帰還した住民の外部被ばく線量は?――帰還者の被ばく量で健康影響の心配なし

東京電力福島第一原子力発電所の事故で避難指示が出された福島県南相馬市小高区は、2016年7月、一部地域を除き避難指示が解除されました。現在、南相馬市小高区に帰還し、生活を再開した人々がいます。

 

南相馬市立総合病院などの研究チームは、南相馬市小高区に帰還した住民一人ひとりの外部被ばく線量の値を集計し、解析しました。その結果、帰還した住民の90%以上の追加外部被ばく線量は、年間1ミリシーベルトを下回っていました。

 

南相馬市は、原発事故後に「ガラスバッジ」という個人線量計を配布し、住民の外部被ばく線量を測定しました。研究チームは、原発事故当時に小高区に住んでいた住民378人の2017年の外部被ばく線量データを対象に調査を行いました。同時に、行動記録(「いつ、どこに、どれくらいの時間滞在していたか」)のアンケート調査を実施し、外出時にガラスバッジを持っていなかった人を除く174人のデータを解析しました。

 

自然界からもともと受ける放射線の影響を差し引いた追加外部被ばく線量が、年間1ミリシーベルトを下回った帰還者の割合は93%で、南相馬市の別の地区の住民の割合(92.8%)とほぼ同じでした。また、帰還した住民の追加外部被ばく線量で最大だったのは、年間6.8ミリシーベルトでした。

 

原子放射線に関する国連科学委員会(UNSCEAR)は、「被ばく線量が100ミリシーベルト以下の場合、明らかな健康影響は確認されない」と報告しています。したがって、今回の調査結果では、避難指示が出た南相馬市小高区に帰還した住民の外部被ばく線量は、健康影響を心配するレベルではないことがわかりました。

 

東電福島第一原発事故による避難指示が出た地域に帰還した住民が、日常生活でどの程度外部被ばくをしているのかを示す調査や論文はあまりありません。今回の調査結果は、帰還した住民に必要な支援やリスクコミュニケーションのあり方に役立つことが期待できます。

 

参考

・“Low dose from external radiation among returning residents to the former evacuation zone in Minamisoma City, Fukushima Prefecture.”

・Shuhei Nomura, Tomoyoshi Oikawa, and Masaharu Tsubokura

Journal of Radiation Protection (2019)

 

 

 

 

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