ASEAN会議最大課題の南シナ海領有権問題――連携形成とアメリカ・中国の思惑

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日本とアジア多国間安保

 

集団的自衛権の行使に向けて安全保障の分野でイニシアティブをとる安倍政権の日本も、この多数派工作のトレンドに関与してきている。日本発の地域秩序発表の場所として安倍首相が選んだのは、シンガポールで毎年5月末に開かれる「アジア安全保障会議」であった。同国の最高級ホテルの一つであるシャングリラホテルで開催されることから『シャングリラ・ダイアログ』との別称を持つ同会合は、国防・防衛大臣や軍幹部、安全保障専門家が集い、地域安全保障問題などを議論する「トラック1.5」の制度である。今年は日本の首相が初めて参加することもあり、安倍首相の基調講演は開催以前から注目されていた。

 

その演説も中国を強く意識した多数派工作的な意味合いが強い。特に「法の支配」や「国際法」に頻繁に言及しているのが大きな特徴で、海洋における法の支配を1)国際法に基づく主張の作成・明白化、2)主張を推進する試みとして武力の行使や威圧を自粛、3)紛争の平和的手段による解決を追求、という3つの原則から強調した。そして、既成事実を積み重ねることで現状変更を固めることは上記三原則に反し、強く非難されるべきだとし、中国を強く意識した論調となっている。

 

また、国際法について、特定の国や集団によって作られたのではなく人類の叡智の産物であるとの認識を示し、国際法が米欧のイニシアティブによって構築され、新興国の意向が反映されていないとする中国などの反論に対して楔を打っている。これはこれまで示してきたように米国やベトナム、フィリピンの意向と軌を一にする。

 

さらに安倍首相はアジア太平洋の平和、安全、繁栄のために努力を惜しまないとする積極的平和主義を強調、地域の安定への貢献として第一に米国との協力、次いで豪印やASEANとの協力関係、特に後者においてはフィリピン、ベトナム、インドネシアへの軍備提供に言及している。ここには中国と係争を抱えないカンボジア、ミャンマー、ラオス、タイそして韓国については全く言及されていないなど、安倍アジア外交の多数派工作、仲間作りの意識がみられる。現に言及された国々からは集団的自衛権行使に向けた動きを支持する声が相次ぐなど、日本にとって「仲間意識」形成外交の効果は早速に表れた。

 

安倍首相はさらに「地域の政治・安全保障を扱うプレミア・フォーラム」として、EASの充実を提案している。その具体策として「パーマネントな委員会」を発足させて、EASの活性化に加え、ARF、ADMM+との重層的機能強化のため、ロードマップの策定を示唆している。

 

来年10周年を迎え、日本がその設立に最も貢献したEASを特に発展させ、中国に他の国々と圧力をより強固にかつ効果的にかける組織にしたい考えだが、この提案が受け入れられるかどうかは、圧力の対象である中国が受け入れるかどうかによる。その意味でEASが安保のプレミアム・フォーラムとして機能する上で中国にとってもメリットがある点を日本は示す必要があるであろう。つまり大国による多数派工作機能を超えて、中国がその対話を通じてより多国間協力に関与する意思を持てるような機能を、EASに付与させることができるか、が重要なカギとなる。

 

 

終わりに

 

アジアの安保制度で新たな火種となりかねないのが、中国が東シナ海に加え、南シナ海においても防空識別圏を設定するかどうかの問題である。

 

中国は自らが実効支配するパラセル諸島を囲む空域を軸に、南シナ海のほぼ全域を覆う空域近くまで防空圏を拡大することを検討していると報じられている。この動きは北東アジアと東南アジアにおける安保議題の更なるオーバーラップ化をもたらし、ますます大国の関与を強め、多数派工作活動の激化をもたらす。アジア多国間制度が中小国の草刈り場となるのかどうか、8月10日のARF、秋に同じくミャンマーで開催されるEASでの中国の自制の度合いに注目が集まる。

 

サムネイル「File:ASEAN Flags.jpg」Gunawan Kartapranata

http://commons.wikimedia.org/wiki/File:ASEAN_Flags.jpg

 

 

 

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