データジャーナリズムで常識を覆す

最近よく耳にする「データジャーナリズム」。データを駆使し、今までの常識を覆すことができるのか。日本でいち早くデータジャーナリズムとりくんでいる通信社システムエンジニアの赤倉優蔵氏、ジャーナリストで前ニコニコニュース編集長の亀松太郎氏、法政大学社会学部メディア社会学科准教授の藤代裕之氏が、これからの「データジャーナリズム」の可能性について語り合う。(構成/山本菜々子)

 

 

データジャーナリズムとは

 

藤代 「データジャーナリズムで常識を覆す」というテーマでディスカッションを始めたいとおもいます。今回は、日本でいち早くデータジャーナリズムにとりくんでいる赤倉さんと、前ニコニコニュース編集長の亀松さんのお二人にお話を伺います。

 

日本ジャーナリスト教育センターでは、今年の5月にいわき市で「ジャーナリストキャンプ2013」を行いました。「震災後の福島に生きる」をテーマに、全国から集まった記者15名と5名のデスクが2泊3日で取材をしました。その原稿はダイヤモンド・オンラインにて現在発表しております(http://diamond.jp/category/s-fukushimajournalist)。

 

お二人は今回、デスクとして参加されましたが、特に赤倉さんはデータジャーナリズムのチームを率い、キャンプに参加しました。

 

まずは、「データジャーナリズム」がなんであるのか知らないかたもいらっしゃるとおもうので、簡単な発表を赤倉さんからしていただければとおもいます。

 

赤倉 ぼくはエンジニアの仕事をしています。いわゆる「ジャーナリスト」という立ち位置とは違い、通信社で記者と編集者をサポートするような仕事をしています。伝統的な「ジャーナリズム」が人と向き合う取材手法であるならば、「データジャーナリズム」は、データと向き合う取材手法です。

 

公開されているデータを使い、「常識を覆す」ことができるのが、データジャーナリズムの醍醐味です。日本ではまだまだ浸透していませんが、海外ではここ1、2年で急速に普及し、さまざまな実績を上げています。

 

「常識を覆す」と言っていますが、具体的にデータジャーナリズムになにができるのか。ぼくは3つのことが可能であると考えています。まず、データからニュースを発見するということです。二つ目はデータでニュースを検証する。三つ目はデータをわかりやすく可視化するということ。ニュースを発見し、検証し、分かり易く伝えるということが、データジャーナリズムのプロセスであると言えます。

 

データジャーナリズムの大きな特徴としては、誰もが挑戦できるというところにあります。新聞社にもテレビ局にも属していない一般の人が取材にいくとなるとかなり高いハードルがありますし、発信するにしても新聞やテレビといったインフラが必要になってきます。しかし、データジャーナリズムは、誰でも閲覧できるデータを使い、Webサイトに投稿するなど、比較的誰もが参加しやすいものになっています。もちろん技術的なハードルは高いですが、それさえ超えれば誰でも可能性が開かれているんです。

 

また、読者を巻き込む力があります。データジャーナリズムでは読者を巻き込む工夫をかなり強く意識しているんです。そして、チームで取り組むことも特徴として上げられます。データを扱うというのはITを扱うというのとイコールです。これまでジャーナリストの人達が培ってきたスキルセットだけでは太刀打ちできない部分がどうしてもあるので、複数の人が協力して取り組む必要があります。海外のメディアでもエンジニアやアナリストを採用したり、外部と提携したりしながら進めています。

 

 

赤倉氏

赤倉氏

 

 

藤代 実際、ジャーナリストキャンプに参加してみてどのような感想をもちましたか。

 

赤倉 今回は、データに反映されたファクトから、新たなニュースを見つけることに挑戦しました。キャンプ中では「風評被害は無いのでは」ということをデータで証明することを目標にしました。しかし、なかなか書き上げられずにいます。それはなぜか。やはりデータジャーナリズムはデータありきなので、材料が足りないと、常識を覆せないということになります。今はまだ材料が集まっておらず、執筆には至らないという感じです。

 

とはいえ、収穫もいくつかありました。まずは、チームで取り組むことが有効だとわかったことです。データだけではなにを表わしているのかがわからないので、どのように解釈すればいいのか導いてくれるアナリストの力が必要でした。

 

また、テクニカルな話ですが、Googleのツールは有効に使えます。Googleはデータジャーナリズムに力を入れており、さまざまなツールがそろっています。一方で、日本でのオープンデータが進んでいないことがわかりました。省庁や自治体で取り組みが進んでいますが、まだまだ使えないというのが現状です。

 

そして、データジャーナリズムの可能性も感じました。ニュースで言われていることは本当なのか、レッテルは存在するのかということを、データを利用して検証していくと面白いのではと感じました。

 

藤代 ありがとうございます。データジャーナリズムのことがなんとなくわかっていただけたかとおもいます。

 

議論に入る前に、ある動画をみていただきたいとおもいます。これは、イギリスのガーディアン(The Guardian)という新聞社のCMです。データジャーナリズムの検証のプロセスには、インターネットや、ソーシャルメディアが大きく関わっているのですが、そのことを面白く表現しているCMだとおもいます。

 

 

 

 

ご覧いただいたのは、3匹の子ブタをモチーフにしたものです。イギリスらしいシニカルなCMですね。「オオカミが息で子ブタの家を壊した」ということになっていますが、監視カメラの映像を基に、本当に息で家を吹き飛ばすことができたのか検証しています。さらにそれが、ソーシャルメディアで議論され、思わぬ方向に展開していきますよね。データジャーナリズムがどういうものかといった雰囲気が伝わってくるとおもいます。

 

 

 

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