地殻変動する東アジアと日本の役割

新潟県立大学は2015年4月に大学院国際地域学研究科(研究科長・山本吉宣)を開設することを記念して、シンポジウム「地殻変動する東アジアと日本の役割」を昨年12月に開催した。

 

「戦後70年」となる2015年、これから東アジアはどのように変わりゆくのか?

 

猪口孝(新潟県立大学学長)、天児慧(早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授)、信田智人(国際大学副学長)、三村光弘(環日本海経済研究所調査研究部長)、袴田茂樹(新潟県立大学政策研究センター教授)、浅羽祐樹(新潟県立大学政策研究センター准教授)といった6名の研究者が、各々のフィールドから、東アジア、そして国際政治のいまを読み解き、これからを展望した。

 

新潟県立大学 大学院国際地域学研究科開設記念シンポジウム「地殻変動する東アジアと日本の役割」より(構成/金子昂)

 

 

報告1 現今の国際体制の長期的俯瞰とミクロ的観察――2012~2014年の日中関係から見る/猪口孝

 

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こんにちは、新潟県立大学の猪口孝です。今日は「現今の国際体制の長期的俯瞰とミクロ的観察――2012~2014年の日中関係から見る」というタイトルで、東アジア、そして国際政治がどのように動いているのかを簡単にお話したいと思います。これは1938年から2014年までに戦争で亡くなった人の数を見ると、国際政治の動向が分かるというおおざっぱな話です。

 

まず1938年から45年の第二次世界大戦ですが、この8年間で4000万人が死んでいます。つまり毎年500万人の死者がでているということです。次に冷戦期の1945年から89年。これは第二世界大戦に比べると、ぐっと減って年平均10万人が死んでいる。とはいえ、44年もありますから、相当な人数が死んでしまっているわけですね。そして1989年から2014年、ここでは年平均1万人が死んでいます。これらはすべて国家間戦争のみの死者であって、内戦や紛争などの死者は除いています。1945年と1989年はこの意味で画期的な年であったわけです。

 

さて、実はこの死者の数を東アジアだけに絞ってみると変化はより激しくなります。東アジアでは、1980年代までに朝鮮戦争(1950-1953年)やベトナム戦争(1965-1973年)、中越戦争(1979年)などいろいろ起きていますが、その後、1980年から2014年にかけての戦死者は年平均ゼロという研究があるんですよ。⇒ つづきはこちらから

 

 

報告2 習近平政権と大国外交、日中関係/天児慧

 

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こんにちは、早稲田大学国際学術院アジア太平洋研究科の天児です。あまり時間もありませんから駆け足でお話します。

 

2010年の漁船衝突事故、そして2012年の尖閣諸島国有化をめぐる反日行動など、国交正常化以降、日中関係は最悪の状況にあります。貿易額も落ち、また政治家だけでなくわれわれ研究者の交流もままならない状態に陥っていました。しかしAPECでの日中首脳会談以降、というよりもその2日前になされた4項目の基本合意によって状況は変わりつつある。この基本合意は首脳が会うとか会わないとか、目を合わせたとか合わせていなかったとか、そういう話よりも重要なものです。

 

基本合意について、日本のメディアはあまり積極的な評価をしていなかったように思いますが、中国や香港のメディアはかなり積極的に評価をしていました。中国政府は「日本の求めに応じて会見した」という言い方をしていますが、中国の「環球時報」という民族主義的な色彩の濃いメディアなどからインタビューを受けた際に、「再スタートの意味合いが強い」「双方に半歩前進した」と答えたところ、ほぼ正確に翻訳をして報道をしていました。中国も本音のところでは前向きで、積極的に改善していこうという意思があるということでしょう。⇒ つづきはこちらから

 

 

報告3 地殻変動する東アジアと日本の役割/信田智人

 

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こんにちは、今日は本シンポジウムのテーマである「地殻変動する東アジアと日本の役割」をタイトルにお話をします。

 

この2年間、毎月1回、日本アカデメイアというグループで、経済界、労働界、学会、官僚の代表者が集まって、日本力、国際問題、価値創造経済モデルの構築、社会構造、統治構造という5つのテーマについて議論をしてきました。ここでは私が主査を務めておりました国際問題のグループで議論してきたことをお話します。

 

最初に、2030年に世界はどうなっているのか、それまでに何が起きると考えられるのかについて3つほど挙げたいと思います。

 

1つ目は世界的な規模の経済危機が起きる可能性が大きいということ。

 

いまG7の負債総額はGDPの3倍であり、いつ金融危機が起きてもおかしくない状況にあります。また現在の世界経済は新興国に依存している部分が大きく、経済成長の半分以上が新興国の成長、投資の約4割、そして増加分の7割が新興国への投資となっています。もしどこか不安定な新興国がこけてしまったら世界経済危機が起きる可能性が高い。とくに世界の経済成長の3分の1を担っている中国は、2025年までに低成長期になると言われていますから、このとき世界経済はどうなるのか。不安は大きいです。⇒ つづきはこちらから【次ページに続く】

 

 

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