報告4 北朝鮮の「並進路線」と新たな経済政策

軍備よりも経済建設が重要

 

環日本海経済研究所の三村です。今日は北朝鮮の経済の話をしたいと思います。もちろん北朝鮮の経済を勉強するだけで知恵の輪を解くことはできません。かちゃかちゃと頑張っているあいだに、日中関係だとか、米中関係だとか、いろいろなものが変わっていって、迷路に迷い込んでしまう……というのが私の10数年の実感です。

 

北朝鮮は、2013年3月31日、「朝鮮労働党中央委員会2013年3月全員会議」で、経済建設と核武力建設の並進路線を提示しました。これは日本、そしてアメリカにとっては、「やはり核を放棄しないのか、核ドクトリンまで発表して、いっぱしの核保有国気取りじゃないか、けしからん」という、非常に評判の悪い政策です。中国も、「あれだけ反対したのに、やってくれちゃったなあ」と思っている。そういう意味では中朝関係も悪化しているということですが、その点は分かりきっていることですので、ここでは申し上げません。今日は、一体北朝鮮は何をしようとしているのかを話したいと思っています。

 

1960年代、北朝鮮は軍事建設と経済建設の並進路線をやっています。ですから今回の並進路線は2回目のものだと北朝鮮は言っています。1960年代の1回目の並進路線は「キューバ危機やベトナム戦争などによって第三次世界大戦がまもなく始まるかもしれない。だからこそいまは経済建設を後回しにして、軍備に力を入れなくてはいけない」というものでした。

 

しかし今回の並進路線は経済建設が前に出ています。北朝鮮の学者と交流をしていても、今回は経済建設に重点が置かれていると説明されます。というのも、2013年3月31日の「朝鮮労働党中央委員会2013年3月全員会議」で金正恩第1書記は、経済発展が重視であり、国民の生活が豊かになることが重要な目標だ。そして核兵器を持つことで、通常兵器を若干削減できるために、経済政策にプラスになるだろう、と言っているんですね。

 

 

核兵器があるから、アメリカも南も黙っている

 

それでは北朝鮮内政にとって核兵器を持つ意味はどこにあるのか。まず核拡散防止条約(NPT)によって、第二次世界大戦で勝利した5か国以外が核兵器を持つことは悪いことになっていることを押さえておいて下さい。それでも北朝鮮にとって核兵器は重要な意味を持つ。というのも北朝鮮は、アメリカと対立した核を持たないイラクやリビアといった国は体制が崩壊し、核を持っている北朝鮮はアメリカから攻撃を受けることがなかったと国内に言っているんです。

 

また世界にいくつかある分断国家の中で、代表格は中国と南北朝鮮だと思いますが、中国が台湾に吸収統一されることはありえないが、南北朝鮮は経済の強い大韓民国によって朝鮮半島統一がありえるかもしれないと北朝鮮は考えています。北朝鮮の政権が最も恐れるのは、韓国に吸収合併されることです。そういう意味で、南に対しても力を発揮できる核兵器は重要である、と国内に言っています。

 

実際に南北で戦争が起きれば、北朝鮮が勝つことはないでしょう。ただ北朝鮮は、自国が倒れるときに、自分だけが倒れるような「優しい」国ではないと思います。最後には「南の連中、お前たちがそこまでやるなら一緒に亡びましょう」ということで、ソウルを火の海にして終わると思うんですね。それは韓国も知っているし、またその能力も、十分ではないにせよあることも分かっている。どこまで火の海にできるかは分かりませんが、軍事境界線から30キロの範囲は戦闘が始まったら24時間以内の生存率が5%になると言われているくらいの軍事力はあるんです。

 

とはいえ、国内政治的には核があるから南も黙っているんだよという言い方をすることで、通常兵器にまわすお金を減らして、国内経済に向けて行こう、というのがいまの金正恩政権の経済政策の要となっています。【次ページにつづく】

 

 

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