情熱という種火に、経営と科学という薪をくべ続ける――『小さくて強い農業をつくる』(他)

『「感染症パニック」を防げ! リスク・コミュニケーション入門』(光文社新書)/岩田健太郎

 

感染症には独特の恐怖があります。その大きな理由の一つは目に見えないからでしょう。ライオンやワニに襲われた場合、私たちは「ああ、これはピンチだ!」とすぐ感じることができます。しかし、目に見えない微生物を相手にしてしまうと、そう簡単に判断することはできません。

 

その得体のしれない恐怖感は、時に過剰なパニックを生むこともあります。一方で、まぁ大丈夫だろうと、リスクに対して不感症になってしまうことも。そんな時、専門家の言葉は大きな意味を持ちます。

 

では、専門家は、感染症にまつわるリスクをどのように検討し、「どれくらい恐れろ」と適切なリスクを一般の人に伝えればいいのでしょうか。今回紹介する『「感染症パニック」を防げ』は、「感染症界のエース」との呼び声高い医師・岩田健太郎氏が「リスク・コミュニケーション」の見地から、その難問に答えようと筆を取ったものです。

 

専門家向けの本と割り切って、手に取らないのは勿体ないほど、本書はリスクを考える上での様々な示唆に溢れています。たとえば、感染症のリスクを見極める場合、「起きた時の影響」と「起きる可能性」を分ける必要性があります。

 

たとえば、エボラ出血熱は致死率が60~90%の起きてしまうと大変な病気です。しかし、エボラ・ウイルスの感染は体液との接触がメインのため、インフルエンザなどと比べはるかに感染率は低いのです。

 

この場合、この両者を混同してしまい、「エボラは罹ったら大変な病気だから、大流行する」と捉えてしまうのはリスクの見極めを失敗しています。こう書くと当たり前のことのように思えますが、リスクをごちゃごちゃにして「わー!大変だ!」と必要以上に恐がってしまうことは、感染症だけではなく様々な場面で起こっているはずです。

 

本書では、実際の感染症を解説し「どれくらい恐れるのか」を検証するだけではなく、「どのように伝えるのか」のノウハウも詰め込まれています。感染症の専門家かつ、前線で対策にあたる医師だから書けたであろう注目の一冊です。(評者・山本菜々子)

 

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