福島レポート

2019.06.03

福島で見つかる甲状腺がんは放射線被ばくとの関連がない

基礎知識

東京電力福島第一原子力発電所の事故の後、福島県は、原発事故当時18歳以下だった全県民などを対象に、2011年10月から現在まで、超音波を使った甲状腺スクリーニング検査(甲状腺がんの可能性の有無をふるい分ける検査。以下「甲状腺検査」)を実施しています。

チェルノブイリ原発の周辺地域で、原発事故後、数年経ってから子どもの甲状腺がんが増加したという過去の知見から、福島における甲状腺検査の2巡目以降(「本格検査」)は、原発事故による放射線被ばくの影響があるかどうかを見ることができるとされます。

2019年6月3日に、甲状腺検査の結果やあり方などについて議論する専門家会合である甲状腺検査評価部会が開かれ、「甲状腺検査本格検査(検査2回目)に発見された甲状腺がんと放射線被ばくの間の関連は認められない」とされました。

甲状腺検査では、症状が出ていない甲状腺がんおよび甲状腺がんの疑いのある人を見つけています。

甲状腺がんのほとんどは、一生涯、症状が出なかったり、進行がとても遅かったりする特徴を持っており、別の原因で亡くなった人を死後解剖したときに多く発見されるがんです。

そのため、「なんらかの症状を訴えて受診し、診断される患者の割合」と「無症状の集団全員を対象に検査して発見される患者の割合」とに大きな差が出ます。

従来、甲状腺がんの罹患率は数万人に1人とされていましたが、これは「なんらかの症状を訴えて受診し、診断される患者の割合」です。一方、福島の甲状腺検査では「無症状の集団全員を対象に検査して発見される患者の割合」がわかります。

これほど大規模な甲状腺検査は、原発事故後の福島県で初めて行われているため、原発事故前の全国の罹患率と比較することはできません。

2016年に、福島県の県民健康調査検討委員会は、1巡目の結果を受けて中間とりまとめを出し、福島の甲状腺検査で見つかった甲状腺がんについて、「放射線の影響とは考えにくい」と評価しています。

今回の評価部会では、UNSCEAR(原子放射線に関する国連科学委員会)の推計した甲状腺被ばく線量を用いて、甲状腺がんの発見率と放射線被ばく線量との関連を解析しました。その結果、甲状腺がんの発見率と放射線被ばく線量との関連は見られませんでした。

参考リンク

・第13回甲状腺検査評価部会資料

https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/kenkocyosa-kentoiinkai-b13.html

・福島の甲状腺がん「放射線影響とは考えられない」――甲状腺検査2巡目の解析

https://synodos.jp/fukushima_report/22342

・甲状腺検査に関する中間とりまとめ

https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/174220.pdf