『いちから聞きたい放射線のほんとう』など――今週のシノドスエディターズチョイス

『ヒト、動物に会う コバヤシ教授の動物行動学』(新潮新書)小林朋道

 

いまとなってはなにがどうしてそんな行動をとっていたのかわからないが、幼い頃に、アリの行列をジーっと眺めたり(往々にしてその後、いま振り返るとその残酷さに戦慄が走るようなことをしたりする)、ビビりながらセミの亡骸をつついてみたりしていた(気がする)。

 

筆者の小林朋道氏(鳥取環境大学教授)は、そんな少年の気持ちをいつまでも忘れずに、動物行動学者として、ありとあらゆる動物たち(カラスからヘビからイヌからトンビまで!)を、観察し、洞察する。本書はそうした動物たちの行動を綴った11のエッセイが収録されている。

 

例えばこんな話がある。「ブル」と名付けられたトカゲの一種であるカナヘビの観察を、初夏の休日、午後3時頃からはじめ、夜の8時過ぎまで行うコバヤシ教授。ブルが逃げ出さないように距離を取りながら、ブルが動けば教授も動き、ブルが止まれば教授も止まる……。その日、移動した距離は、だいたい10メートル程度。

 

カナヘビだって夜になればもちろん寝る。コバヤシ教授も夜になれば夕食を食べる。しかしブルはなかなか寝てくれない。コバヤシ教授は“石や倒木の下の穴”で寝るだろうとイメージしているのだけれど、期待通りの行動はしない。むしろとつぜんクリの木に登り始める。しかも木の幹の隙間で気持ちよさそうに目を閉じてやすみはじめるではないか!

 

いやいや、このあと地面に降りて、寝床へ向かうに違いない。こうなりゃ意地だ、最後まで付き合ってやろう。……結局、ブルはそのまま夜を過ごした。ああ、カナヘビだって暑い夜は風が当たる場所で寝たいよな。俺もハンモックで寝たくなったよ。

 

コバヤシ教授の、動物たちに対する眼差しはとても優しい。まるで友だちのことを紹介するように動物たちのことを語ってくれる。だからといって「ほのぼの物語」で読者をほっこりさせてくれるだけではない。動物たちがどのように生きているのか、種別はもちろん、ヒトが個性と呼ぶような、一匹一匹の特徴まで、観察のあり方、洞察、これまでに得られている知見を紹介してくれる。自然を見るときの重要な眼差しも教えててくれるのだ。

 

さくさくと読み進められる本だ。まずは気軽に、暇つぶしの気分で手に取って欲しい。だが、そこから得られる知見とコバヤシ教授の眼差しは、何気ない日常を少し新鮮に感じさせる。それはもしかしたらちょっとだけ懐かしいものであり、意外と大切なもののような気がする。(カネコ)

 

ヒト、動物に会う: コバヤシ教授の動物行動学 (新潮新書)

ヒト、動物に会う: コバヤシ教授の動物行動学 (新潮新書)書籍

作者小林 朋道

発行新潮社

発売日2014年2月15日

カテゴリー新書

ページ数207

ISBN4106105578

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