福島第一原発事故後の帰還者の心理的苦痛

東京電力福島第一原子力発電所の事故の際、福島県内の原発周辺地域に避難指示が出されました。避難指示は段階的に解除され、帰還して生活を再開する住民もいます。

 

福島県立医科大学・村上道夫准教授らの研究グループが、帰還者の「心理的苦痛」(将来への不安や気分の落ち込みなど)について調査しました。その結果、重篤な心理的苦痛を抱える帰還者の割合は、平時の全国平均の2倍を超えることが明らかになりました。

 

研究グループは、避難指示が出された区域を含む9市町村(田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、葛尾村、飯舘村)の20~79歳の住民計2000人を対象に、2018年1月にアンケートを実施しました。アンケートは郵送で行い、対象者の31%にあたる625人が回答しました。

 

調査では、住民の心理的苦痛を示す国際的な指標「K6」を使いました。K6では、「絶望的だと感じましたか」などの6つの質問に対する回答を数値化・集計し、値が高いほど心理的苦痛が大きいとされます。K6で24点中10点以上の心理的苦痛がある場合、心配や不安感が継続している可能性があるとされます。また13点以上では、社会生活に著しい困難が生じるほど深刻な精神的不調をきたしている可能性もあります。

 

調査の結果、K6で13点以上だったのは帰還者した人で6.5%、避難を継続している人で11.4%でした。過去の研究で、国内平均(平常時)で13点以上を示す人の割合は3%ほどとされています。また、帰還した人で16.8%、避難を継続している人で25.5%が、K6で10点以上でした(全国平均10.3%)。

 

この調査で、避難後に帰還した住民の場合も、避難を継続する住民の場合も、心理的苦痛の度合いは全国平均を大きく上回っていることがわかりました。

 

研究グループは「帰還した方でも避難継続している方でも、心理的苦痛を抱える人の割合は、全国値より高かった。避難している方の心理的苦痛へのケアと同時に、帰還した方へのケアも重要である。帰還した方には高齢者が多く、生活環境の変化による影響も受けやすい。それぞれの課題にあわせた、長期にわたる支援の必要がある」と指摘しています。

 

Lower Psychological Distress Levels among Returnees Compared with Evacuees after the Fukushima Nuclear Accident

 

 

 

 

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