県沿岸部を南北につなぐJR常磐線には、新たな駅「Jヴィレッジ駅」が設置されました。