福島県産の食品への住民の不安は?

東京電力福島第一原発事故の直後、放射線の内部被ばくを避けるため、一部の農林水産物の出荷が制限されました。その後、一定期間国の放射能濃度の基準値(100ベクレル/kg)を下回るなど、安全が確認された食品について、出荷制限は解除されています。

 

2019年2~3月に行われた厚生労働省の調査(対象は、福島県を含む全国13都道府県15地域)によると、食品中の放射性物質からの放射線被ばくは、食品の放射能濃度の基準値を決めた際の根拠である年間1ミリシーベルトの0.1%程度であることがわかっています。このことからも、福島県で市場に流通している地元の農林水産物は、他県と同様に安全であるといえます。

 

では、福島に住む人の福島県産食品の放射能についての不安は、原発事故後、どのように変化してきたのでしょうか?

 

福島県立医科大学の竹林由武氏や南相馬市立総合病院の坪倉正治氏らの研究グループが、福島県南相馬市の小中学生の子どもを育てる保護者を対象に、福島県産の食品を避けているかどうかをアンケート調査し、分析しました。その結果、原発事故から5年後に、福島県産の食品を避ける人の割合は大幅に減少したことがわかりました。

 

原発事故後、2015年までは、福島県産の食品を避けている傾向の改善はわずかでした(2013~2015年で4~15%の改善)が、原発事故から5年後の2016年に、大幅に改善しました(2015~2016年で15~27%の改善)。

 

避難指示が解除されたり、避難指示が解除された地域で農業が再開したりしたタイミングと、福島県産食品を避ける人の割合が大きく減った時期とが重なっていることがわかります。

 

また、福島県産の食品を避ける傾向を、原発事故後から年を追って調べたところ、原発事故後初期から不安があまり高くなく、その後さらに不安が減っていく「低不安改善型」、原発事故後初期の不安は高かったものの、その後不安が減っていく「高不安改善型」、そして原発事故後初期の不安が高く、その後も不安が続く「高不安維持型」の3つのパターンに分かれました。

 

今回調査の対象とされたキノコ、牛乳、野菜・果物、肉、魚、米のうち、キノコ、魚、米では、「高不安維持型」の割合が高いことがわかりました。また、原発事故当時に住んでいた地域の空間線量率が高かった人ほど、「高不安維持型」の割合が高い傾向にあることがわかりました。

 

研究グループは、「震災後継続的に実施された(また現在もされている)除染活動や放射線に対するリスクコミュニケーション活動に加えて、避難指示解除や営農再開等の行政的な意思決定が、福島県産食品を回避する傾向の改善に寄与している可能性がある」としています。

 

また、「高不安維持型」については、福島県産の食品を回避する行動を無理に変えようとするのではなく、地域社会で孤立せずに暮らせるようなサポートが必要であるとコメントしています。

 

参考

・Yoshitake Takebayashi, Michio Murakami, Shuhei Nomura, Tomoyoshi Oikawa, MasaharuTsubokura

・The trajectories of local food avoidance after the Fukushima Daiichi nuclear plant disaster: A five-year prospective cohort study  

・International Journal of Disaster Risk Reduction (2020)

https://doi.org/10.1016/j.ijdrr.2020.101513

・「食品中の放射性物質の調査結果(平成31年2~3月分)」(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000205937_00006.html

 

 

 

 

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