カツラ、シマウマ、大岡越前、と憲法の話――『テレビが伝えない憲法の話』(木村草太)ほか

『テレビが伝えない憲法の話』(PHP新書)/木村草太

 

「憲法」という響きは、重苦しく退屈な感じがする。改憲賛成・反対の議論もワンパターンに感じるし、(もちろん、大事なこととは分かっているんだけど)なんだかウンザリだなぁと思っている人は意外と多いのではないだろうか。

 

そんなあなたにおススメしたいのが『テレビが伝えない憲法の話』だ。「憲法」をテーマにした本は一見つまらなそうに思える。しかし、本書には、サンモール洋光台・カツラ・床につくほどのネクタイ・大岡越前・中島らも『ガダラの豚』・イケメンの大学院生・シマウマ・『雨月物語』といった様々な比喩が登場し、飽きることなく最後まで読むことができる。

 

また、「テレビが伝えない○○の話」というタイトルだからといって、様々な利権がからんで本当のことがテレビでは報道されない云々、といった陰謀論の本ではないので安心して欲しい。憲法の味わい深さや、内容への解説、憲法の活用法など議論を淡々と確実に積み上げている。

 

たとえば、憲法9条をめぐる第三章「憲法9条とシマウマの檻」では、国際法や国連憲章の枠組みから9条を見直す。今まで交わされてきた議論の多くは「自衛隊は違憲であるから即時解散させろ」とか、「戦力を持つことで普通の国になるのだ」といった、「分かりやすい」意見が多い。しかし、本当に改正を論じるのであれば、「分かりにくい」面と向き合い考えなければいけないと木村氏は説く。

 

 

「『分かりやすい』議論に流れるのは、これまでの国際平和の枠組み作りの努力に対し、あまりに失礼というものだろう」(本文より)

 

 

本書のねらい通り、国際法を理解した前と後では、9条に対する考えが一段深まったように感じる。

 

そのほかにも、憲法96条や非嫡出子相続まで、私たちが日常的に目にする憲法をめぐるさまざまな問題が網羅されている。改憲の議論にウンザリしていた人はぜひ本書を手に取ってほしい。自分なりに憲法を考える有効な材料になるだろう。(評者・山本菜々子)

 

 

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.277 

・坂口緑「生涯学習論にたどり着くまで──人はいかにして市民になるのか」
・平井和也「ジョージ・フロイド殺害事件から考える米国の人種差別問題」
・野村浩子「日本の女性リーダーたち」
・安達智史「「特殊」を通じて「普遍」を実現する現代イギリスの若者ムスリム」
・太田紘史「道徳脳の科学と哲学」
・石川義正「「少女たちは存在しない」のか?──現代日本「動物」文学案内(2)」